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第12話

人間全身を見るのに鏡は、身長の半分しか要らないって聞いたことがある 目の前の壁一面分の鏡を見て唖然とする 「おっおきぃです、ね」 「ここは、夫婦の衣装部屋だ。ここの部屋の棚やクローゼットのもので下着(なかみ)から全身着飾れる。この壁の鏡は4枚あって折り畳むと、全身を囲むようにして360度映してくれる」 すごい...... 棚やクローゼットには、きらびやかなドレスや質のいいコート類に着心地の良さそうな夜着 奥の方には、下着まで綺麗に並べてある 角には、立派な鏡台まで完備されている徹底ぶりだ 「あー、すまないクリス。毎朝、侍女達の餌食になることを......許してくれ」 「へっ......!?」 「勿論、夜は......私だ」 さっきまで、全く気づかなかった 瞳をキラキラさせた数人の侍女の方達が入り口付近にギッシリ 彼女達の声は小さくて話の内容は、聞こえなかったが、なんだか楽しそうだった 「......が、頑張ります」 「そろそろ、いいかしらん?ん?」 「ふぎゃっ!」 突然、後ろから声がして驚き、我ながら変な声が出る 振り返ったが、声の主はいない あーりっ?......後ろからだと思ったのに 「ここよ!奥さま!ここ!」 前の鏡を見ると僕の後ろに小さな女性がいるのが見えた 僕が5フィートちょっとだから......4フィートくらい? 「クリス、仕立て屋のマーフィーだ」 「あ、つ、つまっのクリスです」 「クリスさん、坊っちゃんの奥様にお目にかかれて光栄だわ!」 「あ、りがとうござちます」 「あははっ!緊張しないでっ......坊っちゃま。いえ、公爵様。殿方は、外していただけますか?」 「あぁ、そうすることにしよう。いいものを頼む」 アルフレッド様が出ていって僕と仕立て屋のマーフィーと残った侍女の2人になった すると、マーフィーが巻き尺を取り出して、僕のあらゆるところのサイズを測っていく 「さ、採寸は終わりです。生地を選びましょう!」 棚の中央地点の凹んでいる板が倒れてきて、長い机が作り出される そこにズラリと並べられた素材も色も違う布たち その中で僕が惹かれたのは......光沢のある鮮やかな青 彼の瞳の色だ...... 「旦那様の瞳の色でございますね」 ほぼ無意識で思っていたことを当てられ、動揺して伸ばしかけていた手を引っ込める 「お目が高いですね、奥様。それは、東国から輸入した絹のようなさわり心地の布でございます。光にさらすと......このように、見える色を変えるのです」 「綺麗ですね......これで作っていただけますか?」 「ええ!ええ!もちろんですとも!素敵なものを仕立てて参りますわっ!」

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