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第9話※

「うわはは。なんか課長の背中流してると、親父のこと思い出す。めっちゃくちゃガキん頃……小学校上がりたてとかかな……まだ一緒に風呂入ってた時にこうやって、さ」  そういえば、前から他愛もない近況や世間話をするくらいの仲ではあったけど、春川くんと家族の話はしたことがない。  その後、離婚してお父さんは家を出て行ったとか? 母親の方が家を出たという場合もあるし、片親で苦労したとか……重い病気とか、まさか亡くなったとか……。あんまり深く聞いちゃいけない話かな。 「プッ、なーに重い顔してんすか。定年して今は家に居ますよ。んで、お袋がずーっとお父さんが家に居るの苦痛すぎる! って頻繁に兄貴と姉貴、俺にまで連絡してくる状態。ま、そんなんでも現役の時に働きすぎて遊べなかったぶん、旅行したり夫婦仲は良い方で。皆が皆、フィクションみたいに複雑な家庭環境って訳じゃねーんすよ」 「そ、そっか。意味ありげに言うから何かあるのかと身構えちゃった」 「……そういうとこ、課長って優しすぎんすよ。ガキの頃いじめられてたでしょ?」  なんで春川くんにはお見通しなんだろう。 「え、うん、たぶん。昭和映画の面白いシーンをよく真似させられてたかも。今でもモノマネ芸人さんがやってるから君も見たことあるかも……いじめかな?」 「しっかりしてくださいってば。……チッ、そん時俺がいたら全員ボコボコにしてやったのに。課長の地元で、課長と同い年に生まれたかった」  背中越しに春川くんが抱き締めてくる。今度は力強くはない。まるで子供の頃から今までの僕の心を癒すような、慈愛に満ち溢れた抱擁だ。  僕が美味しそうに甘い物を食べるのを見るのが好きだからって、頻繁にデザートを買って帰って来てくれた両親を思い出して、年下の春川くんに父性すら感じてしまった。春川くんだからであって、近親相姦の趣味はないけれど。  と、感慨深く思い出している間に、春川くんが手を離した。背後を見やると、どうやら勃起してしまったようで、唇を噛み締めている。  今のどこに勃つ要素があるのか不明だが、生理現象なので悪いことじゃない。それにさっきよりずっと大きく、硬くなって震えているのを見ると、僕も興奮する。 「やべぇっ……女の子より、課長に触れてる方が変な気分になって……俺っ……うぅ、変態だ……」 「そんなことないよ。好きな人に触れられたら……ほら、僕もこんなに興奮してる」 「あ……」  立派じゃないながらに、僕も屹立を見せ付ける。春川くんが生唾を飲む音が聞こえた。 「あんまり大きくなくてごめん……僕の……平均よりは小さい方みたいで」 「いやいやいや! 今さらですけど……男はマジで尻の穴に挿れるんすよね……たぶんそれ以上デカかったら無理っす、から……ちょうどいい、くらいです」 「あ、うん、そう? でも……初めてならかなり念入りにしておかないと。浣腸とかもしてきてくれたみたいだけど、シャワ浣は知らないよね? 一応ウォシュレットでもできるけど、やっぱりこれが一番清潔」 「へ? えっ? シャワーでもやるんすか? なんかこう……勢いで突っ込めちゃうものじゃないんすか?」 「それは漫画の知識。君は処女だったり、全く濡れてなかったり、生理中の女の子にも勢いでするの? ゴム付けてても汚れるし、痛いし、怪我だってしちゃうよ」 「……返す言葉が見つからなすぎる……。で、でも、排泄、物……ですよ……ドン引かないでくださいね……」 「平気だよ、慣れてるから。自分でもするしね。とりあえず最初だから僕がやってあげる」 「……わかり、ました……お願いします」  返事だけは良いんだよなぁ、何故か。  部活が厳しくて、そういう方針だったのかも。監督にいちいち「声が小さい!」とか言われたり。あ、僕はいつも体育で言われる側だった。  弱々しく、素直に言うことを聞いてくれた春川くんは、初めてのシャワ浣も耐え忍んだ。でも本人がお尻でするのを希望しているのだから、そこはこちらも責任持ってやることはやらなくちゃ。

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