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同じ穴の狢 ★

 マネージャーが帰っていった後、さっさと後処理をして、ソファの周りが汚れていないか確かめながら手早く掃除をした。  いつものように店内を点検し、戸締まりをして帰ろうかと荷物を持ったところで、店の扉が開く音を控え室から聞いた。  マネージャーが忘れ物でも取りに帰ってきたのかと思い、フロアへ出ていくと。 「あれ」  マネージャーではなく、店で一番人気のホストが立っていた。 「どうした? 今日は客とアフター入ってただろ?」 「……つまんないから、仮病使ってキャンセルした」 「……そうか」  ホストはじっと誉を見つめて動こうとしなかった。その態度で男がどうしたいのか、すぐにわかる。 「今日はダメだ」 「……なんで? マネージャーとヤッたから?」 「……それもあるけど。疲れてんだよ。もう、遅いし」 「マネージャー下手なんでしょ? 誉さん、満足できるわけ?」 「……別に、満足したいわけじゃないから。ていうか、『誉』って呼ぶな。『藍沢』にしろって言ってるだろ」  素っ気なく答えて、荷物を持った。 「ほら。もう、店閉めるぞ。タクシー呼んでやるから、今日は大人しく帰れ。明日同伴もあるんだろ? 早く帰って、寝ろよ」 「……子供扱い止めてくれる?」 「そういうつもりじゃないって。お前は店の大事な商品なんだから。ケアするのは当たり前だろ」 「俺が大事な商品だったらさぁ。大事に扱ってよ」 「…………」  ああ。面倒くさ。  我儘(わがまま)で自分勝手な年下の男を、冷めた気持ちで見る。マネージャーもこの男も。みんな面倒くさい。誉とヤることしか考えていない。こっちの都合なんてお構いなしだ。  でも、それで甘い蜜を吸わせてもらっている自分も、結局のところ同じ穴の(むじな)だ。  はあっ、と特大の溜息(ためいき)を心の中だけで吐く。誉は手に持っていた荷物を、乱暴に店のソファに投げ置いた。

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