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萩ノ宮 14

「昂輝、しばらくの間、本邸の方に来るように。離れがある。その中では自由にしてていい。送迎は真嶋にさせる。当面は、単独での外出は禁止とする。」 てっきり、ここで音楽に触れたことを怒られると思っていたが、理事長室へ呼ばれて行ってみれば、突然の軟禁を言い渡された。 「どういうことでしょうか?先ほどの真嶋恵理子のテストの件で、お気に障ることをした、ということですか?」 「そうではない。ただ、おまえは従っていればいい。一時的なことだ。」 どうも、言い分の歯切れが悪い。何を隠しているのだろうか? 「それでは納得が出来ません。理由を……」 言い切る前に、祖父が睨みあげてくる。 「こちらの言うことが聞けないのなら、監禁する。首輪をつけてでも、檻に入れるぞ!!それが嫌なら言う通りにしてればいい。」 無茶苦茶だ。こんな支離滅裂なことは初めてだった。だいたいからして、本邸に招かれること自体が不自然だった。 ――今になって、何故……? 日本に来た頃ならまだしも、何年も経過し、社会に出てから、何故、そんなことを言い出したのか、全く理解が出来なかった。 学校の敷地すら、個人の意思で出ることも許されないとは… 昂輝にとって、非常事態であることには変わりない。もし、言いつけを破ろうものなら、本気で監禁されてしまうだろう。 祖父に監禁されるなど、ゴメンだ。 「わかりました。どれくらいの期間ですか? とりあえず、当面の着替えなども用意しなくてはなりませんので。」 ため息混じりに返答をする。 不本意だということを、とりあえずアピールしなければ、納得できないからだ。 「2週間……いや、1ヶ月……それくらいの目処で考えている。」 「……1ヶ月……ですか……」 その間、こちらの都合での勤務形態になる真嶋は犠牲者だろう。 「家事全般は、うちにいる家政婦がやるから、おまえは何もしなくていい。それと、こういったことは、今後もあるだろう。いちいち詮索はするな。」 「……はい。」 そう返事をするほかに、対処法はなかった。

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