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ヤバいな ★
「あっ、あっ……はっ……んっ……」
つい数十分前にマネージャーと交わっていたソファで、今度は別の男と後ろから繋 がっている。その事実に苦笑いしそうになる。
なんで一晩に2人も相手をしないといけないのか。風俗嬢でもないのに。
まあ。似たようなもんか。
こんな状況で救いなのは。この男が、マネージャーよりはセックスが上手いことだった。それと、無駄口を叩 かないこと。
マネージャーの時は、イく兆候すらないことが多いが。この男とする時には、それなりに快感も得られたし、調子が良ければ中イキできることもあった。ただ、それはいつも期待できることではない。
この男のセックスは、かなり自分勝手で一方的なものだった。自分の好きな体位で、好きなタイミングで終わらせる。愛という字を付けるのがおこがましいぐらい、愛撫 はおざなりで、情もなかった。気が向けば手で抜いてくれる時もあったが、その気がなければ本人が絶頂に達した時点で終了する。誉は結局その後、自分で抜いて火照りを冷まさなくてはならないこともよくあった。
そう考えると、マネージャーは少なくとも誉を女みたいに扱って優しいセックスをしてくれるし、誉をなんとかイかせようと頑張ってくれてはいるので(気持ち良くはないし、イけた試しはないが)、精神的にはマネージャーとのセックスの方がマシと言えるのかもしれない。
それでも。この男を拒むことができないのは、拗 ねられて店を辞められると面倒だからだった。確かにホストなんて代わりはいくらでもいるのかもしれない。ただ、この男は特別だった。
世の中には努力しなくてもその道で軽々トップを取ることができる人間がいる。こいつがまさにそうだった。この店の利益の50%ぐらいを賄っているほどの人気ホストだ。同じ逸材を探し出すのは一苦労だと思えた。引き抜きの話もよく耳にするし、誉が相手になることで店に留まり、客に愛敬を振りまいて儲 けてくれるならそれでいい。
それに、恨みでも買ってクビにされても困る。このホストとは対照的に、誉はこの店に絶対に必要な存在ではないのだから。
「……気持ちいい? 誉さん」
「あっ……あっ……珍しいな……お前がそんなこと……あっ……聞くの」
そう言うと、ホストの男は抽送を続けながら、じっとりと誉の尻を撫 でた。少し間を置いてから、誉の問いに答えた。
「なんか……ちょっと、妬けたかも」
「え?」
「マネージャーに」
「…………」
ヤバいな。直感する。この傾向は良くない。自分と相手はあくまで体だけの関係であるべきだ。それ以上になることはお互いのバランスを崩すことになる。
こういった、相手の男が今までとは違う反応を見せ始めるケースは、過去に何度も経験がある。
誉にハマりすぎた男たちと同じだ。これが酷くなると、いざこざが増えて面倒なことになる。
こういう時は無反応に限る。
男の言葉には何も答えず、喘ぎ声だけを出し続けた。こいつだって、この関係に誉がなんの意味も持たせていないことはわかっているはずだった。
男はしばらく黙ってゆっくりと腰を動かしていたが、いつものように徐々に抽送を速めると、自分のイきたいタイミングで、誉に構うことなく誉の中に欲を吐き出した。
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