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preparations 13

「Why are you here? Why don't you contact me in advance? 」 「Well then it will not be a surprise, is it? I wanted to surprise you. Anyway, You keep my word "So you won't be a surprise? Do you need this?"」 ますますクリスの顔が青ざめていく。 『どうしてここに?なんで前もって連絡をくれないんだよ』 『それじゃサプライズにならないだろ?僕は君を驚かせたかったのでね。それにしても、君はどうも僕のいうことを聞いてくれないようだね。これはお仕置きが必要かな?』 そんな物騒な会話をしているとは露知らず、姉妹は唖然としている。サングラスを外してアルノルドは姉妹にニッコリと微笑む。が逃げ腰のクリスの腕を掴む手は少し強い。 目の前の『植田昂輝』も魅力的だが、この世界的指揮者、アルノルド・シュレイカーも細いながらも程よく筋肉のついた体躯に鮮やかな金髪、そして、エメラルドのような翠色の眸。男らしい顔立ちは、女性の本能に火をつけるには充分すぎるほどの官能的な強さを秘めた人物だった。 男が種を残すため、身の危険を感じることにより、性欲が増すように、女は強い種を残すため、本能でその匂いをかぎ分ける。だが、当のアルノルドには種を残す本能は持ち合わせていない。 『さて、クリス、僕は髪は許したけど、眸の色は隠すように伝えてあったはずだったよね?何故、女の子2人をはべらせて、こんな密室でなにをしようとしてたのかな?』 声色は優しいが、アルノルドは明らかにその中に怒りを滲ませている。 『こ、この子たちは生徒だ。ほら、オレ、日本では学校の先生をしてるだろ?』 『それなら、学校で十分出来ることなんじゃないかな?こんなところでコソコソと僕に隠れて、まさかまた他の女と寝ようとしてたの?そんなことをしたら、許さないって伝えてあるよね?このまま監禁されたいのかな?』 2人の会話は英語の為、突然現れて、英語で捲したてるようにクリスに尋問するアルノルドに驚きすぎて田山姉妹にはこの物騒な会話は上手く聞き取れていない。ただ、今は呆然としている2人が冷静になって単語単語を拾っていけば、痴話げんかをしてることくらいすぐにわかるだろう。 「お嬢様方、申し訳ない。今日のところはお引取り願えますか?アルノルドも長旅で、少々疲れておりますのと、今後、彼の楽団で『萩ノ宮昂輝』様をお迎えするに当たりまして、話し合いに来日しております。日本での公演の際にはご招待させていただきますので、その際には是非とも、会場にいらしてくださることをお待ちしております」 流暢な日本語で田山姉妹を言いくるめたのは、他ならぬヴァルターだった。 「なっっ!!嘘……ヴァルター、日本語しゃべれんの?」 「聞かれなかったから答えなかっただけですよ、クリス」 クリスの顔が真っ赤に染まる。肌が白い分、それがとてもよく際立つ。アルノルドは日本語がわからない分、ヴァルターと知らない言葉で会話されていることにも、少々苛立っていた。 『ヴァルター、お嬢様方をお送りしてくれ』 『あいよ』 オーナーに頼んでタクシーを呼び、請求をアルノルドの方へまわすように手配をして、彼女たちを送り出し、貸スタジオの出入り口に背を向けて、そこに佇む。唯一、その場所から2人が残ったスタジオの中を覗ける場所だ。 クリスが絡むとアルノルドの危機管理能力が皆無の為、万が一にも人目につかないように配慮しなければならない。 けれど、中の2人は軽く唇を合わせようとしただけで、場所を移動する、と部屋から出てきた。スタジオは防音設備 は整ってもいるが、防犯カメラもついていることをクリスは知っている。それをアルノルドにはっきりと伝えると、他人にキスで蕩けたクリスの顔を見られるのは嫌だ、と照れたクリスとは別の理由で場所の変更を提案してきた。 貸スタジオのレンタル時間をほぼジャストタイムで打ち切られた姉妹との1度限りの交流会は終了して、スタジオに支払いを済ませ、車を停めたコインパーキングに向かう。 アルノルドは外に出ることに対しても怪訝な表情をした。 「ちゃんと対策はしてあるから大丈夫だよ。それよりもアルノルドもサングラスしないとダメなんじゃない?」 「……そうみたいだね。外の光で目が痛いよ」 日本では『目は口ほどに物を言う』と言うが、クリスやアルノルドの感覚から言えば、目元よりも口元に重点が置かれる。やはり口元が1番正直に見える、という感覚。 もう、それは国が違うのと同じくらいの当たり前の感覚だからサングラスにマスクをするとなれば、マスクの方に違和感を持つのがアメリカでもヨーロッパでも共通の認識だった。だからサングラスは日差しに弱い色彩の色の眸を持つ2人には必需品とも言えた。 サングラスに長い薄手のストールで顔を隠すようにして、キャップを被ったクリスはちょっとした不審者みたいだったが、アルビノの体質なのだから仕方ない。 コインパーキングはすぐの場所にあり、到着するとクリスは支払いを先に済ませる。アルノルドはクリスからもぎ取ったキーをヴァルターに渡し、戻ってきたクリスを後部座席に乗せ、自分も乗り込む。彼らの宿泊先のホテルをナビに打ち込むと、車はゆっくりとナビに従って動き出す。 ある程度のスピードが出た頃、アルノルドはクリスを隠すように後部座席に横たえ、その上にのしかかり、激しいキスを繰りかえす。とはいえ、普通のセダン車だ。 「……ンッ…………はぁ……ん……」 合間に漏れる吐息が徐々に甘さを増していく。ずっと何年もアルノルドについているが、これほどまでにアルノルドを夢中にさせるクリスは本当に『魔性』なのかもしれない 元々節操のない男だったが、昼間の車の中ですら、盛って我慢出来ないほど触れることを求めていたのかと思うと、この男にもそんな感情があったのか、と思ってしまう。誰かに執着する、ということを見たことがないのだ。 それでも、クリスを見つける前までは、遊び相手ともそれなりにイチャついたりしていたらしいが、クリスに魅せられてからはしばらくその相手たちとの接点を絶っていた。 1度でも知ってしまうとハマってしまうインキュバスの力なのか、あまりにもしつこく連絡をしてくるから、無理難題を押し付けたのが事の発端だった。 「そんなに欲しけりゃ全部準備して僕が突っ込んで腰を振るだけのオナホールになってくれるなら考えなくもない。だけどそれも期限付きで、ゴムも必須」 それでも抱かれたい、と連絡の電話を受ける時には、相手の息遣いが準備万端、といった感じになり、排泄行為でもするかのようなセックスしかしなくなっていた。 やっとの思いで手に入れたクリスと関係を持ってからも、各国の自称恋人たちから連絡があるたびに、準備が整ってるから、と呼び出され、別れ話ついでにヤることはヤって来ていたが、前言通りゴム必須だ。 けれど、クリスにだけはつけている形跡がない。抱き潰して気を失ってる間に抱えたままシャワールームに行ってバスローブに包んで帰ってくるが、クリスに関してだけは一切手を触れさせない。その間にベッドメイクをするようにホテル側に手配して、2人はフロント以外で誰にも見られることなく最初の3週間、アルノルドはホテルで好き放題していたのだ。 特に「コレを最後に2度と抱くことはないから、呼び出すな」には、元々『期限付き』とは言われていたが、いざ言われるとクレームの嵐を一手に引き受けなければならないのがヴァルターの仕事として一つ増えた。 その中でも好みの相手のところには出向き、同意をすれば、アルノルドがしないまでのサービスをして、美味しくいただいてくるのだが、お互いに好みではない相手もいる場合は、ひたすら説得するしかない。 そして、今、この車の後部座席で、アルノルドに組み敷かれてる美しい青年は、アルノルドの慣れたキスで、すでにトロトロになっている。 そんな光景が目の片隅に入ってくるし、その声の艶に、ヴァルターの股間も形を変え始めていた。 それでも、さすがにこの東洋の国にはアルノルドの自称恋人もいるわけもなく、一人、慰めるしかない結果になるのだろう、と想像がつく。前に来た時は萩ノ宮の爺さんと言葉の応戦をし、日本のオケにヘルプで入っていた人物がいたから、捌け口は存在していたが、今回、その楽団との接点もない来日だ。 アルノルドも男らしく精悍で綺麗な顔立ちだが、やはり、好みではない。クリスのような細くて綺麗でまっさらでいて、それに見合うネコを調教し作り上げるのが楽しいのだ。 クリスの唇の隅から、どちらのものとも言えない唾液が滴り落ちるその様を、指を咥えてみてるしかなかった。

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