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preparations 8

最初に見た時と、そこから3週間経過した頃では、彼の纏う雰囲気は明らかに変わっていた。どんな風に愛されていたのかは知らないが、傍にいるだけで勃起してしまいそうな色気を身に纏い、あのアルノルドが、壊れ物でも扱うようにエスコートし、誰かを気遣っている姿すら、長年付き合ってきたヴァルターでも見たことがないほどだ。 気恥ずかしそうに、遠慮がちにアルノルドにエスコートをされてる姿や、頼まれて買い揃えた服も、ラフなスタイルでも、スーツでも、何でも着こなしてしまう。 ダークカラーの服は、首から上の色をさらに鮮やかに際立たせていた。コンクールの時には、調査で離れなければならなかったが、それでもステージの上でピアノを弾く姿は、充分にインパクトを残せる色合いは美しいと感じた。 少し長めの髪は角度が変わるたびにプラチナのように輝き、金色になり、オレンジになり、カラフルに輝いていた。音楽家としての興味を惹かれただけだと思っていた。 まさか、あのアルノルドが本気になる相手を見つけてしまうとは、予想外だった。 ただでさえ、数年前に実兄を殺されていて、その犯人捜しに躍起になっているのに、自分から弱みを作るとは思えなかった。アルノルドの特定の人になるとはそういうことだ 兄弟が多いと言えど、アルノルドはそれなりの規模のイタリアマフィアのボスの血を引いている。本人は後継者争いには興味がないだけで、他の兄弟たちはそうではない。 アルノルドに近づくというのは、ある意味、命を狙われる危険が伴うのだ。その為に各兄弟たちとそのパートナーにはSSをつけているのだ。 ソファに座り、そんなことを考えていると、アルノルドの部屋の電話が鳴る。 「…………ハンスからだけど、どうするんだ?準備万端って声だぜ?」 ため息をつきながら、アルノルドが立ち上がると、 「これが最後だと告げてくるよ。おまえは気に入ってたんだっけ?」 「俺には荷が重いかな」 「わかった。とりあえず気分転換してくるとしよう。」 こうやって、思う相手がいるのに、別の男のところに行ってくるのだ。相手も躰目的だから、命を狙われる心配はないから、ホテルのスイートルームでアルノルドが戻るのを待つ。別れ話をしたからと言って返り討ちにされてくるような体力も残しては来ない。 SSである自分はともかく、アルノルドはクリス以外、自分の宿泊する部屋に入れようとはしない。自分のベッドの上で抱くのは、後にも先にもクリスのみだ。 確かに、いつ、誰に命を狙われるかわからない状況で、一番無防備になる時間、一番信頼出来る人間しか傍に置かない、というのはわかる。楽団の人間であっても、他国の愛人でも自宅や、ホテルの自室に呼んだことは一度もない。 アルノルドはキスも愛撫もしない。呼び出した当人にすぐに挿入できるように準備をさせ、欲情してる相手に何の反応も示していない自身を勃たせるよう、自慰をさせながら、フェラチオをさせて勃起をしたら、相手にゴムまでつけさせて、そこでやっと相手はご褒美をもらえるのだと、何人からも証言が出ている。 アルノルドが自分から誘って自室に連れ込んだのは、後にも先にもクリス一人だというのに、部屋に連れ込んだ途端に脅し、媚薬を3つも使った挙句、丁寧に躰中に愛撫を施し、気絶するほど乱れさせ気絶しても犯し続け、自分も媚薬の影響を受けて治まりがつくまで意識を戻しても抱き続けまた気絶しても抱き続け、それを繰り返し何度も何度も繰り返し抱き潰した。 あの日、アルノルドがクリスを抱き続けた時間は8時間弱だ。それでも精液は薄まらないし、尽きることなく欲望を注ぎ続けた。 それこそ、翌日は何もせずだったようだが、離さないように抱きかかえて眠った。 ベッドルームに入ったアルノルドはクリスがいる時は特に電話には出ない。何かの時の為に待機していた。SS用のベッドルームもついてる部屋だ。あのスイートルームのソファやベッドで、何日もクリスが喘ぐ声を聞かされた。声の加減で大体は何をしてるのか、わかるが、他の人間にはしないような丁寧な愛撫を繰り返し、あの細い肢体を仰け反らせ、何度も何度も絶頂を迎える瞬間まで、手に取るようにわかってしまうほどだった。アルノルドの執着がこれほどまでとは、と逆に驚かされたくらいだった。 そこまでアルノルドを夢中にした男はいない。 ヴァルターの興味はそこにもあった。アルノルドは1時間もせずに帰ってくるだろう。相手を捨ててくるにもしても、不平不満という尻拭いはこちらに回ってくる。それを考えると、今から頭が痛くなりそうだった。

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