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第7話
アルの腕の中でひとしきり泣いた
かっ顔を上げるのが......恥ずかしい
(人前で泣いておいて、恥ずかしいなんて今更だが......)
「落ち着いたかい?」
「あ、ありがっ......ありがっとぅ」
「いや、いいんだ。馬車を待たせてある。乗ろう」
建物を出ると、大きな馬車が待っていた
艶のある黒に銀の塗料で家紋が写してある
月形の傷のある獅子の紋
獅子は、王家に縁のある家が背負うことの許される家紋
「アルって......凄い人?」
「凄い人とは?」
「こっこうちゃくさまっ......」
かっ噛んだっ!
顔を真っ赤にしていると、上からプッと吹き出すのが聞こえる
「可愛いね、クリス。家に帰ってから説明しよう。手を」
差し伸べられた手に自分の手を重ねるのを躊躇った
自分が優しいこの人の手を取っても良いのだろうか?
「クリス......冷えるから、おいで?風邪をひいてしまうよ」
「......うん」
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