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純愛Ⅳ《緋禄side》7

行為が終わって、俺がシャワーを浴びて戻ると咲輝は寝ていた。 相当疲れてたんだろうな。 ずっと撮影づくしで休む暇無かったって言ってたし。 俺は咲輝の寝ているベッドに座って、咲輝の寝顔を見つめた。 月明かりに照らされて、綺麗な寝顔だった。 ずっと見ていたい。 出来ることなら、ずっと。 偽りじゃなくて、本当に俺のものにしたい。 でもゲームにしないと、リセットできないから。 想いをリアルにしてしまえば、辛くなるのは目に見えてる。 だって、俺はもう長くないから。 こうして咲輝の顔をあと何回見れるんだろう。 あと何回、咲輝を感じれるだろう。 対等でありたいよ。 同情されたくない。 きっと、咲輝が目覚めた頃には俺は病院を抜け出せなくなる。 事実を知られるのも時間の問題だ。 死ぬのは怖くない。 ただ、 こんなにも生きたいと思えるのは咲輝がいるから。 咲輝は俺の全て。 「…ごめんな、咲輝」 俺はそう言ってホテルを後にした。 「迷惑かけてごめんなさい。今から病院に戻ります」 そう病院に電話をかけて、タクシー乗り場まで歩いた。 あのまま咲輝と一緒に寝たら、泣いてしまうだろう。 泣いたらゲームオーバーなんだから。 俺からゲームをリセットするなんて有り得ない。 泣くな、 ―…泣くな。 空を見上げると、まだ星空が広がっていた。 そういや咲輝の誕生日、七夕なんだよな。 織姫と彦星でさえ、年に1回は逢えるのに、 俺たちの七夕はもうこれで最後。 天の川が広がっても渡ることは出来ない。 涙が止まらない。 「ははっ。よかった…こんな姿咲輝に見られなくて…」 こんなの咲輝に見られたら、ゲームオーバーになるところだった。 どうして、 こんなにも愛しくて、苦しいんだろう。 ずっとずっと、大切な人と一緒にいられたらいいのに。 でも俺には無理な願いだから、 あと少しだけ、ずっと一緒にいよう。 あと少しだけ、恋人ごっこを続けよう。 俺は、涙が零れ落ちないように滲んだ星空を見上げていた。 咲輝、誕生日おめでとう。 もう二度と言えない台詞だけど、 最期に咲輝の誕生日を一緒に過ごせて幸せだったよ。 おめでとう、咲輝。

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