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第4話「生きたい、だから…」

「魔法少女って、お前、あ、あれだろ!?なんか、可愛い服着て、ビームとか出したりして、世界の平和を守る的な!?」 「その通りピプ。今地球は、エビルディ星からの侵略で大変なことになってるピプ。そこで魔法少女育成サポートプロジェクトチームを結成して魔法少女と共にピプは地球の平和を守り続けているピプ。ちなみにピプは何を隠そう、魔法少女育成サポートプロジェクトチームのリーダーで、それはもう超が付くほど偉くて仕事ができて―」 「ちょ、ちょいちょい!ちょい待ち!は、話がまったくわからん!ついていけん!はぁ?魔法少女育成サポートプロジェクトチーム?なんだそれは。それに、え、エビなんとか星?からの侵略とかなんとか…地球はどっからどうみても平和だろ。」 「それは魔法少女が変身中は時が止まるし、はちゃめちゃになった街は魔法少女の力で元に戻してるから平和に見えているだけで、凡人の知らないところで歴代魔法少女たちが命をかけて地球を守り続けているから平和なんだピプ。」 「あー…うん。なるほど。まったくわからん。」 だめだ。やっと自分が死んだということを受け入れられたと思ったら、次はそれより遥かに次元の違う話がぽんぽんと出てきてもう理解が追いつかない。完全にキャパオーバーだ。 「あーもう!大我は今までの魔法少女の中でいっちばん理解力が低いピプ!説明が面倒ピプ!大我は馬鹿ピプか!?」 「なっ!?ば、馬鹿ぁ!?そんなっ、普通に突然魔法少女になれだなんて言われて、はいそーですか、じゃあなります。って言う奴なんかいるわけないだろ!?」 「いたピプよ。」 「いたのか!?」 「ごちゃごちゃ考えるから難しくなるピプ。今の大我に与えられた選択肢は2つ。魔法少女になるかならないか。つまり、生きるか死ぬか、この2択ピプ。魔法少女になるならピプと契約して仮の命を授けてやるピプ。魔法少女になりたくないっていうならこのまま死ぬことを選ぶってことピプ。大我は生きたいピプ?それとも死にたいピプ?」 ごくりと唾を飲む。魔法少女がどうのこうのはよくわからない。けど、生きたいか死にたいかで言えば、当然。 「生きたい。生きて必ず次は社畜ライフとおさらばしてやるんだ。…やってやるよ、魔法少女!」  変な生き物は満面の笑みを浮かべ、ぱんっと手を叩いた。 「そうこなくっちゃピプ!これが契約書ピプ。ここにサインを書いたら、晴れて大我は魔法少女ピプ。」  A4サイズの紙に箇条書きで3つ、契約内容が大きな文字で記載されてあった。  1、魔法少女契約後、魔法少女としての仕事を放棄した場合はその場で即死となる。  2、魔法少女契約後、授けるのは仮の命であり、本当の命ではない。だが、魔法少女として任務を全うした際にどんな願いでも1つ叶えることができる権利を与える。  3、魔法少女ということを必ず誰にも知られてはならない。知られた場合、ペナルティーが課せられる。 「2番目に書いてある『魔法少女としての任務を全う』って何をしたら全うしたことになるんだ?」 「それはもちろん、地球の平和を守り抜いたらピプ。つまり、エビルディ星の魔王を倒したらってことになるピプね。」 「なるほどな。…本当にどんな願いでも叶えることができるんだよな?」 「当然ピプ。ピプ嘘つかないピプ。契約後に授けるのは仮の命だから、願い事で『生き返ってホワイト企業に就職したい』ってお願いすれば、本当の命を取り戻して社畜ライフからおさらばできるピプよ。」 「う、うぉお…!俄然やる気がでてきた…!!」 「ささ、それじゃあここにサインをお願いピプ。」 にっこりと少し胡散臭い笑顔で変な生き物がサインを催促する。俺は迷うことなくさらさらとボールペンでサインを書いた。すると、突然契約書が金色の眩しい光を放ち、小さな光の玉が浮かび上がると、すごいスピードで俺の心臓へと飛び込み、スッと体の中へと溶けていった。 「これで契約完了ピプ。それじゃ、これからよろしくピプ。大我。」 「あぁ。よろしくな、ピプ。」  俺に差し出されたピプの短く小さな手をきゅっと軽くつまむように握って握手を交わした。 正直いまいち自分が魔法少女になっただなんて実感がないが、そっと胸を手に当てれば、さっきまでしんっと静まりひとつも動いていなかった心臓が今はドクンドクンっと鼓動が鳴っているから、多分、本当に俺は魔法少女になったようだ。

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