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第47話「言い訳と本音」

「で?あの状況は一体どういうことピプか、ちゃぁ~~んと説明するピプ。」 ピプに2人の営みの時間を突撃訪問された後、とりあえずモンスターを倒しに行き帰宅後の今。こうしてリビングにて偉そうに腕を組んで食卓に座っているピプの前に、ノアと2人並んで正座をさせられて説教タイムが始まろうとしていた。正直完全に腰をやってしまったので正座するだけでもしんどいのに。 モンスターだって、産まれたての小鹿みたいにぷるぷると足を震わせて歩くこともままならない俺の代わりに、ノアが倒してくれたのだった。それにしても、1番知られてはいけない人に知られてしまった。どう切り抜けるべきか…。とはいえども、あんな場面を見られたらもう誤魔化しようがない。もうここは素直に言うべきか…?何と切り出すべきか黙って悶々と考えていたら、ノアが先に口を開いた。 「僕は本気です。どうか…どうか、大我を僕にください!!」 頭を床につけ、まさにジャパニーズ土下座を披露するノア。異星の生き物なのに、よくそんなの知っているな!?てゆーか、それじゃあまるで結婚挨拶じゃねぇかよ。 「お前みたいなやつに大我はやらんピプ!」 「そこをなんとか、お願いします!」 「だいたい、ピプはあの状況を説明しろと言っているピプ。ノアが本気かどうかなんてどうでもいいピプ。大我、無理矢理ノアに襲われたピプよね?そうピプよね?」 そうであってくれ、という圧をピプはかけてくる。俺は数秒黙り込み、ごくりと唾を飲み込むと真っすぐピプを見た。 「違う、俺から誘ったんだ。…俺達、結婚してるんだよ。」 大我…!と隣で嬉しそうな声のノアとは対照的に、ピプはあんぐりと顎を開けたまま驚いた顔を、みるみる青ざめさせていく。正気ピプか…?と聞いてくるピプの言葉に深く頷けば、ピプは頭を抱えて深いため息を吐いた。俺達が結婚したことを受け入れられないらしく、否定的な言葉をぶつぶつとぼやいている。 「ピプ、お前に黙っていたことは本当に申し訳ないと思っている。でも、俺達は本気でお互いを大切に思っていて、ピプが反対したとしてもこれからもずっと一緒にいたいと思っていて…。」 「大我、お前何を言っているかわかっているピプか?」 「えっ…あぁ、まぁ…。そりゃあ、魔王と魔法少女っていう敵同士が結婚って変かもしれないけど、でも俺達は。」 「全然わかってないピプ!」 突然荒げたピプの声に驚く。ぐっと力を入れた腕をぷるぷると震わしながらピプは声を絞り出すようにして話す。 「ノアは地球を侵略しようとしてる魔王ピプ。それなのにそんな相手と結婚だなんて…魔王と魔法少女が結婚?前代未聞ピプ、ありえないピプ。大我は何にもわかってないピプ。もし、結婚も何もかもノアの作戦だったらどうする気ピプ。」 「ノアはそんな奴じゃねぇよ!ノアは本気で俺の事を!」 「そんなのわからないピプ!…それに、もしノアが本気で大我のことを好きだったとしても、敵同士なことには変わりないピプ。ノアを倒さない限り大我は生き返れない。大我は魔法少女のチュートリアルを飛ばしたから知らなかっただろうけど、仮の命の寿命は1年ピプ。どう足掻いても、2人が一生一緒に入れる未来なんて、やってこないピプ…。」 仮の命の寿命が…1年…?どくんっと動揺で心臓が大きく跳ねた。驚きのあまり声が出せないでいる俺の代わりに、ノアが嘘だろ…?と隣で呟いた。 信じられない、俺の命があともう、1年もないだなんて。この先もずっと、ノアと一緒にいられないだなんて。受け入れがたい真実に脳が拒否しているのか、ガンガンと頭が痛み、吐き気に襲われる。口元を抑えておえっと嗚咽を漏らすと、すぐにノアが心配そうな声で大丈夫かい?と言って、背中をさすってくれた。 「ノアがこの家に転がり込んできた時、どんな手を使ってでも追い出さなかったピプの責任でもあるピプ。…悪いことは言わない。お互いの為にも、2人は今すぐ別れた方がいいピプ。」 諭すようなピプの声が脳に到達すれば、壊れた音楽プレイヤーのように何度も何度も頭の中で止まることなく再生される。別れる…?俺とノアが?嫌だ、そんなの絶対に。 「嫌だ…絶対ノアと別れたりなんてしない。ノアがいない世界なんて、そんなの、俺なんの為に生きてんだよ!寿命があと半年くらいしかないっていうなら、その半年間ずっと毎日ノアと一緒にいる。どうせ俺が死んだって俺の代わりとなる魔法少女なんていくらでもいるんだろ。でも、俺にとって大切な人は…ノアは1人しかいねぇんだよ。絶対、殺したりなんてしないっ!」 また頭を抱えて深くため息をつくピプ。わかってる、魔法少女としての役目を放棄する発言を自分がしてしまったことを。契約違反と見なされて今すぐここで俺は命を奪われるかもしれない。でも、そうだったとしても、自分の気持ちに嘘はつきたくなかった。ノアが好きっていう、この気持ちに嘘なんてつきたくない。

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