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第18話

僕は今、花嫁衣裳を着ています 「あ~、も~少しお腹周りに余裕持たせましょうか。上の部分は、もう少し絞って!あ、クリス動かないでね。針が刺さっちゃうから」 「は......はい」 妊婦体型のソルトーがないらしく、僕がソルトーがわりをしている 皮肉だ...... 公爵夫人は、今の僕と同じ様な体型だというのだ つまり、妊娠後期 信じたくは、ないけれど...... 僕が追い出された(あの)後すぐに、あの娘(ミザリー)(アル)は、あの夜僕にしたように愛を囁いて抱いたとしか考えられない 足元から崩れ落ちそうだった ゴシップを見たり読んだり聞いたりした時でも、きっとって何処かで期待してた きっと、僕を迎えに来てくれるって そんな資格、あるはずもないのに...... 『出ていきなさい!今すぐ!汚れた血など公爵家の恥だわっ』 ミザリー(彼女)にあんな風に捲し立てられても、別に出ていく必要はなかった 結局、出て行くと決めたのは僕だ 彼から離れたのは、僕自身 誰にも彼を渡したくないのに......僕と一緒になることが1番赦せない 「クリス、あなた大丈夫?真っ青よ?」 「あ......ん、ちょっと座らせてもらっていいですか?腰にきたみたい」 「大丈夫よ。今は、裾のディテールの構図練ってるところだからね」 すぐ側にあった背もたれ付きの椅子に腰を下ろす 最近、脚の付け根のところや腰が痛む お医者さんには、出産に耐えられるようもっと脂肪と筋肉をつけなさいと言われていた お腹の子が大きくなるに連れて、期待や幸福感も大きくなる一方で、不安や罪悪感も日に日に膨れ上がっていく 「この子は......親が、僕で幸せなのかな?」 「え?何か言った?」 「あ、いや......公爵様の婚姻の儀は、王都で行われるんですよね?」 王都で行われるのなら、直接みなくてすむ 純白のドレス(これ)を身に纏い幸せそうに微笑み合う2人をみなくてすむ 「そうらしいですよ?王都は、今頃から賑わってるらしいし。レノンドアール公爵家の元当主は、皇太子様と従兄同士らしいですからね。クリスくん、気になる~?」 「ちょっと、マヤ!仕事しなさい」 「は~い。私も行ってみたいわ~」 先輩弟子のマヤさんは、噂好きでよく街に出掛けては、世間の情報を収集してくる お腹が大きくなって、出不精になった僕の有難いマスメディア的存在 「クリス。後は、縫ってしまって完成だからもう休んで良いわよ?」 「はい、ありがとうございます」 「明日は、早起きしてね?」 「は、い」 何だか楽しそうなマーフィーさんたちに軽く礼をして部屋に帰る 花嫁衣裳が出来上がったのは、その日の明け方頃だった

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