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休憩所

 汗は十分かいたので、先にサウナを出た。シャワーで軽く汗を流して着替えを済ませると、荷物を持ってジムに設置されている休憩所に入った。自販機が何台かと、テーブルと椅子が数セット用意されているだけの、小さなスペースだ。休憩所の奥には、マッサージチェアが置かれている部屋もある。  ここのジムには夜まで開いているカフェもあるので、そちらに人が流れることが多い。だから、この休憩所はいつも比較的空いている。今夜も休憩室にいるのは、誉を含めて数人程度だった。  誉が利用したのはこれで2回目だが、この休憩所に関する情報は、最初にここで休憩した時に会話をした常連らしい中年の男に聞いた。  自販機の隣に置いてあるウォーターサーバーから紙コップに水を()んで、空いている椅子に腰かけた。  千晃を誘ったのは少し強引だったかなと反省する。でも、静かなところで、きちんと話をしたかった。まだ来たばかりだと言っていたし、気長に待つとしよう。そう思って、携帯を取り出したのだが。 「あれ」  携帯を弄り始めて10分もしない内に、千晃が休憩所に入ってきた。 「早かったね」 「まあ……今日はサウナだけにしようかと思ってたから」 「そうなの? 俺、もしかして、急かしちゃった?」 「いや、違う」 「本当に?」 「ん」  そう答えながら千晃が自販機に向かった。コーヒーを2つ買って、1つを誉に差し出した。 「え、待って、払うから」 「いい」 「でも……」 「いいから。……この前のお()び」  無理やり理由を付けたことは明らかだった。でも、ここで押し問答しても時間がもったいない。遠慮するのは止めて、お言葉に甘えることにした。 「じゃあ、ありがとう」  笑顔でそれを受け取った。千晃が椅子に座ったところで、缶コーヒーの蓋を開ける。 「お疲れ様」  そう言って、缶コーヒーを傾けると、千晃も軽く缶を当ててきた。ゆっくりと一口飲む。あまり時間を取らせても悪いと思い、すぐに本題に入った。

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