10 / 72

1章 5ー3

 されるがままに四つん這いになった正哉。臀部を突き出す体勢にされ、祥哉にまじまじと開口部を見られるのを感じた。  「少し縦に割れてる」  祥哉がそう言って彼の後孔を指で撫でると、正哉はそこをヒクつかせながら小さく喘いだ。  「本当に敏感なんだね」  「い、挿れるなら早く……」  恥ずかしげにそう言う正哉の後孔に再び祥哉の大きな陰茎が押し付けられる。ローションをそこに垂らし、祥哉は一気に彼の中に陰茎を突っ込んだ。  「あぁあんっ!!」  奥を突かれた正哉が大きく喘ぐ。また身体を痙攣させている彼に祥哉は覆い被さり、口を彼の耳元に近づける。  「正哉さん、もしかして挿れられただけでイッちゃったの?」  「……っあ、言わないでよ……」  「ここが好きなのかな?」  祥哉の先端が奥をグリグリと擦り、正哉は堪らず嬌声を上げる。精嚢を直腸越しに刺激されているのだが、やっている祥哉自身はそんなこと分かってはいない。  更に祥哉は正哉の陰茎を掴んだ。  「こんなに立派なの使わないなんて勿体ないね」  「んああっ! ひっ……そんな、同時にされたら、あぁあっ!!」  奥を突かれながら陰茎を扱かれ、正哉はあまりの快感に祥哉から離れようとした。しかし祥哉の片方の手は彼の身体を抱き、簡単に逃がそうとはしない。  正哉は最早身体に力を入れることも上手くできず、うつ伏せに近い体勢で腰だけを少し浮かせている。  彼に覆い被さる祥哉は身体をぴったりと密着させて腰を振る。手で擦っている彼の陰茎は尿道球腺液を垂らし、今にも射精しそうだ。  彼の耳を甘噛みし、祥哉は囁く。  「イッていいんだよ? 正哉さん」  「ああっ、イくぅっ……!」  祥哉の手の中で正哉の陰茎が跳ねる。大量の精液をバスタオルの上に放出した。  「凄い。いっぱい出たね」  「うぁ……、もう無理……」  「もっと見せてよ」  そう言った祥哉に、射精して更に敏感になっている奥を突き上げられる正哉。  「いや、あぁあっ!! ほんと、おかしくなるっ! やだ……あ、死ぬっ! ぅああっ!!」  正哉は祥哉の下で逃げようと踠くが、祥哉は容赦なく早いペースで腰を振る。  正哉が全身で自分を感じている、この瞬間が嬉しくてたまらない祥哉。彼の中が自分の陰茎を強く締め付けて気持ちがいい。まるで精液を搾り取ろうとしているかのようだ。  「正哉さん、気持ちいい……僕もまたイッちゃう」  そう言ってあと数回腰を振ると、祥哉は2度目の射精をした。心地よい快感。自慰では味わえない満足感がある。  正哉の中の熱を味わうように祥哉は暫し正哉に覆い被さった体勢のまま動かずにいた。重なり合う体温には安心感のようなものを感じる。  下にいる正哉の身体は熱く、呼吸が整わないのか肩で息をしている。  陰茎を正哉の中に挿れたままでじっとしている祥哉。彼と1つになってしまうかのような感覚になる。実際、生まれる前は自分達は1つだったのだ。それがどうして37年も会わずにいられたのだろう。  暫くして正哉の呼吸が落ち着いた頃、彼は祥哉に振り返った。  「…………退いて」  「ああ、ごめん。重かったかな?」  そう言って祥哉は中から陰茎を抜いて正哉の上から退く。まだ着けていたコンドームを外してゴミ箱に捨てた。  溜め息を吐きながら上半身を起こす正哉。まだ顔は少し赤い。  彼はその両目を祥哉の視線と合わせようとしない。祥哉は彼の空虚で冷めた瞳に何か違和感を覚えた。  彼の唇に祥哉は自分の唇を軽く重ねた。すると彼は嫌がるように顔を背ける。  「正哉さん?」  「……そういうの、いいから」  「え?」  「変に気使わなくていいって言ってるんだよ」  そう言って正哉がベッドから降りようとするのを、祥哉が彼の腕を掴んで止めた。  「どういうこと? 全然わからないよ」  「私達のセックスに意味なんてない。そうでしょ?」  鬱陶しそうに正哉はそう言うが、ますます混乱する祥哉。彼の腕を引き寄せ、顔を近づけた。  「僕はあなたが欲しい。あなたの全てが」  「そういうのは困るよ。私は私のものだ。君のものにはならない」  「こんなことした後でよくそんなこと言えるね」  少し険しい顔をして祥哉は正哉の腕を少し乱暴に引くと、彼を再びベッドに押し倒した。逃げられないように彼の上に乗る。  「分かったんだよ。僕はあなたをずっと求めてた」  「性欲と愛を混同しないで。そもそも私達は双子じゃないか。君、おかしいよ」  「双子だから何だっていうの。正哉さんこそおかしいよ、セックスした相手に何も思わないなんて」  祥哉は正哉の頭を手で押さえ、その唇に今度は深く口付けした。すると正哉は彼の下で踠き、彼の黒髪を引っ張って唇を解放させた。  「私にとってセックスは何の意味も無い。ただの性欲処理だ」  「僕にとっては違う」  「違わないよ。私がゲイだって知った途端に誘ってきたクセに」  正哉の言葉に祥哉の彼を抑える力が怯んだ。その瞬間に彼は祥哉を押し退けて立ち上がる。  「こういうことをするならもう君とはセックスしない。早く出て行ってくれ」  「待ってよ、僕があなたを誘ったのは……」  「早く」  祥哉の目の前に服が差し出された。それを持つ正哉の目は冷たい。有無を言わさぬ彼の態度に、祥哉は息を吐いて自分の服を受け取った。祥哉は自分が立ち上がって服を着始めると、正哉が再びベッドに座るのを見下ろした。  「……僕達は双子だ、正哉さん」  「…………」  「もう二度と離れないよ、絶対に」  「…………」  正哉は固く唇を閉ざしたままだ。彼は簡単にセックスはしておいて、何故頑なに愛情を受け入れようとしないのだろう。これまでもずっとそうだったのだろうか。  祥哉には正哉がわからないが、恐らく正哉にも祥哉がわからない。双子とはいえ他人も同然、そんなものなのだろう。  服を着た祥哉は、スマートフォンをカーゴパンツのポケットに仕舞った。そして正哉の顔を覗き込むように見る。  「またね、正哉さん」  正哉はやはり口を閉ざしたまま、眉を眉間に寄せて祥哉を見上げるだけだった。  暫しの沈黙の後、祥哉は踵を返し正哉の家を後にした。

ともだちにシェアしよう!