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第28話 意外な訪問者

 佐野の家を訪れるのは2度目だが、やはり高級ホテルにいるような感覚で、慣れることはなさそうだ。 「お、お邪魔します……」 「なんでそんなに緊張してるの?」  庶民的な住居に住んでいる俺の気持ちなんて、佐野に分かるはずがない。 「今日は、家政婦さんはいるのか?」 「あ、よしえさん?いるけど、俺の部屋には勝手に入ってこないから大丈夫」  佐野の部屋に入ると、広大な窓が目に入った。20畳はあるだろうか、窓からは手入れの行き届いた庭園が見える。ダブルサイズ以上はありそうなベッドが視界の右側に映った。 「……広すぎる。どこに座っていいのか分からん」 「じゃあベッドでエッチしよう」  佐野が後ろから抱きついてきたが、その手を振り払う。 「なぜそうなる。今日は勉強しにきたんだ」 「えー、じゃあ勉強終わったらいい?」  子犬のような潤んだ眸子に見つめられては、断りづらい。 「…………考えておく」 「やったー」  佐野の家に来たら勉強などはかどらないと思っていたが、佐野はしっかり勉強に取り組んでいて、こちらも思った以上にテスト勉強が進んだ。  勉強は他人に教えることで、より習熟する。佐野に聞かれたところは、確かに言われてみれば疑問が生じるところで、佐野に教えることでこちらの勉強にもなった。  佐野は部活動ばかりしているかと思っていたが、質問の内容からして、しっかり勉強している印象を受ける。 「佐野、つかぬことを聞くが…」 「何?」 「前回のテストの順位は把握しているか?」 「え、俺の?……んー分かんない」  そうだと思った。自身の成績に無頓着なのは予想通りだ。 「本棚、見ても良いか?」 「うん」  整頓された佐野のデスクを眺めると、学校のプリントがまとまっている場所がすぐに分かった。  ファイルにまとめられたプリントの中に、前回のテストの順位表があった。 「……17位?!」 「あ、そうだった!俺結構すごくない?」 「ああ、だいぶすごいぞ」  1学年200人いることを考えると、かなりの上位だ。部活動に打ち込んでいるのに、この成績とは。 「惚れ直した?」 「う……ん」  頬に佐野の両手が触れたかと思うと、唇に熱く柔らかな唇が重なった。 「んっ…はぁっ…ぁ…」  互いの唾液を交換するように、舌先が絡み合う。口付けだけで全身がとろけそうだ。 「次のテストは、りょうに教えてもらったからもっと順位上がるかも」  佐野は俺を膝上に乗せ、見上げてきた。見下ろす佐野の顔は、やはり端正で見惚れてしまう。 「……そうだな」 「ねえ、もし順位上がったら何かご褒美くれる?」 「ご褒美?」 「うん。例えば……この体勢でエッチするとか」 「騎乗位ってことか?本当に佐野はセックスが好きだな」 「それは誤解!俺は、りょうが好きなの」  佐野はワイシャツを捲り上げ、腹部に口付けをして俺を抱きしめる。 「大好きだよ、りょう」 「んっ…、俺も…」  佐野の頭ごと抱きしめたその時、バンッと扉が開く音がした。 「おい、名津!俺のジャケット持ってっただろ………ん?誰?」 「ちょっ…佐野!…おい、バカやめろっ」  部屋に人が入ってきたのに、佐野はまだ俺を抱いて首筋に口付けをしている。 「……兄さん、部屋に入るときはノックして」 「俺のジャケット返せよ。今使いたいから」  佐野はため息をついて、俺を膝から椅子に下ろし、クローゼットから衣類を1枚取り出して渡しに行った。 「はい」 「……なあ、あの子、オメガ?」  ドキリとした。佐野家はオメガがすぐ分かる家系なのか?発情期はまだ先だが、俺からフェロモンか何かが出てしまっているのだろうか。 「は?何急に。違うけど」 「ふーん……こんにちは!」  部屋の入り口から声をかけられ、全身に力が入った。 「…お邪魔しています」  立ち上がり、首を垂れて挨拶をした。見上げた顔は、どことなく佐野と似ていて兄弟だとすぐに分かる。佐野を少し大人っぽくした雰囲気で、切長の目が特徴的だ。佐野から愛嬌を引いたような、鋭さを感じる。 「もう良いだろ。行けよ」 「挨拶しただけじゃん。じゃあまたね!」  佐野は、俺を隠すように兄の前に立ちはだかっている。その隙間から手を振ってくる佐野の兄の微笑は、やはり佐野に似ている。 「りょう、ごめんね邪魔が入って。さ、ベッドで続きしよ!」  佐野は俺を抱き上げ、ベッドに連れて行く。 「佐野はお兄さんがいたのか?」 「うん、大学生の兄さんが1人いる。いつも帰り遅いのに、今日はなんか知らないけど居たね」  ベッドに寝かせられると、ピンと張ったシーツからいい香りが漂ってきた。 「さっき、俺のことをオメガだと言っていたが…」 「大丈夫。しつこく言ってきたら、殴る」  佐野の目を見ると、真剣さがあった。 「暴力はやめてくれ」  佐野の左手は俺のワイシャツのボタンを1つ1つ外している。 「兄さんのことはいいから、俺を見て」  覆い被さる佐野が、いつも以上に俺を求めているように見え、抱かれたい気持ちが沸き上がってくるのを感じる。  上から順々に脱がされていく上半身に、佐野の柔らかな口唇が触れる。 「あっ……」  その唇が自身の赤いつぼみに触れると、静電気が起こったような刺激が身体を走る。 「そういえば、りょうは何位だったの?前のテストの結果」  佐野は思い出したかのように、熟れた乳頭を含みながら尋ねてきた。 「んっ……もちろん1位だがっ…あっ…」 「え!?……俺追いつけるかな…?」  すでに主張している屹立を、佐野はスラックスの上から優しく撫で始めた。 「んっ……佐野なら大丈夫だっ…あっ…」  ベルトが緩められ、力の入った屹立が解放された。佐野の舌が這う。 「俺頑張るね」 「しゃぶりながら、話すのやめっ……」  佐野の口腔に、愛液があふれた自身の屹立が消えていった。

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