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1章 5ー2
しかし流石にそうはいかない。正哉がベッドの枕元に置かれていたコンドームの箱を手探りで取った。
彼は欲に溺れているようでこういうところは冷静なのか、と祥哉は昔連れて行かれた安い風俗店のキャストを思い出した。あくまで夢を売る商売。彼がするセックスはあれに似ている。
正哉は袋を開け、中からコンドームを取り出した。祥哉はそれを受け取ろうとしたが、彼は自分でそれを祥哉の亀頭に押し付ける。そして口で陰茎を咥えるようにコンドームを装着させた。
「わ、すご。男にゴム付けさせるプロ?」
祥哉は呟くようにそう言った。正哉には驚かされてばかりだ。こんな煽情的なコンドームの付け方があったのか。
ずる、と正哉はコンドームが着けられた陰茎を口から出し、祥哉の手を引く。
「何言ってるの。早く挿れて?」
「あ、うん」
祥哉は正哉の後孔に再びローションを垂らして陰茎を押し付けた。膣よりは反発があるが、十分に固くなった陰茎は孔を押し広げていく。
祥哉の背中に手を回し、少し苦しそうな表情をした正哉。
「んぅ、おっきい……」
「大丈夫? 痛い?」
心配する祥哉に、彼は首を横に振った。
後孔が亀頭を全て飲み込むと、あとはすんなりと入る。ローションで滑りが良くなっていたので、祥哉の先端は一気に正哉の奥を突き上げた。
「ああっ!」
正哉の身体が跳ねる。突いたのは前立腺ではなくそれよりもっと奥だ。祥哉が更に先端でそこを擦ると彼はビクビクと身体を震わせた。
「や、あっ……! そこ、やば……あ、ああっ!」
「……っあ」
きゅうきゅうと正哉の中が祥哉の陰茎を締め付ける。射精してしまいそうなのを堪え、祥哉はピストン運動を始める。
奥を何度か突くと正哉は大きく喘ぎ、身体を痙攣させながら涙を溢れさせた。
「んああっ! ああっ……!」
「……正哉さん、もしかしてイッてる?」
首肯する正哉。射精はしていないがオーガズムに達しているらしい。こんなことが本当にあるのか、とまた祥哉は驚いていた。
しかしまだ射精できていない祥哉はピストン運動を続ける。強く締めつけてくる中が気持ち良い。
祥哉にしがみ付き、何度も身体を震わせる正哉。
「あっ、無理……あぁあっ!」
「ごめん、もう少し」
「おかしくなるっ……や、んああっ!」
「正哉さんの中、凄い気持ちいい。吸い付いてくるみたい」
連続して何度も達しているのか、正哉はあまりの快感に涙だけでなく唾液も垂らしている。
突き上げるたびに彼の最奥が先端に吸い付いてくるような感覚。今まで祥哉には経験がなかったような気持ち良さだ。
祥哉の背中に回された正哉の手足。彼の身体中、全てに自分が求められているような気がする。
「っう、イクッ……」
祥哉は正哉の中で果てた。痺れるような快感と解放感が身体を駆け抜ける。
こんなに強烈なオーガズムは久しぶりだった。精液の量も随分多い。
正哉の中は少し痙攣していて熱い。彼の射精していない陰茎はまだ勃っているが、何度もオーガズムに達した身体は限界だろう。胸が大きく上下している。
「ありがとう、正哉さん。気持ち良かった」
「……うん、私も」
陰茎を正哉の中から出そうとした祥哉は、自分がコンドームを付けていたことを思い出した。あまりにも正哉の中が気持ち良すぎてコンドームの違和感なんて感じなかった。
ずるりと陰茎が引き抜かれると、正哉の身体がその摩擦で反応する。
「っんぁ……」
涙目で小さく喘ぐ正哉は妙に艶かしい。
祥哉が更に彼の臀部に手を這わせてみると、彼の身体はピクピクと反応する。ドライオーガズムの余韻がまだ引いていないのだろう。
そんなことをしていると、祥哉の陰茎はまた大きくなってきた。もっと正哉と繋がりたい、彼に自分を感じて欲しい。そんな欲がどんどん湧いてきてしまう。
着けていたコンドームを外し、口を縛ってゴミ箱に捨てた祥哉。
「正哉さん、もう1回させて」
彼がそう言うと正哉は驚いて上半身を起こす。
「……ば、馬鹿言わないで」
「お願い」
「無理だよ……」
拒否しようとする正哉に、祥哉は自分の勃起した陰茎を彼の陰茎と擦り合わせる。
「もっと気持ち良くするから、もう1回……次は生でしたい」
「んっ……わ、わかった。でも生は駄目」
正哉は片手で枕元のコンドームを手に取り、祥哉の胸元に押し付けた。
「ちゃんと着けて、そしたらもう1回だけいいよ」
「うん……」
少し不服そうな顔をする祥哉だが、大人しくコンドームの袋を開けてそれを装着しようとした。
「……あ、」
彼は着けようとして先端に押し付けたコンドームを外した。どうしたの、と尋ねる正哉に彼は顔を上げる。
「ごめん、裏表間違えた」
そう言いながらそれを捨てる祥哉に、正哉は吹き出した。
「ははっ、君って童貞?」
「違うよ。新しいのちょうだい」
「はいはい」
正哉は箱からもう1つコンドームを出し、今度は自分で袋を開けて祥哉の陰茎の先端に当てがった。そして最初にやったように口でそれを装着させる。
彼のその行為を見て、祥哉は言う。
「……まあ、童貞ではないけどあなたみたいに経験豊富じゃないかな」
「ヤリチンって言いたいの?」
「正哉さんの場合、ヤリチンっていうより……うーん、まあいいや」
祥哉は言葉を濁し、正哉の肩を軽く掴んで身体を反転させた。
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