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負け戦と知りつつも

 不利だと知っていようとも助け出したい者がいる  晴子の意見を聞いていた青年は少しばかり顔をしかめた。 「確かにそれは出来るけどさ……少々危険な賭けじゃないのかい?」 「その通りだ。晴子、あの者がどれだけ危険な存在か知らぬのか。それを野放しにしろなど……」  父と先祖が苦い顔をするが、晴子はただにやりと笑うだけ。その表情がまるで若い頃の己を鏡で映したようだと青年は思った。 「あら、ご先祖様はかつての己の式神を信じられないのですか?」 「そんなことはない。だけど……いや、私の知っているあいつなら、大丈夫かもしれないな」 「ご先祖様、そのようなことを言ってよろしいのですか!? あやつは十二天将の中でも驚恐を司る者。一時的とはいえ首輪を外すような真似など、出来ませぬぞ! 」  すると青年は冷たい目で土御門を見た。青年は持つ扇を刀の如く突きつける。 「あまり私の仲間を悪く言わないでくれるかな。驚恐がなんだ。肩書きにばかり目をやって、本質を見定められないのは良くないよ」 「申し訳ございません」  気づかぬ内に青年の逆鱗に触れてしまったことに気づいた土御門は、慌てて頭を下げる。青年はいいよと微笑むと、晴子の方に視線を戻した。 「あちらの問題なのだから、あちらで解決が最善だろうね。流石我が愛弟子だ。晴子、この賭けに君が勝ったら、まだ教えていない術を教えようかな」 「勝ちますとも。だってご先祖様の式神に誰かを傷つけることを好む者はいないですから」  晴子は無垢な桔梗色の瞳で柔らかく笑う。青年も桔梗色の瞳を細めると、子孫である晴子の頭を撫でた。  健吾と夜萩は戦闘用の衣に身を包み、影縄は懐に小刀を忍ばせる。その小刀は桔梗から念の為と預けられた物であった。 「本当に私が来なくていいのかい?」 「はい、貴女が傷つけば撤退時の逃げ場が無くなる。それだけは避けたいのです」  桔梗は納得いかない顔をしていたが、渋々頷いた。 「分かったよ。もう危ないと思ったらすぐに私の元に戻ること分かったね?」  3人が頷くと、桔梗は困った顔で笑う。本当はついていきたいのだが、来るなと言われれば仕方ないだろう。万が一の時は言うことを無視して向かうつもりだが。桔梗は影縄に近寄ると、服の上から懐を叩いた。 「それは本当は秋也の物。普段から肌身離さず持っている物だから、何かあればお前を助けてくれるかもしれない。大切に使うといい」  道理で手にしっくりくると影縄は納得した。あの戦いの時に主が渡してくれた物であろう。目を閉じると、主と繋がれた縁の糸を感じる。主が連れ去られた後から主との縁の糸を感じづらくなり、主の安否自体が分かりづらくなっていた影縄にとってそれがありがたかったが、主の糸が綻び掛けていることに気付き、息をするのが苦しくなった。 「影縄。大丈夫、落ち着きなさい」  桔梗は影縄を抱き寄せ背をとんとんと優しく叩く。その内に影縄は落ち着きを取り戻したが、不安は拭えぬままであった。 「秋也はそう簡単にはくたばらないさ。だから焦ることはない。私の代わりにあの子を頼んだよ」                「はい」  不安はまだ残る。だが此処でいつまでもうじうじしている訳にはいかない。影縄は弱気になっていた己を振り払って頷く。そして3人は里へと向かうのであった。  里の近くまで来ると、夜萩はその場の小石を拾って霊力を込める。そして結界に向かって軽く投げると、小石が結界に弾き飛ばされた。 「やっぱり俺は頭領に嫌われたようですね」 「当然だろ。お前だけが次代と仲良くしているんだから」 「では、この刃を使うのはどうですか?」  影縄が懐から小刀を取り出すが、健吾は首を振った。 「いや、まだその時ではないと思う。いざと言う時の為にとっておいたらいい」  影縄は少し肩を落として、小刀を見下ろした。小刀は今朝の主の目のように冷たい光を放っている。だが小刀に籠められている霊力と神気は、穏やかな暖かさ。眼差しは怖いが優しい心を持つ貴方のようだ。そんな貴方との縁が刻一刻と綻び続けるのが恐ろしくてたまらない。 「先に俺が入って確かめてくる。夜萩と影縄殿は隠れていろ」  言われるままに二人が隠れると、健吾は結界の内側に向かって足を踏み入れた。健吾の計画はまだバレていないのか、容易く結界を潜り抜けることが出来た。慎重に周囲を見回すと、前方から年下の青年が駆け寄ってきた。 「健吾さん遅いっすよ。休みだからとどこ行ってたんですか?」 「城下をぶらぶらとな。饅頭買ってきたが、食うか?」 「饅頭ですか、いいですね。では」  青年は饅頭を受け取ると、それどころではないと慌てた顔をした。 「頭領が健吾さんをお呼びなんですよ。早く行かないと」 「何だろうな。まあ行ってみる」  いきなり露見したなどではあるまいな。健吾は内心ひやひやしていたが、表情を繕ってそれを隠す。本当は頭領の元へ行きたくなかったが、頭領屋敷に向かうことにした。  「頭領、健吾です」 「健吾か、遅かったな」  頭領の低い声が響く。健吾は呼吸をひとつすると、静かに頭領の部屋に入った。頭領の部屋は殺風景で最低限の物しか置いておらず、この部屋がまるで冬のようで健吾は苦手であった。顔を上げるといつもの頭領の表情がある。目元は次代に似ていると今更ながら気づいた。 「頭領、如何なされましたか」 「ああ、ひとつ報告をな。明日の朝、あの穀潰しの命を神にお返しすることにした」  いきなりか。半信半疑であったが、本当に殺すつもりなのかと鼓動が跳ねる。だがまだ次代が捕まったことは里にいた時点では知らなかったので、知らぬふりをした。 「待ってくださいっ。次代が見つかったのですか!? では凪人は……」 「ああ、今朝穀潰しを捕まえた。今すぐにでもあやつの爪を剥げば凪人は『赦し』を得られるはずだ」  その手があったか。いやだからと言って、あいつらの助力をすると言ったのは俺だから、今さら手のひらを返せないだろうが。一瞬迷いそうになった自分を叱る。 「ですが……頭領。次代を殺せば頭領のお命が危うくなるのではないですか?」  和魂の信託を愚弄するのは、頭領でも許されないことだ。それをどうやって行うのだろうか。頭領はくつくつと嗤う。 「命をお返しすると言ったであろう? ようは自害させればいいのだ。さすれば私に害は及ばない。あやつが勝手に死ぬのだから。こんな簡単なことに今さら気づくとは私も愚かだ」  頭領は本気で次代を殺すつもりだ。自害させるということは、次代の心を壊す算段がついたか、次代の心はとうに壊れたかのどちらかであろう。健吾は背筋に寒気を覚えた。  次代に情が湧く以前ならば、手放しで喜んでいたであろう。だが情が湧いた今はそれを喜ぶことが出来ない。それでも情が湧く以前の自分の態度を想像して演じることにした。 「どうであれもうあの次代を見なくて済むのですよね。お喜び申し上げます」 「お前もあやつに幾度も煮え湯を飲ませられただろう。せっかくのやつの最期だ。今までの鬱憤を晴らしてこい」  それは次代に会える良い機会だ。この機を逃す訳にはいかない。 「有り難き幸せ。では失礼しました」  一度頭を下げてから頭領の部屋から出る。健吾は人目の無いところまで来ると深く息を吐いた。今まで気にかけてくれた頭領を裏切るのか。それが恐ろしくてたまらない。だが夜萩達の立場に片足を突っ込んだことでようやく彼らの気持ちが分かった。頭領から一身に憎悪を受けて育った次代は今までどのような気持ちだったのだろうか。考えたくもない。いやそれよりもあの大蛇があれほど焦燥した顔をしていたのが気になる。早く向かわねばと叱咤して健吾は向かうことにした。  石牢の前には五人程度の見張りがいる。手薄と言える方なのだろうか。あの大蛇の時よりも人数が多いのが気になる。 「頭領の命で参った。次代の元に通せ」  見張りは頷くと俺を通す。案内の者が先頭を歩き、次代の居る牢へと歩き出す。やがて一番奥の牢の前で止まった。 「ここに次代がおられます。どうぞ」  錠を開けて戸が開いた途端、血生臭い空気が鼻腔を擽る。健吾は表情も変えないまま牢に入った。  「っ……」  次代の姿を見た途端、俺は冷水に全身を入ったような錯覚を覚えた。衣などぼろ切れ同然。鞭で皮が所々裂け血が流れていた。両腕を背後で拘束されているから起き上がれているものの、顔はがくりと項垂れて結っていた髪を下ろしているせいかその表情は窺えない。今までの折檻など児戯とでも言うかのように、痣や鞭打ちの数など此度の折檻は酷い。健吾はゆっくりと近づくと次代の様子を確認する。不幸中の幸いか陵辱はされていないようだ。次代は顔は悪くないし、情交を嫌うことは周知の事実だ。本気で心を折るならば陵辱という手を使うであろう。もしするとしたら今後ということだろうか。 「次代、今日がお前の最期の夜って知ってたか。ざまあみろ」  わざと牢の外に届くぐらいの大声で言う。次代には申し訳ないが、こうでもしないと不審がられるのだ。我慢してくれ。 「か…………は………」  次代の喉から零れた言葉はその程度。何のことを言っているのだろうか。まあ身体に触れれば、念話が使えるからそれで用件を言うか。俺が次代の肩を掴むと、次代は呻き声を上げて顔をしかめた。 『お前を助けに来た。今は見張りがいるから助け出せないが、夜萩と影縄殿が結界の外にいる。結界を破壊して戻ってくるからそれまでは耐えてくれ』  次代は大きく目を開くと首を横に振った。どうして嫌がることがあるのだろうか。意味が分からないと首を傾げると、次代から念話が返ってきた。 『どうか止めてください。私のせいで大切な人達が傷つく姿を見たくないのです。それに私は生きてはいけなかった存在。こんな私などもう捨て置いてください』  何を言っているのだ。いつもの折檻はこれよりも軽いが、次代は一切弱い部分を見せず、俺達を刃の瞳で睨んでいたではないか。どうして弱気になるのだ。どうして……相手の気持ちを無下にするのだ。じわじわと怒りが込み上げた。   健吾はぎりりと奥歯を噛むと、秋也の胸ぐらを掴んだ。 『ふざけるな! 貴様の為に命を懸けようとする奴らの気持ちを踏みにじるつもりか!』  本当は怒鳴りたかった。だがこんな本音を口に出そうものなら、「健吾」が次代に肩入れしていることが露見してしまう。それだけは避けねばならぬので必死に堪えた。 『……今朝、影縄が私を庇って怪我したんですよ。血肉が飛び散って……。颯月様の時もです。私は……私のために血が流れることに耐えられない』  健吾は瞠目した。次代が表情があの日から失せたのはその理由か。あの時から喪うことに怯えているのか。理解できない訳ではない。だがこいつは運が良ければ頭領となる身。これから自分の為に流される血を見ることになるだろう。それをうだうだ言って、あの人を越えられるとでも思うているのか。馬鹿馬鹿しい。 「それでも次代か。……俺は貴様など大嫌いだ。さっさとくたばれ」  上辺ではそう吐き捨て俺は出る。念話では別のことを言ったが、大して変わりはない。健吾は大きな音を立てて戸を閉めると闇に姿を消すのだった。  苦痛に苛まれていた秋也は、最後に健吾が部屋を出る前に念話で伝えてきた言葉を反芻していた。 『自分を大切に出来ない奴が他人を大切に出来るか。愚か者が』  どうして自分を大切に出来ようか。生まれついてから親に嫌われ折檻を受けていたというのに。秋也は無表情になる。別に自分は死んでもいい。そう自分に言い聞かせる。だというのに今は心の奥で「生きたい」と叫ぶ自分がいる。以前は無かった感情。それは押し殺そうとしてもしぶとく心にあるのだ。 『貴方は生きて幸せを掴むべきだ』  死の淵で会ったあの人に言われた言葉。本当に私は生を望んでいいのだろうか。もしそうならば……。 「影縄……私は……」  私は貴方に優しく笑いかけてほしい。今はそれ以外に望むことなど無い。  健吾は自分がこれからする選択に迷っていた。頭領の言葉が事実なら次代に肩入れする必要などないのだ。それに次代は頭領のことが嫌いだろうが、自分は頭領に拾われて衣食住を不自由せず生きられたことで返せないほどの恩がある。今まで忠誠を誓い、これからもそうする筈であった。 「恩知らずと罵られても文句言えねえなあ……」  健吾はぽつりと呟くと結界に触れた。結界にひび1つ入れようものならたちまち頭領に知られる。そして何人もの鬼祓いが賊を討たんと駆け寄って来るだろう。それ以前にこの結界を破れるかどうかすら定かではないのだ。俺はあいつが嫌いだ。頑固で愛想が無くて冷淡で……あいつの欠点はいくらでも上げられる。だが……あいつが死ぬのは惜しいと思ってしまうのだ。大蛇を従えてからあいつは何か変わったと思う。その変化が大きなものになった時、あいつがどうなるのか。それが見てみたいという興味本意で俺は命を投げ出そうとしているのだ。こんな博打があってたまるものか。健吾はふっと口許に笑みを作る。 「夜萩、準備は出来たか」  夜萩は無言で頷く。健吾と夜萩は一つ息を大きく吸うと、同時に結界を刃物で斬りつけた。  健吾が牢を出ていってすぐ、秋也はまた折檻を受けていた。凪人に『赦し』を与えろと言われ断ったら、じわじわと利き手の生爪を剥がされた。今までどんな折檻でも耐えてきた秋也でも生爪を剥がされる拷問には流石に耐えられない。痛みに声を押さえることが出来ず、叫んだ喉は嗄れ喘ぐ息の音しか出なかった。頭領は知っていてけしかけたくせに、今さら何が『赦し』だ。恨みなど無いが、頭領に言われて従う気になれない。頭領のお気に入りの小姓などに『赦し』など与えるものか。もし己が死を選んだとしても道連れにしてやる。  諦めしかなかった筈の自分にそんな我儘が沸き上がっているのは、健吾のあの一言のせいであろう。 「さっさとしろ穀潰し。どうせ死ぬのだから最後くらい善を成せ」 「……誰が死ぬなどと申しましたか」  今まで言葉を口にしなかった少年の声を耳にして頭領は軽く目を見開いたが、すぐさま剣呑な表情に変わった。 「貴様、口答えをするつもりか」 「何故、殺そうとした者を赦さねばならないのです。何故、私が死なねばならぬのですか」  頭領は秋也の頬に刀を突きつける。血が頬を染めるが、秋也は鋭い目で頭領を睨みつけた。 「貴方は私に自害させたいようですが、私は死ぬつもりなどありません。貴方が自らの命が惜しいように、私も死にたくはないのです」 「母を傷つけ生まれ落ちた貴様が死にたくないだと? そんなことが許されると思うのか」  許されるとは思っていない。これは生まれ落ちた瞬間に犯した私の罪。それを長い間咎められて生きてきた。何度死にたいと思ったであろう。それでも死ねなかったのは、生きてほしいと願ってくれる人がいたからだ。そして今生きたいと思うのは……彼ともっと一緒にいたいから。 「少なくとも、それを決めるのは貴方ではない。この命をどうするか決めるのは私自身だ。……決して貴様などに私の心は壊させない!」  こんな強がりがいつまで続くか分からない。だけども、彼等が此処に来ると信じ、耐えてみよう。それが今、己に出来る唯一の反抗なのだから。秋也は自分の父であり敵である男を鋭い目で射抜いた。  結界に傷をつけたことが、即座に頭領に露見したのだろう。振り返ると鬼祓いの姿が見え始めた。まずい。このままでは結界に穴を開けるどころか、ひびを入れることすら出来ない。それにしても夜萩と影縄殿と俺の妖力を注ぎ込んでも、一切ひびをが入らないとは。健吾は一旦結界の外に出ようと思ったが、結界は壁の如く固くなって出られなくなっていた。 「くそっ……夜萩、影縄殿! お前らは結界の破壊に集中しろ! 俺が迎撃する!」  夜萩と影縄に背を向け健吾は刃を構える。現れたのがよりにもよって評定衆上層部で健吾は悪寒を覚えた。 「健吾、血迷った真似は止めなさい。何故、このようなことをする」  評定衆の一人が呆れたような顔で健吾を見据える。その瞳に殺意こそ無かったが、敵に向ける眼差しをしていた。健吾は頭領だけでなく評定衆にも覚えが良い。それを己が一気に台無しにしたと健吾は理解していた。 「別に鬼祓いに害を及ぼすつもりはございませんよ。強いて言えば……次代が死ぬには勿体ないと思ったんですよ」 「それを害を及ぼすというのだ。次代は冬霞様だ。あの者ではない」  冬霞は頭領になりたくないとぼやいていたんだがなと心の中で呟く。冬霞は可愛げはあり、みんなに慕われるが誰かを従えるのは不得手な奴なのだ。無理強いは駄目だろう。 「いいえ次代と言えば秋也でしょうよ。だから次代を自害させようとするあんたらは鬼祓いの未来を潰すものだ。俺はあんたらには従わない」  評定衆の目に殺意が浮かぶ。さて、死なないように足掻こうかと健吾は刃の柄に力を込めた。  「ごほっ……ぐ……」  多勢に無勢。そんなことは分かっていたがこれ程とは。健吾は血を流しながら膝をついた。背後に目を遣ったが、結界は割れるまでには至らない。あと少し時間を稼がなければいけないのに……。奥歯を噛み締めて立ち上がるがぐらぐらと視界が歪んでろくに動けない。 「健吾、今ならお前を殺しはしない。早く得物を下ろして頭を下げろ」  評定衆の誰かがそう呟いた。ああ、俺は何で足掻いているんだろうか。あんな次代に命を懸けなくてもいい。凪人さえ助かれば俺はそれで良い筈だ。なのにそれだけではいけない気がするのだ。血がぱたぱたと流れる。 『私は……私のために血が流れることに耐えられない』  念話での会話が甦る。そうだ。俺は次代の為に血を流してやっているのだ。嫌いなあいつへの嫌がらせ。若衆の長であるこの健吾様がお前の為に血を流しているのだ。次代よ。頭領になった暁には、俺を評定衆に据えろよ。そしてお前が気に食わない意見を言ったら、容赦なく反論してやるぞ。くくっと笑いながら健吾は立ち上がると、評定衆達に刃を向ける。 「誰が頭なんぞ下げるか。例え死のうが俺は俺の意思を貫くまでだ」  一斉に評定衆が健吾に襲い掛かる。刃を振るおうと健吾がしたその時、炎が視界の端で光る。 「は……!?」  健吾が声を上げると、健吾は誰かに抱えられて後方に下がった。健吾は恐る恐る顔を上げてその人物を見る。その途端、健吾の頭の中が真っ白になった。

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