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第8話

でっでっかい 大きくそびえ立つお城? 「クリスこちらへおいで。ノア、荷物を頼む」 「かしこまりました」 「クリス、筆頭執事のノアだ。ノア、妻のクリス」 その言葉にピシッと固まる つっ妻!妻って言った?誰が誰の? 「ようこそ、おいでくださいました。執事のノアと申します。奥様。以後、お見知りおきを」 「えっ、あおっ。うっ......クックックックククリスです。」 「ははっ。入ろうか、クリス。外套をノアに預けて」 「はっはい......」 脱いだ外套をノアさんに渡してアルに付いていくと勝手に大きな扉が開く 「「「おかえりなさいませ。ご主人様、奥様」」」 対応早っ!もう、僕のことが...... 「ただいま」 「お夕食の準備が調っております」 「部屋に運んでくれ」 「かしこまりました」 手を引かれるままアルに付いていくとひとつの部屋にたどり着いた 「ここが今日から、私たちの寝室だよ。隣の部屋は、私の執務室だ」 「あっあああのっ......どどどっ」 「あぁ、妻の件だね。説明しよう」 公爵閣下の話は、こうだ レノンドアール公爵家は、代々次期当主となる子供が生まれると、その伴侶となる人物の絵が描かれる その()の人物は、次期公爵が22歳の誕生日を迎える頃 つまり、未来のこの(おしろ)の女主人の絵姿 妻に迎えれば、繁栄と幸福をもたらすとされているのだそうだ その為、公爵家の人間たちは毎回必死で捜しだすのだそう 「そうして、私の伴侶となる人物の絵姿がこれなんだ」 部屋の壁に掛けられた絵姿に視線を移すと、まるで鏡に映したように僕にそっくりな人物がこちらを見つめる 「すっごい......」 「先程のように公爵家(うち)の使用人たちの対応が速いのも、この為なんだよ」 「で、も......いいんでしょうか?」 「何が?」 「......いや、なんでもないです」 僕は、弟を見殺しにするような人間ですなんて目の前の優しい目をしたこの(ひと)に言えるはずもなかった 僕は、ずるい人間なんだ

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