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2章 7-2
座ったまま暫くうとうとしていると、リョウが脱衣所から出てきた。
ベッドに座って船を漕いでいる祥哉に、彼は鼻で笑った。
「寝てる?」
「……ギリギリ起きてるよ」
「セックス中に寝たらビンタするぞ?」
そう言われ、祥哉は顔を上げて彼を見上げた。
「酷いな、正哉さんにもそんなことしてるの?」
「まさか。まあ、してほしいって言われたらするかもね」
ぼんやりと彼を見ていた祥哉は、ふと彼の何も着ていない細い身体を見て眉に眉間を寄せた。
「……毛、生えてない」
ぽつりとそう言う。リョウの体には臑毛や脇毛、陰毛も全く生えていない。
神妙な顔をしている祥哉に、彼は笑った。
「そうだよ、永久脱毛したから」
「えっ、男なのに?」
「あんた割と思考がおっさんだな。マサさんは喜んでたよ」
「ええ……」
そういえば、正哉も陰毛以外ほとんど体毛が生えていなかった。彼も永久脱毛しているのか、と考えていると祥哉はリョウに顎を掴まれ、顔を近づけられた。
「あんたもこんな無精髭似合わないし、脱毛しちゃえば?」
「やだよそんなことでお金使うの」
祥哉は彼の手を叩いた。するとその手をリョウが掴む。
「まあ、とりあえず始めるか」
「う、うん」
「一応聞くけど、男とするの初めてなの?」
「……正哉さんと1回だけ」
祥哉がそう答え、リョウは目を丸くした。まさか双子でセックスしていたとは思っていなかったらしい。
「それって近親相姦じゃん。まさかレイプしたんじゃないだろうな」
「違うよ、ちゃんと合意だった」
「ふぅん」
暫時怪訝そうな顔をしたリョウだが、祥哉に更に顔を近づけ唇にキスをした。驚いた祥哉は彼の胸を手で押す。
「ちょ、ちょっと待って。何するの」
「え? キス。セックスするならここからだろ普通」
きょとんとしているリョウに、戸惑う祥哉。
「ちゃんとそこからするの?」
挿入させてリョウが射精できればそれでいいと思っていた。まさか彼が前戯からしっかりやるつもりだったとは。
「だってあんた、マサさんの代わりしてくれるんだろ?」
「そうだけど……」
まだ反論しかけた祥哉の唇を再び唇で塞ぐリョウ。今度はより深く口付けし、体重をかけて彼をベッドに押し倒した。彼の口内に舌を入れてみるが、彼の方からの反応は無い。
自分の下で大人しくしている彼に、リョウは唇を離した。
「ちゃんと舌絡めてこいよ。なんかレイプしてる気分になる」
「……わかった」
頬を赤らめた祥哉に、リョウもう1度キスをして彼の口内に舌を入れる。今度はちゃんと祥哉の舌が絡んできた。
リョウの片手が祥哉の肩を滑り、胸元を弄る。唇を離し乳首に移動させると、祥哉の手が彼の肩を掴んだ。
「やだっ、やめて」
「え?」
リョウが顔を上げると、顔を赤くして涙目になった祥哉がこちらを見ていた。
「だ、だって好きでもない相手とこんなっ……、挿れるだけにしてよ」
「はぁ? あんたはっきり俺とセックスするって言っただろ。直前で怖気付いたAV女優かよ」
そう言ってリョウは大きく溜め息を吐き、身体を起こした。
「あー、もうやめるわ。あんた見た目以外マサさんと全然違うし話になんねぇ。自分からフェラできるようになってから出直してこい」
「そんな、僕はもう正哉さんにあなたみたいな人とセックスしてほしくないんだ」
「知らねぇよ、マサさんの勝手だろそんなん。俺はあの人が求めてきてくれる限りそれに応えるよ」
リョウは立ち上がり、下着とティーシャツだけ着てテーブルの上に置いてあった煙草の箱を手に取る。藍色のその箱から煙草を一本取り出し、椅子に座った。
「マサさんにはちゃんと俺とセックスするなって言ったのか?」
「……勿論、やめてほしいとは言ったよ。でも聞いてくれない」
上半身を起こしながらそう返答した祥哉に、リョウはせせら笑いをした。煙草に火をつけ、1度吹かす。
「そうだろうな。大体俺1人止めたところで代わりはいくらでもいるだろ」
リョウはそう言うが、悲しくないのだろうかと祥哉は思う。彼はたくさんいる正哉のセックスフレンドの1人であっていい、寧ろそうでありたがっているのだろうか。
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