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第1話
「お前は、今日から俺の側妾の1人だ。せいぜい、俺に尽くし正妃の座を目指せ」
目の前でエラソーに宣う男は、この国の皇子だ
第何皇子かは、忘れたが......
「お断りしますっ!」
「なっ!」
ふふんっ言ってやった
見目は......確かに良いが、こんな横着な奴の奥様業なんて誰がやるもんかっ!
冷たい大理石で作られた床に高そうな布を何枚も垂れ下げた天幕
嫌味なくらい金のかかった城だ
「外に出れば、待つのは死だ」
「っ――!」
出口へと進んでいた足をピタッと止める
いくら苦痛な目に遭ったとしても、苦しみながら死を待つのは、ごめんだ
「何が気に入らない?」
「全部!」
「この顔もか?」
いつの間にか後ろにいた男に顎を掬われる
「お断りだっ!」
ガツンと男性の急所を蹴り上げた
「いっ――!」
「ふんだっ!もげろっ!」
こんなに自分と体格差のある相手をノックアウトさせることは、滅多にないが、安定のクリーンヒット
「まっ、す......ます、気に入った。お前、名は?」
「相手の名前聞くなら、自分から名乗れ!変態!」
折り畳まって僕より小さくなった相手の背に乗る
「上等だ、肝が充分過ぎるくらいに据わってやがる。ショガタール国第3皇子ルカ・R・ショガタールだ。言ったぞ」
「ワサーノ出身のトア」
「トア、降りてくれ」
男の背から降りると、身なりを簡単に整えた男が手を差しのべてくる
この国独特の挨拶
人差し指を絡ませて、お互いの拳同士をくっつける
「気の強いお前を気に入った、トア。お前を側妾とし、ゆくゆくは私の正妃候補とする」
「はぁ!?」
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