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第41話「甘く熱い2人の夜」

「んぅっ…はぁっ…ノアっ…。」 「ん?なぁに、大我。」 「もうっ…いい、だろっ…。」 「まだだめ。」 俺の尻に入れた指をゆっくり動かしながらノアが首を横に振る。かれこれこの状況とこのやりとりを何回繰り返しただろうか。最初は尻に何かを異物が入ってきただけみたいな感覚だったのに、次第にそれは快感へと変わり、ノアの指が動くのに合わせて俺は自分でも驚くような高い喘ぎ声を口から漏らしていた。 「もうっ、お前っ、しつこいって…ふぅっんっ…」 「だめ。もっとここ広げておかないと。僕は大我に苦しい思いさせたくないんだよ。」 俺の為って、そんなの絶対嘘だ。わざと焦らしてまた俺に恥ずかしい台詞を言わせたいだけに決まっている。時折、いいポイントに指が当たってビクッと腰を跳ねさせる。それなのに、そこを責めるわけでもなく、わざと外すしてひたすら俺の中で動き続ける指は俺の理性をどんどん壊していく。 「嘘つけっ…また俺にっ、はぁっ…意地悪して…あっ…性格、悪いぞっひゃあっ!」 一番突いてほしい場所にノアの指が触れ、腰を浮かせた。ほら、やっぱりわざとだ。またそこを避ける。焦らされ続けてイキたいのと早くノアが欲しいのとで、思考はぐちゃぐちゃになっていく。俺がノアの欲しがっている言葉を言えばいい。普通人には見られない場所を見られて、尻で感じるようになっただけでもう充分醜態を晒しているのだから、恥ずかしい言葉の1つや2つで恥ずかしがるだなんて今更だ。俺は理性を手放し、ノアの腕を掴んだ。 「もう、意地悪やだぁっ…。早くノアが欲しいっ。」 ノアは俺の顔を真っすぐ見つめてごくりと唾を飲み込んだ。入れていた指をゆっくりと抜かれると、ひゃうっと小さな悲鳴を上げた。 「いいの…?まだ、きついかもしれないよ?」 俺の頬を撫でながら心配そうな顔でノアが聞く。わざと焦らしてたわけじゃなかったのかと、俺はそこで気づいた。けど、俺の我慢はとうに過ぎている。早くノアが欲しい。1つになりたい。俺ばかりじゃなくてノアと一緒に気持ちよくなりたい。ノアの首に手を回して顔を引き寄せる。 「いいから。早くいれて…。」 ノアがわかった。と短い返事をすると、どちらからともなくキスをする。ねっとりとお互いを求めあうような濃いキスを交わしてから、ノアは自分のズボンを下着と一緒に下ろしてベッドの外へと放り投げた。ノアがゴムを装着している間、緊張してどこを見ていいのかわからず、俺は頭に敷いてある枕をぎゅっと掴みながら瞼を固く閉じた。 「大我は目隠しプレイをご希望で?」 「はぁっ!?違ぇよ!ど、どこ見ていいかわかんねぇからっ!」 慌てて目を開ければ、余裕のなさそうな顔のノアとバチッと目が合う。なんだよ、お前だって相当我慢してたんじゃねぇか。俺の体の事を思って理性的ぶって馬鹿じゃん。でも、そういう優しいところにときめいてしまう俺も大概馬鹿だな。ふっと笑うと俺はノアに言った。 「ノアの好きなようにしていいから。ノアと一緒に気持ちよくなりたいんだよ。」 ノアの綺麗な髪を撫でてやれば、ノアは理性が飛ぶのを必死に堪えるような苦しい顔をしながらも嬉しそうに笑った。痛かったら言ってね。と言うノアの言葉を合図に、ノアが俺の中にゆっくり入ってくる。 「はっあぁっ…んぅっ…。」 初めての快感に俺は腰をくねらせた。ノアと1つになっているのが嬉しくて、涙が出そうになる。もっと欲しい、もっと奥まで。と思う気持ちとは反対に、ノアの言った通りまだちゃんと慣らしきれていなかったせいで途中まではすんなり入ったが、そこからが奥が苦しくて入らなくなった。 「うぐっ…い゛ッ…。」 「大我っ、一回抜く?」 「やだっ、抜かないでっ!」 痛みで目に涙を溜めながらも俺が必死にお願いすると、ノアは一呼吸置いて、大丈夫大丈夫、と囁きながら俺の頭を撫でた。 「ゆっくり、力抜いて。そう、大丈夫、一緒に気持ちよくなろうね。」 子供をあやすみたいな優しい口調でノアが言う。俺の呼吸が整うと、ぢゅうっと吸い付くようなキスをされて力がどんどん抜けていく。ゆっくり腰を動かすたびにぐちゃぐちゃという音が聞こえて鼓膜までも侵されていく。 「ん゛ん゛ぅ゛っ…んはぁっ…あ゛っ…ひぃあぁっ!」 ぐんっとノアがお腹の方まで入ってきたのがわかった。中でどくどくと熱いものが脈打ってるのがわかる。全部、入った…?目をぱちくりさせながら繋がった場所を見ているとノアが俺の腹を優しく上下に撫でた。 「ここ、僕のが入ってるの、わかる?」 俺は耳まで顔を真っ赤にして、黙ったままこくりと小さく頷いた。嬉しいけど恥ずかしくて、きつくて苦しいけど幸せで、いろんな感情がぶわーっと溢れ出てくる。あー駄目だ。やっぱり俺は歳なのかもしれない。どうやら涙腺がゆるゆるになっているらしい。またじんわりと涙を目に溜める。泣きそうになっている俺を見てノアは慌てた様子で、苦しい!?痛かった!?と聞いてきた。違ぇよ、ばか。といつもより優しめの声で言うと、ノアの手を握る。 「俺、今すっげぇ幸せ。」 絡み合った手がぎゅっと固く握られる。 「僕も、すごく幸せだよ。」 目を細めて微笑むノア。火照った顔が妖艶すぎて俺は体をゾクゾクさせた。俺に合わせてゆっくり腰を動かしてくれる。最初は少し痛みもあったが、気づけば全て快感に変わり、ノアが動くたびに俺は甘い声で喘いだ。頭のてっぺんからつま先まで、全てノアに支配され埋め尽くされていくこの感覚が堪らなく気持ちいい。身も心もとろとろに溶かされ、へたりと力が入らなくなった俺の上で、余裕のない気持ちよさそうな顔で腰を振り続けるノアの顔が俺をゾクゾクさせてさらに快感へと誘う。  俺達、2人で一緒に気持ち良くなってる。そう思うと嬉しくて、無意識的に中をうねらせてしまった。眉間に皺を寄せて、ああっ、と声を漏らすノア。フーフーと荒い呼吸をするノアに手を伸ばせば、俺の腕の中に入ってくる。ゆっくり小刻みに揺れる腰。素肌が触れ合って心地いい。汗ばんだノアの長い前髪を耳にかけてやれば、くすぐったそうに目を細める。その表情は、きゅっと釣りあがった目のせいで余計に猫みたいに見えて可愛い。 「はぁっ…ノア…俺もう、イきたい…。」 生暖かいノアの呼吸が顔にかかって気持ちが高ぶる。いつもなら、丁寧に返事を返すノアだが、微笑みながら、ん。とだけ返事をした。 「っあぁっ…ふぅっ…ん、あ゛あ゛っあぅっあっああっ…!」 さっきまでのゆったり快感を楽しむ時間とは打って変わって、ノアは容赦なく腰を俺に打ち付けてパンパンと激しい音を鳴らす。あまりの激しさに俺は異常なほどの快楽が怖くなり、逃げるように腰を浮かせ、ベッドの上へとずり上がった。だが、そんな俺をノアは許さなかった。両手で俺の腰をがっつりと掴み、ぐいっと自分の方へとずり下げた。ノアの引く力が強いせいで、ズンッと俺の一番奥深い場所にノアのものが到達した。 「っ!?う゛ぁ゛っ!?あ゛あ゛…あぅっ」 一番奥をぐりぐりと突かれ、息ができず声は掠れて潰れたような声が出る。腰はビクビクと反応して痙攣が止まらない。 「絶対離さないよ。」 耳元で囁かれると、耳に息がかかりゾクゾクが止まらなくてひゃうっ、と情けない声を上げた。 「あ゛あ゛あ゛…もっ、らめぇっ…あぅっ、奥ッやらぁっ!もぅ、きもち、いいっ…!ノアっ…ノア…ッ!ひぁっ…」 「はぁ…あぁっ…大我…ッ僕もそろそろ…ぐっ…」 ノアが俺の一番良いポイントだけをひたすら攻め続ければ、どんどん絶頂へと向かっていく。はぁはぁと2つの荒い呼吸、どちらのかもわからない混ざり合った汗、ぐちゅぐちゅと響く厭らしい水音、動く度ギシギシと悲鳴を上げるスプリング。何度頭の中で、気持ちよさそうなノアの声と顔を想像したか。実物はその想像を上回る色気だったが。俺の中で俺に包まれて気持ちよさそうに顔を歪ませるノアの顔は、俺をさらに気持ちよくさせる。 「あっあっ…ノアッ、も、う゛…イ゛ク゛、イっちゃ…ッんぁあ゛あ゛っ!!」 ガクガクと足を痙攣させながら俺は絶頂を迎えた。ノアも俺がイくと同時にイったらしい。俺の中から自身のものを抜くと、う゛ぁ゛と苦しそうな声を出してゴムの中に白い液体を吐き出した。自分の精子のせいで体がベタベタする。汗もかいてるし、早く拭かなきゃ。そう思いながらも、意識はふわふわと夢の中へと誘われて遠のいていく。ノアの手が俺の腹に触れる。後処理をしてくれているのだと気づき、重たい体を起こして俺もやると伝えれば、とんっと優しい力で肩を押されて再びベッドに寝転んだ。 「いいよ、大我はゆっくり休んでて。」 「ん…ありがと。…ノア、好きだ。」 「うん、僕も好きだよ。おやすみ、大我。」 ちゅっと唇が触れ、おやすみのチューをする。  ずっとリベンジのチャンスを窺い続けてきた初めての夜は、火傷するほど熱くて、胃もたれするほど甘ったるくて、理性が壊れるほどとろっとろにさせられた。結局いつも通り始終ノアのペースに振り回されっぱなしだったけど、ノアが俺に感じて気持ちよさそうにしている顔が見れたから全部チャラにしてやることにした。  いつも余裕たっぷりのノアの、余裕がない限界の顔が見れたのはかなりレアだ。しかも、その顔をさせたのは俺だと思うとかなりの優越感を感じる。んふふっとご満悦な笑みを浮かべて、俺は意識を手放した。

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