38 / 56
純愛Ⅳ《緋禄side》4
「死ぬって…なんだよ、それ」
誰にも知られたくなかった。
俺は弱いんだって思われたくなかった。
死ぬことを告げれば、生きてることを同情される。
同等でありたい。
生きてる間は同等でいたいんだ。
「あと数ヶ月で俺は死ぬよ。だから病院に行っても結果は見えてる」
「嘘だろ?」
「嘘であってほしいけどな」
俺は笑ってみせた。
それは、寺伝が悲しい顔をしてしまったから。
誰もこんな話聞いて笑ってられるやつなんていない。
だから、俺は笑わなきゃ。
「寺伝…咲輝の誕生日が終わったら…必ず明日には病院に戻るから、今だけは見逃して欲しい」
俺にはもう『来年』はなくて、
自分の誕生日まで生きてられるか分からないから、
「必ず戻るから。信じて」
だからせめて大切な人の誕生日には一緒にいさせて。
「…分かったよ。俺が病院に伝えとくから。今頃大騒ぎだろうし早めに戻れよ」
寺伝は、掴んでいた俺の腕を放してくれた。
「ありがとな。あと、一緒に咲輝に渡すアクセサリー選んで欲しいんだけど」
そう言って、寺伝をアクセサリーショップに連れて行った。
寺伝はセンスいいし、俺は全くこういうセンスないから助かる。
「前山の指の号数分かるのかよ?」
「あ、知らね…」
本当は咲輝を連れて一緒に選ぶ予定だったんだ。
でもまさか台湾に行くとは思わなかったから。
「お前なぁ。確認しとけよ。まぁたぶんこれぐらいかな…間違ってたらごめん」
「いいよ。チェーンも買ってネックレスとして身につけてもらうから」
大事なのは、忘れないように身につけて欲しいことだから。
身につけてる場所は関係ないんだ。
「倒れそうになったら連絡しろよ」
「あぁ。ありがとう」
そして俺は寺伝と別れ、咲輝の泊まっているホテルへと向かった。
ともだちにシェアしよう!