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2章 4-2
バスルームに入ると正哉はドアを閉め、溜め息を吐きながらシャワーを出した。水が温まるのを待つ間に、青年が口を開く。
「俺、シュウ。お兄さんは名前何ていうの?」
「……マサ」
「そう。マサさん、さっきはホントごめんね。でもまさかアナルファックとスパンキングでメスイキしてる人が顔射くらいで怒るなんて思わないじゃない」
冗談めかしてそう言うシュウに、正哉は何も言わなかった。この界隈にいてシュウと名乗る男と出会ったのは何回目だろうか、とぼんやりと思った。ゲイ向けのマッチングアプリを見ていても10人に1人くらいはシュウという名前な気がする。
シャワーの水がお湯になり、顔に付いた精液を洗い流す正哉。むわっ、と嫌な臭いがして顔を顰めた。
その間にシュウが後ろから抱きついてきた。彼の指先が正哉の胸を、腹を這う。
「マサさん、顔もいいけど身体も綺麗」
シュウという男は背が低い。恐らく170センチメートル弱と言うところだろう。髪は黒く、童顔で20歳前後に見えるが、実際は何歳なのか正哉は知らない。
正哉はお湯を出したままのシャワーをホルダーにかけた。
「離れてくれる?」
「まだ怒ってるの?」
「……別に。もう1回ヤりたいの?」
「そうだね」
シュウの手は正哉の腹から更に下がり、陰茎に触れた。
「こっちではイッてなかったでしょ?」
「…………っ」
軽く揉まれると萎えていた正哉の陰茎は直ぐに固くなり始める。何度かドライオーガズムには達していたが、射精はしていなかった。
シュウが正哉にぴったりと体を寄せた。彼の陰茎も再び勃起しているようだ。
「マサさんのおちんちん、凄く大きいよね……いいな」
「別に良くはないよ」
「こんな大きい人なかなかいないよ。俺ね、これケツに挿れて欲しいんだ」
シュウに思わぬことを言われて正哉は驚いた。
「……シュウ君、ネコだったの?」
「うーん、どっちもやったことあるけどよくわからない。気分次第だし、どうでもいいじゃん。ね、俺に挿れてくれない?」
言いながらシュウに乳首や先端を刺激され、正哉の陰茎はすっかり大きくなっていた。優しい彼の手つきに、つい甘い声が漏れそうになる。
「っん、竿役はねぇ……」
正哉な何と返すべきか迷った。遠い昔に女性との経験もあるし、男性相手でタチもやったことがある。しかし不安は大きい。
「…………イけないかも知れないし、やめた方がいいと思う」
「え、お尻弄らなきゃイけないの?」
「いや、そうじゃないけど」
精神的な問題だった。正哉は相手に自分の陰茎を挿入することに罪悪感を感じるのだ。それで行為に集中できず、タチで射精できたことがない。
シュウは意味がわからず首を傾げてシャワーのお湯を止めた。
「とりあえずさ、身体拭いてベッド戻ろうよ」
「ああ、うん」
そして2人はバスタオルで身体を拭き、再びベッドに戻った。バスルームを出ると既にリクは居なくなっていた。
シュウがリクと共に行かなかったと言うことは、2人はそこまで親しいわけではないのだろう。バーで2人に出会った時は2人は恋人同士にも見えたが、どうやらセックスフレンドだったらしい。
ベッドに座り、ローションを手に取ったシュウ。
「準備は自分でするよ」
既に彼は正哉に挿入してもらう気でいるらしい。その様子を見て正哉はベッドに上がり、彼の傍に寄った。
「待ってよ、本当に私が竿役やるの?」
「え、駄目? 別にイけなかったら後で俺がお尻弄ってイかせてあげるよ?」
「……どうしても挿れてほしいわけね」
溜め息を吐いた正哉。そしてシュウが自分の手に付けようとしていたローションを取り上げた。それをベッドサイドに戻す彼に、驚いたシュウ。
「ちょ、マサさん?」
「やるならちゃんと気持ち良くしてあげるよ、シュウ君」
そう言ってシュウの唇に自分の唇を重ねた正哉。深く口付けながら彼の細い腰を抱き、体重をかけて上半身をベッドに沈める。
舌をシュウの口内に滑り込ませ、舌先で彼の上顎を撫でる。彼の喉から小さく声が漏れた。舌が絡み合い、部屋に水音が響く。
正哉が口付けを続けながら指先でシュウの鎖骨を撫で、胸に触れる。胸筋の輪郭をなぞる様に優しく撫でていく。
唇を解放すると、唾液が糸を引いた。白かったシュウの頬は少し赤く染まっている。
「キス上手過ぎ……、んっ」
正哉の唇はシュウの首筋に移動した。舌先でそこを少しずつ舐めながら、手はまだ胸元を愛撫している。
くすぐったさにも似ているゾクゾクとした感覚に、小さく甘い声を上げるシュウ。鎖骨や胸元はゆっくりと愛撫してくるのに乳首には触れていないので、逆にそこを意識してしまう。じっくり焦らされているようで、もどかし気に正哉の背中に腕を回した。
「マサさん、もっと……」
「ん?」
「そんな焦らさないでよ」
シュウの鎖骨に口付けを繰り返していた正哉は、上目遣いに彼に目を向ける。
「どうしてほしい?」
「…………乳首、舐めて」
そう返したシュウの顔は耳まで赤くなっていた。正哉は、微笑んで彼の乳首に舌を這わせる。
「あっ、ん……!」
シュウの身体が僅かに跳ね、快感に反応した陰茎が正哉の腹部に当たった。乳首を吸われると、更にシュウは嬌声を上げる。
彼の様子に悪戯っぽく笑う正哉。
「乳首弄られるの、好きなんだね」
「ち、違……んぁ、何でっ」
乳首を刺激されてこんなにも感じてしまうことがあるのかとシュウは驚いていた。
今まで他の男達に乳首を弄られて感じたことなどほとんどなかった。散々焦らされたからなのか、正哉の触り方が優しいからなのか、そこを刺激されるとゾクゾクと身体に快感が走る。こんな経験は初めてだ。
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