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第40話 岸谷※

ガラムマサラ?クミン?なんだこれは… よく分からない調味料があるとやる気が失せる。これだけで、カレーが出来るのだろうか。 俺は知りたい。 岸谷は今ひとりでいつものスーパーに来ている。両手にはカレーで必要なスパイスを手にしているが、呆然としていた。 先週やっと玖月に再会でき、自宅であるペイントハウスまで連れてくることが出来た。 これから二人で生活をしていくことになる。その記念すべき初日は二人で色々な話をし、朝までベッドで笑い合い、たくさんキスをした。 キスを繰り返し、身体を求め合ったが、最後まで身体を繋げる行為はしなかった。 そう。セックスはまだしていない。 二人の身体が熱くなると、ペニスを合わせて扱きあったりしていた。玖月を大切にしようと岸谷は考え、玖月の身体に負担がかかるセックスはまだしないようにと自分を抑えている。 しかし、抑え込み過ぎたのが原因かどうかわからないが、昨夜はタガが外れたように玖月を求めてしまった。 今週末も、二人でゆっくり話をして過ごそうと決めていたのに… 昨夜の出来事にため息をつきながら、岸谷は手にしていたクミンを棚に戻す。よくわからないものを買うわけにはいかない。 そもそもクミンってなんだよ。 昨日は金曜日、週末であり翌日からは二人共休みとなる。だから岸谷は会社から帰ってからすぐ、玖月に「一緒に風呂に入ろう」と誘った。 二人で風呂に入ったら、まあ、色々と触りたくなるだろう。俺は男だし?相手は好きな人だし?その辺、抑えきれないのは仕方がなかったと思う。だが、その後があまりよろしくなかった。 風呂で玖月を求めた後、ベッドに移りそこでも求めてしまった。それでもその時は、これで終わりだ、今日はもう抑えようと思ったのに、玖月がキッチンに飲み物を取りに行くというので、念願だった岸谷のTシャツを着させた。それがもう、なんて言うか。エロくて… キッチンで水を飲む玖月はお尻をプクッとさせ、そのかわいいお尻でTシャツを押し上げていた。水を飲む動作でTシャツをふわふわと動かせ、お尻をチラチラと見え隠れさせていた。下着は付けてないので見えるような見えないような、男心をめちゃくちゃくすぐる後ろ姿だった。そう、俺はキッチンまで付いていき、玖月の行動の一部始終を観察している。 その姿を観察していたら、後ろから抱きしめて、また思いっきり攻めてしまった。素股というやつでだ。 だが潤滑剤なるものが無く、玖月は最初痛がっていた。腹につきそうになるくらいそり返っている岸谷の剛直を、ゴリゴリと股に出し入れされたらそりゃ痛いかもしれない。 玖月を痛がらせてはいけない。痛いことなんて気持ちいいわけない。 だから、キッチンにあったオリーブオイルをちょっと股間に垂らして使ってみることにした。 そうしたら滑りが良くなり、スルスルと滑り、グチョグチョと音を立て始め、途端に気持ちよくなり、玖月の声も色っぽくなっていった。だから張り切って素股を励んでしまった。 オリーブオイルすげえ…と玖月の尻の割れ目にも垂らし、乳首にも塗りつけ、玖月の股の間に岸谷の剛直を捩じ込み、腰をガンガンに振り付け、乳首をくるくると撫でていると、気がついたら玖月をオリーブオイルまみれにさせてしまった。 その後もう一度風呂に入り…とそのループである。気がついた時には玖月はグッタリしていた。 『もうしない!もうしません!』と心の中で誓っているのに玖月が「優佑さん、気持ちよかったです」とか、ぽやっとした顔をこっちに向けて言うから! いや、そんな言い訳をしてはいけない。心の中で『玖月エロい!エロいぞ!』と叫んでいても、常に冷静にしていないと、この前言われた玖月の母からの怖い言葉通りになってしまう。気をつけよう。マジで。 その後、寝て起きたらもう土曜日となり、時刻は昼近くになっていた。玖月を起こさないようにと、急いで車で出かける。行き先はもちろんドラッグストアだ。 「その先もチャレンジしてみたいな」と玖月に言われたからだ。 よし… もうその先のチャレンジの時がきている。 家から二駅先の大きなドラッグストアに行き、コンドームと潤滑剤なるローションを買った。これでもうオリーブオイルを使うことはない。多分、これ以上オリーブオイルを使ったら玖月に嫌がられるとわかっている。 岸谷はそのまま家に帰らず、その足でスーパーまで来ていた。冷蔵庫の中が空っぽだったからだ。 本当は、今日の休みに一緒にスーパーに行こうと話をしていたが、それが難しくなった。昨日、岸谷は玖月を求め過ぎた。身体中にキスマークを付けられ、グッタリとし、玖月は今ベッドで深い眠りに入っている。 一週間の仕事の疲れが出ているところに、タガが外れた岸谷の行動がダメ押しとなり、玖月には相当負担をかけてしまった。だから、代わりに買い物をしておこうと、考えていた。それに何か昼飯なるものを作ってあげようとも考えている。 以前カレーを作ったことがあった。その時玖月はかなり喜んでくれた。だが、あの時のカレーは失敗している。今度こそ失敗したくない、なので今スーパーで厳選中だ。 しかし、カレー粉が集まる棚の前で、もうかれこれどれくらいだ?かなりの時間を費やしている。本当にカレーを作っていいのだろうか…そんな疑問まで浮かんできている。 そうだ、カレーばっかり追求するのはよくない。だけど、カレー以外は作れる気がしない。これもまた繰り返し考えていることだった。 それに玖月はきっと何を作っても『世界一』と言うだろう。失敗してるカレーでさえ世界一と言われた。全くもって世界一ではないのに。玖月よ… 岸谷はもう片手に持っているガラムマサラを握りつぶしそうになった。考え過ぎて熱くなっている。 「世界一の男になりたいのに」いや、こう言うと「優佑さんはもうなってます。ふふふ」とか言うだろう。 自惚れではなく、玖月だったらそう言うとわかる。しかし、俺の飯が世界一なわけがない。俺が世界一だとしたら、それは君を見ている変態としての世界一なんだ!そうであれば大きく頷ける。 またしても考え過ぎて岸谷は手にしているガラムマサラを睨みつけてしまった。 「あの…何かお探しですか?」 「うおぁ!」 スーパーの店員に話しかけられたとわかるまで数秒あった。『世界一変態』のくだりを考えていたので、びっくりして声が裏返ってしまったと思う。 「あ、すいません。驚いちゃって。いや〜カレーをね、作りたいんですけど…スパイス?これ?これで作れる気がしないんですよ」 そうだよ、初めからスーパーの店員に聞けばよかった。どれでカレーが作れますか?って。岸谷は自分で気がついていないが相当浮かれているようだった。 店員は黒髪がサラッとしている若い青年だ。ニコニコとしていて愛想がいい。この青年にお願いしようと岸谷は思った。

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