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第5話
ヴァンパイアよりも先に撮影を終え、小部屋の机の上に置いてあった、カチューシャ型の狼の耳。それが遥人の頭の上に装着されていた。
(に、似合う……っ。こっちのが、だんぜん……っっ)
遥人はどちらかと言えば、大型ワンコを連想させるタイプ。
ハマりすぎる。
似合いすぎる。
詩雨の心拍数が更に上がる。
が、そこで、はたっと気がつく。自分の頭に刺さったもの──手を伸ばし、触ってみる。
「これはっ。ネコミミっ」
カチューシャ型の、黒猫の耳。やはり、先の撮影で使っていた。
「可愛いですよ。詩雨さん」
「かわいくねーっっ」
心底嫌そうな顔をして猫耳を取ろうとするが、両手ともぎゅっと遥人に掴まれる。身体ごと引き寄せられ、正面から緩く抱きしめられた。
手はいつの間にか恋人繋ぎになって、詩雨のお尻の辺りにあった。
ちゅっ。
まず猫耳にキス。
「可愛いですって。詩雨さん、猫って感じしますよね」
そう言いながら、詩雨自身の耳に、ちゅっちゅっと音を立てて何度もキスをする。
ぶるっと、身体が震えそうになるのを堪えて強気で応える。
「そういうおまえは、でっかいワンコだな。っていうか、おおか……んっ」
最後まで言えなかったのは、耳の内に舌をぐりぐり入れられたから。ぐちゅぐちゅと音が反響する。
「も……やめ……っ」
たったそれだけで、力が抜けそうになってくる。それを感じながら、ふふっと遥人が楽しげに笑った。
「やっぱ、かぁわい」
彼がもっとも好きな場所──詩雨の色気が際立つ白い項の、さっきつけた紅い徴しをぺろりと舐める。何度も口づけ、ちゅうっとさっきよりも更に強く吸う。
「ん……ハルっ……っ」
そこはこういう時にいつも執拗に責められる場所で、酷く感じ易くなってしまっていた。
詩雨の身体からはすっかり力が抜け、背を棚に預けながら遥人に支えられている状態だった。
「詩雨さん」
遥人に甘く名を呼ばれ、眼を合わせる。
(うっ、ミミっっ。そういえば、しっぽ! しっぽ、どこかにっ)
この部屋の何処かに尻尾があるはずだと考えたが、探している余裕などあるはずもない。
「なんか、また、面白いこと考えてます?」
「しっぽが……」
「しっぽ?」
と聞き返しながらも、答えを聞くつもりもなく、遥人はその唇を塞いだ。
強く吸いついたり、唇を甘噛みしたり。
詩雨は、唇の割れ目を舌先で突つかれると、薄く開いて温い舌を迎え入れた。すぐに自分の舌を絡め取られ、いきなり激しいキス。
時々解かれては、口内を舐めまわされ、喉の奥までまさぐられると、少し苦しくなる。
「ん~〜〜っっ」
詩雨の喉が苦しげに鳴った。
再び舌を絡め合う。
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