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第22話 俺たちの関係について

「ふわー…疲れが吹き飛ぶな」  行為の後、2人で身体を洗い合った。体育祭で汚れた上に、先ほどの行為でさらに汗をかいた身体を互いに労った。 「俺はりょうとお風呂に入れて幸せ」  やはり佐野の家の浴室も豪華で、浴槽は男性が2人入っても余裕があるほど広い。  俺は佐野に包み込まれる形で湯船に浸かっている。初めは恥ずかしかったが、身体が温まるにつれて力が抜け、今は佐野に抱かれる心地よさの方が優っている。  それに、先ほどから佐野が俺から離れようとしない。嫌ではないが、いつも以上に執着しているのが気にかかる。やはり、井沢とのことを気にしているのか。  佐野は俺を振り向かせると、頬をつかんで持ち上げ、俺の唇を食べるように口付けをした。口腔にある唾液全てを吸い取るような、激しい口付けだ。 「はっ…あっ…んっ…佐野……」  佐野に口付けをされると、とろけるような快感に襲われる。そして佐野の想いが俺の身体の中に流れてくるようで、安堵感に包まれる。 「……もう、お仕置きは終わったのか?」 「うん、もう無理。だって、りょうがエロくてかわいすぎるんだもん。あ、もしかして、まだ足りない?もう一回、手摺りに縛り付けようか?」 「いや、あれは1度経験すれば十分だ」  佐野は笑いながら、再度口付けをしてきた。次は甘く、優しい口付けだ。  学校での井沢の口付けは、俺の身体を硬直させるものだった。この対照的な感覚が、俺の本心に気づかせてくれた。 「佐野……俺は、佐野のことが好きだ」 「えっ!」  佐野は俺の顔をまじまじと見つめて呆然としている。 「俺の裸見て惚れちゃった…?」 「いや、そういうわけではないが。確かに佐野は顔も身体も整っていて……」 「ええっ!りょうに褒められた…え、これ夢?」 「……からかってるなら、先ほどの告白は撤回する」 「からかってないよ!うれしすぎて驚いてるだけ!」  佐野は俺を抱き上げ、自分の脚の上に乗せた。佐野の局部が窄まりに当たり、俺の前が主張し始めている。 「さっきの、俺の目を見てもう一回言って」  見下ろす佐野はやはり端正な顔立ちで、濡れているからか妙にそそられる。 「佐野のことが、す…」 「す…?」  先ほどはすんなり言えたのに、佐野に見つめられると緊張して言葉に詰まる。  深呼吸をして、一気に言うことにする。 「佐野のことが好きっ…」  言い終わる前に、佐野の唇が自身の口を塞いだ。 「ふっ…ん…」  前の欲望は完全に目を覚ましている。 「りょう、好き。愛してる」  佐野の言葉で胸が高鳴り、屹立が苦しそうに自身の腹を叩いている。心臓が耳元にあるのかと思うくらい心音がうるさく、目の前がぼやけてきた。 「……りょう、りょう!ごめん、のぼせたよね。早く上がろう」  佐野に抱きかかえられ浴室を出て、脱衣所で身体を拭いてもらう。 「佐野、悪い。ぼーっとしてる」 「こっちこそごめん。湯船に入りすぎた」  こちらが何もしないと、佐野は何でもしてくれる。用意してくれていたスウェットを着させ、ドライヤーで髪を乾かしてくれている。 「はい、終わり」  佐野は俺の髪を乾かし終わると、自分の髪を乾かし始めた。 「りょうの髪、サラサラで柔らかい」 「ああ、将来禿げそうな髪質だな」 「禿げたりょうか……それもそれで楽しみだな」  鏡越しに笑う佐野は、爽やかで輝いていて、いつまでも見惚れてしまう。椅子に腰掛けて水を飲み、涼んでいるはずなのに、どんどん脈が速くなる。  髪を乾かし終えた佐野と、鏡越しに目が合う。 「りょう、俺たち付き合おう」 「……ああ、よろしく」  佐野は破顔して両手ガッツポーズをしている。 「やったー!……あ、俺しつこいけど大丈夫?」 「その辺は何となく察している」 「さすが、話が早いな」  後ろから俺の肩を抱き、首筋に口付けをする佐野が鏡に映っている。 「絶対に大事にする。あ、でもエッチのときは別だからね」  今までの佐野との行為を思い出してしまい、自身の顔がほんのり赤くなっている。  不意に、脱衣所のドアのノック音が聞こえて首をすくめた。 「名津さん、お食事の用意ができました」 「今行きます」  高齢の女性の声がドア越しに聞こえてきた。 「佐野…今のは誰だ?」 「ああ、家政婦のよしえさん。いつも家にいるよ」 「……『いつも家にいる』だと?じゃあさっきの行為を見られていたかもしれないのか?」 「ああ、たぶん大丈夫だよーたぶん」  頭が痛くなってきた。佐野のこの適当さは陽キャ特有のものなのか?さすがに二の句が継げない。これから俺と佐野はどうなるのか、不安ばかりが募る。

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