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「え? ちょ、待って……ちょ、はぁ!? これじゃあ、イけない……」  そう今度は涙目で訴える未来。  そんな未来に対して余裕がありそうなのは来未の方だ。 そう寧ろ今の未来の言葉でクスクスとしているのだから。 「ぁああん! ちょ、足りなぁあいい! ん! ゆっくり……ダメ」  こうカタコトの様に言い始めてしまう未来。 「だってさ、未来がイっちゃうって言うから、僕の方はただ単純にゆっくりとして上げただけなんだけどな」  未来の方はその来未の言葉に涙目で頬を膨らませるのだ。 「ホント、未来って可愛い……」  来未は未来の頬に伝っている涙を舐め上げる。 「んじゃあ、ゆっくりね……」 「違っ……」  そう横に首を振る未来。 「じゃあ、何?」  本当に来未の方は優越感でしかないのであろう。 こう上からの目線で言っているのだから。 「意地悪な事しないでよー。 来未ちゃん……」  何だか甘えたように言っているのは気のせいであろうか。 いや気のせいではないのかもしれない。 「来未ぃ……」  今度は甘えた様な声で言うと、未来の方は来未の唇へと唇を重ねる。 「ふぅ……ん……逆に……」  と未来は何か言おうとしているのだが、唇を塞がれたままでは言えないように思える。 そしてくちびるが離れて行くと、 「ちょ……来未ちゃん……それ、反則だからぁああ!」 「でも、ルールにはそんな事書いてないでしょう?」 「そうだけどっ!」  急に本格的に口喧嘩というのか兄弟喧嘩が始まってしまった様に思えたのだが、来未の方は折れると、軽く息を吐くのだった。  そう今日は兄弟喧嘩とかしている場合ではないのだから。 これが、もし普通に二人だけでの撮影だったなら、きっと問題無いのだろうが、今日は沢山の人数で撮っているのだから、そんな場合ではないという事だろう。 「未来……ストップ……」  そこで来未の方は小さな声で未来の耳側でコソコソと離し始める。 「今日は、みんなで撮影なんだからさぁ……」 「そんな事、分かってるよ……」 「ならさ」 「だけど、ある意味、いつもと変わらないような感じの方がいいんじゃないのかな? だって、僕達の事をアピールする場だと思うんだけど……?」 「え? あ、そうなのかぁ?」  その言葉で来未の方は少し考えると、 「まぁ、未来の言う通りなのかもな」  と答え、来未の方もスイッチが入ったのか、 「ま、いいか……とりあえず、そろそろ動くから覚悟しろよなぁ」 「んじゃあ、いつも以上に激しくね……」  とちょっと小悪魔的な表情で見上げる未来。 「うふふ……分かってるって……」  来未の方はそう答えるのだ。

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