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第65話
手を、そっと上下に動かした。陽根のくびれで穂先を掃きあげられるのは、不思議な体験だ。茎と幹が競い合ってそそり立ち、その様子がふたりの手と手の間から見え隠れする。
紺野が肩口に顔を伏せてきて、呻いた。ほんのりと赤らんだ耳たぶに愛しさがこみあげ、手を速めた。
蜜がにじみ、すべりがよくなった。時折、乳首を爪繰られる。鈍い痛みは、快感を高めるスパイスだ。
「……ん、保 ちそうにありま、せん……」
「こっちもブレーキが利かない。ここを……妹尾さんの初めてが欲しい。異論はあるか」
狭間を暴かれ、蕾をつつかれた。と同時に昂ぶりが脈打ち、茎をひと叩きしてきた。
妹尾は、ぎょっとして腰を引いた。恐るおそる視線を下にずらしていって、息を呑む。
エラが張って獰猛な様相を呈する、あれ。あれを受け入れるのはいくらなんでもハードルが高いのだが……。
「意思を尊重する……ってのは、キレイ事だ。恋人の全部が欲しいのは自然な欲求だろう」
物狂おしい眼差しを向けてくる紺野を自分につなぎとめたい、と思う。反対につながれたい、と思う。
互いが、互いにとってかけがえのない存在だと確かめ合うためなら多少、無理をしても報われて余りあるはず。
妹尾は唇を舐めて湿らせた。
「おれが、まな板にリボンでくくりつけられている場面を想像してください……」
真夜中すぎだ。サンタクロースを乗せた橇が世界中を翔 めぐり、子どもたちにプレゼントを届けてまわっているころだ。
「今夜は……その、クリスマスなので……」
「プレゼントに妹尾さんをくれるって解釈してもいいんだな。豪華版すぎて涙がちょちょ切れそうだ」
頭のてっぺんをぽかりと殴ってあげると、紺野はいったんベッドを離れた。いきり立った昂ぶりが、潜望鏡のように前立ての間から突き出して歩きづらそうで、少し笑った。
「急転直下で両思い、は想定外だ。専用のジェルじゃなくて悪いな」
向かい合って横たわる。へそから下を紺野の太腿に引っかける形に抱き寄せられたうえで、尻たぶを割り開かれた。そこにベビーオイルがひと垂らし。
ざわり、と鳥肌が立った。妹尾は咄嗟に紺野にしがみついた。その間にも、ひとひら、ひとひらと襞が丁寧に解き伸ばされていく。その都度、ベビーオイルが塗り込められていき、蕾がわずかにほころんだ。
「なるべく、そっとやるが。痛いときは痛いと、ちゃんと申告してくれ」
「覚悟の上です。どうぞ、ご随意に……ん」
指が浅く、深く沈む。かつて味わったためしのない異物感に苛まれて、躰が自然とずりあがる。
引き戻されて茂みをまさぐって返す。弾丸が装填されたそれは持ち重りがして、妹尾は今さらめいて蒼ざめた。それでも、すくみあがるたびにくちづけを求めて雄渾を愛おしんだ。
(ど近眼で助かった……)
視界がぼやけているおかげで若干、恥ずかしさが薄れる。だが皮肉なことに他の感覚が研ぎ澄まされ、とりわけ筒を行きつ戻りつする指の動きに意識を集中してしまう。
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