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第7話

「どうして? ここですると、仕事の時に思い出しちゃうからですよね?」  詩雨はずばり言い当てられ、言葉もでない。 「──思い出せばいい。いつも、俺のこと考えて?」 「ハル……」  海外からの依頼もくる人気モデル。誰が見てもイケメンの『ハル』。しかし、彼は周りの評価などまったく関係ない。見えているのは、詩雨のことだけ。  詩雨も実は、遥人の執着や束縛に喜びを感じている。自分にはそういう性癖があるのだと、けして認めたくはないのだが。  ずっと叶わぬ恋をしていたから。  この新しい恋。  三十も過ぎてから初めてできた恋人から、愛される喜びに心も身体も打ち震える。だから、最後には許してしまう。 ★ ★  黙って見つめ合う。  遥人が愛おしそうに詩雨の髪を撫でる。  小指で引っ掛け青いリボンを解き、後ろの棚へ。それがスイッチだったかのように、再び遥人は詩雨の唇を塞いだ。今度は初めから激しい。  詩雨も自ら舌を伸ばし、遥人の舌に絡みつける。  遥人は器用に詩雨のデニムパンツの前を寛げ、その昂りに直に触れる。 「ん……?」  いきなり直の愛撫に、絡めあった舌の隙間からやや驚きの混じった声が漏れた。  柔らかく握りこまれたり、先端をかりかりと軽く爪で引っ掻かれたり。ソフトな愛撫にじわじわと甘い痺れが背筋を昇ってくる。 「あ……ぁん……」  それとともに喉奥から漏れてくる声も甘くなる。貪り合う唇の間から、ふたりの唾液が混ざり合い顎を伝って滴り落ちた。 「んんっ?!」  詩雨は一瞬息を飲む。  自分の昂りに触れているのが、手とは違う質感のものに変わった。湿った熱い何か。それと一緒に再び握り込まれる。  それは、いつの間にかスラックスから出されていた、遥人の熱い昂り。自分とは長さも重量も違うそれだった。  遥人の手が詩雨に重なり、そこに導く。一緒にということだろう。  詩雨も促されるまま二つの屹立を握ると、その上から遥人の大きな手が覆いかぶさってくる。  緩やかに、ではない。遥人も我慢できないのか、性急に追い立てられる。  お互いの唇は離れ、行為に集中する。  ぐちゅぐちゅというぬめりを帯びた水音と、ハッハッというふたつのトーンの短い呼吸音が、小さな部屋にこだまする。 「ハル、も、いく」  程なくして、吐息のような切ない声が零れた。 「いいよ、詩雨。イッて」  そう言われた途端詩雨は、「んんっ」と呻いて欲望を吐き出した。白濁がふたりの指の間から流れ落ちていく。  それと共に詩雨の手は力をなくしたが、遥人は構わずより激しく扱き始めた。限界が近いのだろう。

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