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第16話
寵愛(?)を受けているからといって、別に僕の地位が高くなったわけではない
お付きの人もいるにはいるけど、専属指名してるわけじゃないから毎回違うひとがやってくる
別にすこぶる体調が悪かったわけじゃないから、手間かけさせないように気力が湧かないってことで放っておいただけ
熱っぽくなった時は、さすがに焦ったケドさっ
布の間仕切りの向こう側で皇子が侍医の人と何か話していた
少しして侍医が僕の心音を聞いた後熱を測ってからまた布の向こう側へ消えた
医務班のうち2人が色の濃い布で僕からお腹から下が見えないように仕切りを作った
「トア様、ちと失礼しますぞ。おみ脚から力を抜いてくだされ」
言われた通りに力を抜くと、服を軽く捲られて下腹部を軽く押された
両太腿を回されしばらく動かしていなかった関節が少し軋むような音をたてた
その後、細い木製の棒が2本ナカに入ってきて入口を拡げた
「どうだ?」
そう皇子の声が聞こえる
「あー、よくお気づきになられましたな、殿下。私でも、ご指摘を受けなければ気づかないほどですよ。おめでとうございます。では、これで」
「ん、夜分に起こしてすまなかった。下がれ」
えっ?えー......何が?何が?『おめでとうございます』なわけ?
「あの?――!」
わけが解らず皇子に目を向けると、これまで見たこと無いような優しい目を僕に向けていた
「な、なに?気色悪い」
「なんだ?気分が悪いのか?少し待ってろ桶を用意させる」
「いや、あんたの顔が。何がそんなに嬉しいんですか?皇子」
「今は、何と言われようと許せてしまいそうだ。何って、遂に妃が懐妊したのだからな」
相当嬉しそうだ
懐妊って妊娠したってことだよね?
赤ちゃんか、ということは......世継ぎ?あのバカルカ皇子もついに人の親に
「へー、おめでとう」
僕の役目も終わったわけだ
これで精々した――?
ツゥーッと頬を伝う生暖かい水滴
「何故泣く、トア?」
「いや、これは目にゴミが入っただけで。あれ、おかしいな......両方に、待って」
「孕むと涙脆くなるというのは、本当らしいな」
「はっ?何言って」
「トア、ありがとう。俺の子を孕んでくれて」
......はぁっ!?
それまで頬を伝っていた涙が一瞬にして引いた
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