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preparations 23

暖かな温もりが気持ちいい。 意識が浮上するにつれて、アルノルドの腕の中だということに気付く。柔らかなベッドの中で、素肌を合わせて眠ってしまっていたのだ。 気怠さは残っているものの、体液などはすべて拭われていて、ベッドもシーツが新しいようだった。 サラリとした感触に、眠る前までの汗や白濁を撒き散らした痕跡は見当たらなかった。 ゆっくりと瞼を持ち上げると、すでにアルノルドは目覚めていて、寝顔を観察されていたようだった。 「おはよう、クリス。」 「…お……おはよう…」 気恥しさが入混じり、返事もたどたどしくなってしまう。 初めての夜を明かした時のような気恥ずかしさが、なんとなく心に引っかかる。 いったい、この人はいつ眠っているのだろう?と思うくらい、アルノルドの寝顔を見たことはない。 アルノルドの方は、満面の笑みで、その目覚めを待っていたようだが…… 「キミはいつ見ても美しいね。どんな色にも綺麗に反射をする。陽の光に輝く君は、増して綺麗だ。」 「光を反射させて綺麗なのはアルノルドの方だろ?その綺麗な金髪に、眸は宝石みたいで…」 「きみだって、眸の色はアメジストのようじゃないか。」 真面目な表情で言われても、恥ずかしさは増す一方でもあり、多分、このまま続けても平行線を辿るだろう。 ならば、話の方向性を変えていった方が良さそうだ。 「……あの…さ。アルノルドはどうして突然来日したの?」 「君を迎えに来たに決まってるじゃないか。」 ニッコリと微笑んだまま、即答された。 「昨日も言ったよ?君は無防備過ぎて放置できない。 僕の隣で、僕のピアニストとして、そばにいて欲しい。」 一瞬にして、クリスの表情が曇る。 「……オレは……きちんと責任を果たしてから、次に進みたいと思ってるんだ。」 そう言って目を逸らしてしまう。 「……学校のことだけでなく、理由があるのかい?」 両頬に手を添えて、アルノルドの方に向き直させられてしまう。軽く唇にキスを落としながら、問われた。 「……オレにとって、もう、血縁者は日本にしかいない。祖母との時間を増やすために萩ノ宮本家の離れに住むようになったし、祖母に認められて、本当に嬉しかったんだ。 だけど、オレはその萩ノ宮本家を捨てることを決めた。祖父に猛反対されたことで、守って背中を押してくれたのも祖母なんだ……残された時間を、なるべく祖母と過ごしたい、というのもあるんだ。」 老い先短い人だからこそ、その時間を大切にしたい、その気持ちがわからないでもない。 ヴァルターの言葉通りなのが納得いかないが、 「……それでも……僕ももう、限界なんだ……」 クリスを抱きしめながら、アルノルドは切なそうに囁く。 口元には笑みを浮かべながら……

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