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第66話

「ぁ、う、あああ……っ!」  内壁がだいぶこなれ、かき混ぜられるにともなって細腰(さいよう)が独りでにくねりはじめたころのことだ。指が隘路のある一点を突きのめしていったはずみに、嬌声が口をついて迸った。 「こいつが、噂に聞く例のあれ……か」  蜜が泡立ち、紺野は金鉱を発見したヤマ師のように目を輝かせた。そして一ミリ刻みで指をスライドさせると、探り当てた突起をくじきたてた。 「やっ、やめ……!」  着崩れたワイシャツが、扇形に広がった。ほっそりした肢体がシーツの波間をのたうち、その艶冶な光景は、さらなる淫技を誘う。 「……ん、ん、んっ!……」  (さね)に狙いを定めて指が蠢くと、脊梁がしなう。妹尾は懸命によがり声を嚙み殺し、 「我慢したがるのは妹尾さんの悪い癖だ」  耳たぶに舌を這わされて狂おしく腰を振りたてた。未経験のゾーンをさまようあまり、内奥をやわらげる指が順次、増やされていったことにも気づかないほどだった。 「ぁ、ん、くっ、ああ……っ!」  爆ぜて、まき散らす。ティッシュと、あたふたと枕元を探り、だが、いち早く腰を抱え込まれた。ひたり、と尖塔がぬめりにあてがわれたせつな、この状況がにわかに現実味を帯びて全身が強ばった。 「愛している。人生最良の日だ」 「気障ですね……っ、つぅ……!」  こじ開けられて、陰門全体が軋む。予想を遙かに上回る激痛に涙がにじみ、妹尾は死に物狂いになってもがいた。強引につながりを解きにかかっても、楔を軸につれ戻される。  一方、紺野も先端をえぐり込ませてはみたものの、ニッチもサッチもいかない様子で顔をしかめた。 「もう少し、ゆるめてくれ。先っぽがつかえちまって、ぽきっといきそうだ」 「無理を、言わないでください……っ、く」  そういう構造にはできていない躰を刺し貫かれる側には、大きな負担がかかるのだ。仰向けになって足を大きく開き、さらに腰の下に枕をかまされるという、あられもない恰好をさせられているこちらの気持ちも斟酌(しんしゃく)してほしい。 「っ、うう……う……」 「カリは通過した。もう少し辛抱してくれ」    紺野がうがつ角度を調節しながら腰を押し進めるたびに、鋭い痛みが脳天まで突き抜ける。ギャザーは皺ひとつなく伸びきっていながらも、人体の神秘だ。健気に陽物にしなだれかかる。  幹の中ほどまでが肉の輪をくぐり抜けおおせると、圧迫感が強まって内臓がせりあがるようだ。  こちらは、いわゆるバックヴァージンなのだから手加減してくれてもバチはあたらない。妹尾は紺野を睨んだ。もっとも、それは蠱惑的な眼差しといえるものだ。

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