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第8話※

 その日の夜、二人でホテルに直行した。  今度は狭いビジネスホテルの部屋ではなく、しっかりと性欲を助長させる照明やインテリアがあるラブホテル。  春川くんも当時付き合っていた女の子と来たことがあるだろうに、僕もよく利用しているのに、この時ばかりは二人ともろくな会話もできないくらい緊張していた。  だから、エレベーターに乗ってからぎこちなく隣の春川くんの手を握った。 「っ! か、課長……」 「駄目かな」  春川くんはぶんぶん首を横に振った。頻繁に視線を泳がせながらも、握り返してくれた。  握力のせいで改めて正直ちょっと痛かったけど、注意するのはまた今度にしよう。 「本当に、良い? 入ったら……清算するまで出られないけど。あ、やっぱり嫌なら帰っても良いし、君がされたくないことは絶対にしないって約束するし、それから」  言い終わる前に春川くんがドアを開け、僕を迎え入れて扉を閉めた。  これで正真正銘、セックスをする為の密室で、二人きり。 「ラブホでなにチキってんすか。ここまで来たらヤることヤらなきゃ損だろ……」  どういう時にスイッチが入るのかは謎だが、春川くんのこの漢気とも言える精神。すぐ尻込みしてしまう僕は見習いたいものだ。 「……えと、荷物置いてシャワー浴びようか」 「……うっす」  手洗いうがい、それといつも以上に加齢臭を気にして、入念に歯磨きと洗口液で除菌する。  春川くんもそうだった。歯茎から血が出るんじゃないかってくらいのスピードと力でガシガシと磨くものだから、僕に止められてからようやくやめた。  そうして僕が浴室に入ると、交代で入るものかと思ったのにも関わらず、春川くんもさも当然のように入ってくる。  一糸纏わぬその肉体美。うっかり真っ先に努力の結晶である筋肉と股間に目がいってしまうが、 「春川くんの……お、大きいねぇ……」  もちろんいつもは気にしないが、勃起していなくてこのサイズ。それに亀頭も完全に露出している。恐ろしいことだ。 「好きでデカい訳じゃないから結構気にしてるんすけど……。お、俺が抱く側じゃなくて良かったって思ってます?」  いいや、むしろ反対。フェラも好きだし、デカマラに幸あれ。  いつか春川くんに抱かれることがあったら史上の悦びを得られるだろう。激しすぎて腹上死は御免だし、とんでもない迷惑かけるだろうからそう考えると難しいところだが。 「い、いや。それより……どうせ一緒ならさ、洗い合いっこ、流し合いっこしようか」 「はい!」  それからの春川くんは、子供に戻ったみたいに楽しそうに僕を泡だらけにした。  でも髪はシャンプーが目に入らないように、丁寧に洗ってくれる。こんな頭だって薄毛が気になり始めているおじさんにコンディショナーまで。  自分ではいつも適当に洗ってしまうから、わざわざサラサラヘアーにしてもらうのがもったいない。  僕も春川くんを洗おうとするけど、手が頭まで届かなくて、座ってもらっても座高も高いから、申し訳ないけど少し頭を反らしてもらって。それで一本一本が若くて太い黒髪を洗う。 「課長……この体勢わりとつらめ」 「あ! そ、そうだよね。ごめんごめん、早く流さないと」  焦って流したせいでシャンプーが目に入り、滲みると悶絶しながらも、もう僕のドジっぷりに笑うしかない春川くん。相変わらず懐が深い。

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