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Inverse view 14

「ひゃあ……あ……んっ……!!」 ホテルの部屋の中では、ほぼ、バスローブか、全裸でいた為に、ことあるごとに下肢を咥えられては、甘い声をあげている。勝手にその体勢を作られ嬌声をあげさせられ、原因を作った張本人が言う言葉なのか謎なのだが、 「……本当に、キミは……どれだけ僕を夢中にさせれば気が済むんだい?」 一人がけのソファに緩く腰掛け、その肘掛に、両脚をかけられ、大きく開脚した中心に、鮮やかな金色の髪が揺れる。裏筋を舐め上げ先端に吸い付く…… 「……あっ……やっ……そこ……」 口腔内できつく吸われ、ゆるゆると中心が充血して、硬く勃ちあがる。意識ごとその場所に集中してしまい、ますます体温と感度が上がっていく。 「でも、これが、気持ちいいんでしょ?ほら、こんなに涎を垂らして。舐め取ってあげないと、あっちこっちがびしょびしょになっちゃうよ?」 先走りの蜜をねっとりと舌に絡めて舐め取られると、ひん!!と、大きく媚びた甘い声が上がり、腰が跳ねる。 陰嚢を弄ぶ指が、蜜と唾液で、たっぷりと潤い、その滑りを利用して、奥まった秘所へ当てられ、ゆっくり潤してから指を入れる。 クリスがいちばん感じる場所を把握した指は、寄り道をすることなく、その場所を引っ掻くように、擦りあげ、前からは、口筒で、搾り取られるような口淫を施される状態では、その感覚を覚えたての躰は然程の時間を耐え抜くことが出来る気がしなかった。それだけアルノルドが手馴れている証拠でもあった。 案の定、前からも後ろからも同時に刺激をされて、あっという間に嬌声を上げながら果ててしまう。クリスの出したものを美味しそうに嚥下する瞬間をいつも見てしまう。 「…………それ…………イヤ…………」 と言っても、アルノルドはやめる気は、まったくない様子で、何度言ったかもわからない。 「……本当に、感じやすい躰をしているね。まだ、指だって1本しか入れてないのに。ただでさえ、色気を垂れ流してるってのに、少しの間、離れなきゃならないかと思うと、気が気じゃない。」 大きく、小刻みに、弾んだ息をしたまま、躰は弛緩してしまっている。こうして、一度、火のついてしまった身体の火照りは、彼でなくては冷ますことが出来ない。 クリスの想定外の羞恥の塊から理性を無くすことが、彼にとっては楽しくて仕方ないらしい。指を入れたまま後孔に舌を這わそうとすると、クリスはいつも同じ言葉を紡ぐ。 「……ここじゃ……イヤ……ベッドへ……行きたい……」 彼は、この『オネダリ』が、好きなようだった。まずベッド以外が嫌なのはヴァルターが寝室以外の部屋に出入りするのも理由の一つだ。他人にセックスを見られて興奮するタイプでもなければ、互いにその時の表情を誰かに見せるということが先ず嫌だった。 「姫の望むように。」 ニヤリと、口角をあげて、エメラルドグリーンの眸が細められるが透き通る。それに応える如く、広いリビングから、寝室へとお姫様抱っこで抱えられたまま、連れていかれるのだ。 クリスだって、立派な大人の年齢で、社会人であるにも関わらず、簡単に持ち上げられることにすら羞恥を感じるが、アルノルドには本当に適わない。抱えられることがあっても、その逆は絶対に出来ないからだ。体格差がありすぎる。体つきも筋肉が少なく細身の自分と骨格から筋肉までしっかりと標準搭載されてる西欧人とは比べ物にならない。特に夏の陽の光が天敵でもあったから。 姫扱いされることも、ちょっと納得は出来ないが、アルノルドの見た目が完全に王子様キャラだと思うと、確かに、完全な男らしさに欠ける自分がそう呼ばれても反論できない。 なにも考えずにアメリカに渡ってきて、どうしてセックスに溺れる日々を想像出来ただろうか。しかもクリスは抱かれる側だ。セックスは無防備になる行為だ。お互いしか見えてない状態で、互いの躰を貪り合う。 イく直前のアルノルドの艶っぽい表情がクリスは好きだ。同じように躰を重ねているはずなのに、アルノルドの体液は薄くなることは無い。 女ならこれだけの勢いで抱かれていたら直ぐに妊娠するだろう。排卵日の関係上、妊娠する可能性が高いのは月に1日〜2日程度ではあるが、アルノルドの性欲は留まるところを知らない。それを嬉しく思ってる自分もどうかしてる、と思う。もっと淡白だった……と思う。 けれど、お互いに片付けなければならないものはたくさんあった。一緒にいることを選ぶための準備が必要だ。 どういった結果になろうが一度、日本に戻らなくてはならない。祖父には怒られ、父には何を言われるだろう? ――真嶋はなんと言うだろう? 音楽の道を選ぶことを反対されるだろうか?不安はあるが、今は、目の前の男にしがみつき、ベッドに優しく下ろされたまま、上にのしかかってくる男から与えられる快楽に溺れる為に、キスを求め、背中に手を回しながら、抱かれたい、という合図を送る。 3週間のアメリカ滞在期間に、そんなやりとりが、ほぼ毎日続いていたのだった。 この3週間で自分の世界が180度変わったのは言うまでもない。

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