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preparations 15

今日はやけに声が聞こえてくる。ヴァルターはその都度の台詞にツッコミを入れている。 我慢の限界などとよくも言えたものだ。吐き出すものは定期的に吐き出してたくせに。本当に禁欲生活をしていたのはクリスの方だ。 「やぁっ、あ、あ、あ、……ぁんっ!!」 「まだイっちゃダメだよ。イク時は最初は一緒にイこう?もっと気持ち良くなって?まだ指2本しか入ってないよ?もう一本は入れて慣らさないと。久しぶりだからね。」 「……やっ、ムリ……あ……あぁ……やっ……やん……」 そう言いながらもその指で前立腺を苛め抜いているのだろう。聞いたことのないような甘い声でアルノルドが囁く。 嫌がらせか、ヴァルターの自慰用にか、寝室の扉が少し開いているのが2人の声が聞こえる大きな理由だ。 ピチャピチャと水音をさせて、たまに啜るような音が聞こえるのは、指で前立腺を刺激しながら、ペニスに舌を這わせていながらも、もう一方の手は、クリスの根元を指の輪で塞ぎ、吐精を止めているのだろう。 どうせ部屋のドアが開いてるんだからと、わざと入ってやって、ベッドのそばの椅子に腰掛けてベッドの上で交わる2人を見る。 「……聞かせるのは声だけだけど?」 アルノルドは不機嫌な声を出す。 「本人はぶっ飛んじゃって、わかってないんだし、見てる分には、減るもんじゃないだろ。 容姿も、そのペニスの形も持ち主に似て上品な形をしている。どストライクで、好みなんだよな。 どうせ、味見させてはくれないんだろ?ヤラセてくれるなら、早々に出ていくけど?」 心底嫌そうな表情を露骨に出しながらも、 「お断りだ。クリスに触れていいのは僕だけだ。いくらおまえでも、クリスの全てを知る必要はない。 立つなら、あのドアの向こうで十分だ。 さっさと出ていけ。」 「……はいはい。わかったよ。」 頭の後ろをガリガリと掻きむしりながら、あっさりと部屋を出ていった。 ――ったく、子供の独占欲じゃあるまいし…… 未だかつて見たことのないアルノルドの執着に、ヴァルターは、ますますクリスへの興味をそそられる。 すすり泣くような、それでいて、快感に堕ちていくクリスの声はヴァルターを勃たせるには充分な威力を持っていた。少量のローションを右手に出し、自分のソレに馴染ませる。下着とスラックスを膝まで下ろした姿はみっともないが、汚すわけにもいかない。 ティッシュをとりやすい場所にセッティングして、目を瞑り、2人の声を聞きながら、自分がクリスを抱いてるイメージで、右手でゆっくりと扱き出す。 まだ、アルノルドの愛撫は中盤で、挿入しているわけではないが、それでもくちゅくちゅと指を出し入れしている水音や、クリスの理性を手放し始めた声は十分にヴァルターを昂ぶらせた。熱い息を「はっ、はっ、」と吐き出しながら、自らを昂ぶらせていく。そこから吐精まではあっという間だった。 ――――ここのところ、俺も溜まってたからなぁ…… 軽くなった下半身を清め、服を調え手を洗っていると、残るのは虚しさだけだった。 クリスの裸体は初めて見たが、アルビノというのは白人よりも白い肌をしていて、しなやかで驚くほどに細く、全てが綺麗だった。すでに胸に散らされた所有の証がその白い肌に映えていた。アルノルドが夢中になるのもわかるほど、その表情も艶があり、乱れているはずなのに美しい。 脳裏に焼き付いてしまった肢体が欲望の灯火に火をつけようとしている。全くもって厄介な人物だ。 高嶺の花を育てて、自分だけの手篭めにする、と言っていたが、その為の調教はすでに始まっている。 スタジオでクリスがアルノルドを見て青ざめたのは、紫の眸を他人に晒してはいけない……コンタクトを外して絶対に他人と会わないという言いつけを破って外に出ていたからだ。 それでも、断れない時もあるだろうに…… 今回はタイミングが悪かったとしか言いようがない。 ここまで狭量のアルノルドを見ること自体も初めてのことだし、クリスに対してだけは、異常な執着をみせ、本人が知ったら引くくらい調べあげている。クリスの気持ちも手に取るようにわかってるはずなのに、ここまで待てないのも意外だった。 いつか、自分にもそんな相手が現れるのだろうか……? マイノリティー故に、誰かをしばりつける鎖など持ち合わせてはいないし、ずっと同じ場所に留まっている訳でもない。だからといって、アルノルドの父親の元へ行きたいとも思わない。アルノルドを護るのが自分の仕事だとわかっているし、他の人に譲る気もないからだった。

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