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萩ノ宮 22

「驚きました。本来のお姿の方が素敵だと思います。昨日の奥様のお言葉が、やっとしっくりとしました。」 帰宅後、シャワーを浴びて、プライベート用の服に着替え、髪を整え、カラコンを外した姿を、まきなが見て、率直に言い放った。場所は風呂場と洗面所を出てすぐの扉の前だ。さすがにそんなところに待機されていては風呂を覗かれていたのではないか?という疑念すら湧く。 まだ扉のノブは握ったままだし扉から片脚しか出ていない状況だ。 軽く笑みを引き攣らせながら、昂輝は 「……そりゃ、ど〜も。」 としか、返すことが出来なかった。 廊下だけで繋がっている本邸から、まきなは、無遠慮にこの離れに、入ってくる。着替えを持たず、バスローブやタオル1枚で歩いている姿なども見られたいとも思わないし、潔癖という訳ではないが、そこまで晒せるほど無神経でもない。 いくら、生活をしているのが自分だけだと思っていても、昂輝にとってはプライベート空間だ。万が一にも裸で歩いても目の前の『まきな』は平然と見つめてきそうで怖い。 「ご自分を生かした服装をご存知なのに、何故、いつも、ご出勤されるときは地味な格好をなさるのですか?」 今の服装はタイトなカットソーに細身のデニム、という姿だ。なので、まきなの言葉もごもっともな意見だとは思うのだけれど… 「色んな訳があって、目立てないんだよ。街中では目立たなくても、この容姿は学校じゃ目立つんだよ。」 ため息混じりに呟く。 「目立っても良いではないですか。ご自身の立場も、容姿も、もっと認めて上げるべきだと思います。」 「オレは一教師であって、萩ノ宮の姓も名乗っていない。それに、大学時代で懲りてるんだ。この見た目に。」 時間がなくて髪をそのままにして伸ばせば、女性と勘違いされ、反発して短くしたところでそれも似合わない、とティティーに散々笑われた。それはまだ幼さの残る頃の話だが、音大でも綺麗だと、もてはやされても表面しか見ない輩に興味はわかない。特にこの眸の色だ。 こっちに編入してきてからはサングラスをかけてることが多かった。髪の色は珍しくなくても、目が陽射しに負けることが多くなったのもあった。不必要に目の色が目立たないように伊達メガネをかけて授業を受けたり、それ以外はサングラスで過ごす。 教育実習の時にはカラコンを使った。それでも顔立ちや髪の色に散々興味を持たれた。だから今の学校に新任で就いた時には顔を隠すような外見をつくりあげた。 だからこそ、その場所に溶け込み、興味を持たれないように、過ごしてきた。 まだ、着任して、やっと2ヶ月目に入ったところだから、油断はできないが、出来る限り、このまま穏やかに過ごしたい。 そんなことを考えているうちに、ダイニングに到着してしまった。

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