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第11話

「社交シーズンズは、終わったからね。君のお披露目の場を再来週開かれる夜会にしようと思うのだけど、いいかい?」 「......は、い?」 夜会だって!?この前のマナーの授業で言ってたあの夜会に間違いない この国でオフシーズン中に開かれる夜会なんて1つしかないもの 宮廷主催の夜会 身分問わず、国内外で活躍する人々だけがパートナーと共に招待され、宮廷の広間は一夜限りで国内最大の情報の宝物庫と化す 毎年、号外のゴシップ誌が出ることでも有名だ 「贔屓にしている仕立て屋にも連絡を入れておいたから、ね。君に似合う最高のものを誂えて貰おう」 「は、はい。......ありがと、うれしぃです」 大きな晴れ舞台が待っていると思うと、なんだか気が重いけど、ちょっぴりホントに嬉しかった 「風が冷たくなってきたね。室内(なか)に入ろうか、お手をどうぞ?愛しい人」 ウィンクして茶目っ気たっぷりにそう言われて、少し照れながら差し出された大きな手に自分の手を重ねた この大きな手に重ねる手が―― いずれ自分のものでは、なくなるとも知らずに

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