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「なぁ、いづ」  中学時代の呼び方で、裕輔は声をかけた。 「僕は、ずっと、いづ一筋だったんだ。出たくもない同窓会で、同じクラスだった奴とか他の学校に行った奴に見かけなかったか聞いたり。ずいぶん探した」  首筋に舌を這わせ、鎖骨を唇で甘噛みして、乳首に歯を立てた。 「結局、高校は分からなかったけど、大学が一緒になった奴がいた。そいつに聞いて、同じ学部のパリピを紹介して貰った。そいつは実はいづのことに気付いていなかったけど、後日、一緒にサークルに入ったと教えて貰った」 「……三崎」 「飲みサーに入ったのに中々飲み会に来ないって言うから、サークルの部長と繋いで貰って、何としても会えるように手を打って貰った」  喋りながらも、裕輔は腹筋をなぞるように唇を伝わせ、依弦の雄蕊まで届く。 「ここまでして、お前は僕を拒否するのか?」 「……裕輔」  下生えから上目遣いで見上げてくる裕輔に、とうとう依弦も名前呼びに変わった。一気に中学時代に戻ったような気がして、背筋がむず痒い。 「別に、俺は裕輔を突き放したわけじゃない」 「……いづ」 「でも、連絡しようと思えば出来たのにしなかったのは、悪かった」  裕輔の目が丸く見開いた。 「親の都合で、裕輔に伝える前に転校させられたんだ。まるで夜逃げみたいに、荷物もほとんど持たせて貰えなかったし、高校も大学も新聞奨学生制度とか、給付型奨学金制度とか、使えるものは使わないと通えなかった」 「いづ、」 「今も、成績が落ちたら奨学生取り消しされるギリギリなんだ。今は親も本当の夜逃げなのかどこかに行っていて連絡つかないし、本当は合コンとか行ってる余裕なんてなくて、いっぱいいっぱいなんだよ」  部長がお金いらないって言うから、食費浮くしと思って参加して、まさか昔の幼なじみに会って監禁されると思いもしなかった。そう依弦が言えば、裕輔は触ろうとしていた依弦の体から離れ、手錠と足枷の鍵を外した。 「……悪かった」 「……裕輔?」  鎖から解放されて床に崩れ落ちた依弦を支えながら、裕輔はボソリと呟いた。 「お前の気持ちとか考えずに、僕の勝手で、勝手なことした」 「まぁそうだなー、やり方はストーカーだよなー」 「いづ……」 「でも、」  依弦は裕輔の体を抱きしめ返し、軽く口付けた。 「さっきも言ったけど、おあいこだから」 「……いづ」 「しょうがないから、もっかい言ってあげるよ」  裕輔にもたれかかったまま、依弦は裕輔の髪を両手で撫で、唇を耳元に寄せた。 「これからまた、ずっと守ってやるから」  身長は、もうすっかり抜かれてしまったけど。 ◆◆◆  二人は、先ほどまで呑んでいた裕輔の部屋に戻ってきた。先ほどの檻の部屋は、このマンションの地下にあった。誰でも使えるスペースらしいが、管理人もまさかあんなことに使われるとは思っていないだろう。シャワーで汗と涙と先走りまみれだった依弦の体を隅々まで洗い、ついでだ、と散々玩具と指で無理やり弄られた後の後孔も綺麗にした。その際に少し固く反応したのだが、「どうせこれからするんだから」とそのままベッドに戻ってきた。唇を合わせて親鳥がヒナに餌付けするような、軽く啄むようなキスに、依弦は蕩けた表情を浮かべた。 「いづ、そんな顔すんなよ、さっきより酷くしちゃいそうだ」 「そんな顔……って?」 「自覚なしかよ……」  首を傾げる依弦に、裕輔はため息を()いてシーツに依弦の体を沈めた。まともに水気を拭かなかった体はシーツの色を変えたが、裕輔はお構い無しに依弦の体に唇を這わせた。 「っあ、あ、裕輔、やだっ……」 「もうディルド使うとか、酷くしたりしないから」 「……本当に?」 「あぁ、いづが僕の前から消えない限りは、酷くしない」 「やっぱり怖い、裕輔」 「怖くないよ、いづが大事だから誰にも触らせたくないだけだって」 「それが怖いのに」  キスが段々深くなっていく。体の奥深い場所が少しづつ熱を孕み、ムズムズと昂った。裕輔は依弦のと自分のを一緒に片手で包み、擦った。 「……っあ、あ、裕輔、それっ、やば……っ」 「いい、の間違いだろ……?」  依弦の瞳とシンクロするように、その先端から歓喜の雫が溢れ出す。グチャグチャに濡れたところで、その液体を臀部に塗りたくった。 「玩具は入れないって言ったけど、僕のは入れていいよな」 「え、あ、待っ……ぅああぁっ」  依弦の制止も虚しく、裕輔の分身が依弦の奥深くまで侵入した。先ほどまでディルドが埋められていただけあって、すんなりと最奥まで届いた。裕輔はその凶器を、依弦の体内で揺さぶった。 「っあ、あ、なにこれっ……ねぇ、裕す……っあぁ!」 「なにこれって、さっきと同じセリフばっか連呼してるぞ?」 「だっ、だって、十分これも、酷いこと……っ」 「……酷いなぁいづ。こんなに優しくしてるのに」  ギシギシと、一人分の広さしかないベッドが抗議の音をたてた。波打つシーツがシワを作り、依弦の背中の下で重なる。涙と鼻水と汗が混じり合ってびしょ濡れの依弦の顔を、裕輔は笑ってシーツの端で乱暴に拭う。 「いづ、怖がりすぎ」 「だって……っ」 「もう酷いことしないって言っただろ?」  揺さぶりながら、真っ赤に固く膨らんだ依弦の乳首、その片方を裕輔の舌で転がすように舐め、甘噛みで刺激される。もう片方は親指と人差し指で摘んだ。 「っあ、や……」 「ほんと、感度高いな……乳首でもイきそうになってる」 「あんっ、だっ、て……あぁっ」 「……っふ、イっていいよ」  ぎゅ、と強く抱きしめて、律動を早めた。ヒグヒグと泣き喘ぐ依弦の唇と自分のそれを重ね、最奥を突き上げた。 「んんぅっ、っあ、ああぁあぁあああぁ!!」 「……っく!」  依弦が内壁を締め付けたタイミングで、裕輔も自身の欲を依弦のナカに放った。 「いづ、」 「な、に……?」 「もう一回」 「っへ!? え、まっ、俺もう無理だって……っ!」

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