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第9話※
「なぁ……いつもは挿れる側? それとも挿れられる側?」
「うっ……!? あ、いやそれは、答えなきゃ……駄目?」
「駄目だ」
「ど、どっちも……経験はあるよ。最近は全くないけど……」
「へえぇ。それじゃ童貞? 処女? に近いってことね」
「な、なに言ってるの。いくら何でもそこまでは……」
そこまでのラインを超えてしまったら、もう戻れなくなる気がしている。磨けば光る原石である咲夜を、いつ何時も完全に性的な目で見てしまう。
それは自分でも気持ち悪い、いけないことだという自覚はある。今度こそ咲夜のスキャンダルの火種になってしまったら共倒れだ。
なのに身体は正直で……情けない。
「うっわ、え? キスだけでこんなに勃つもんかよ? 俺も今まで恋愛とかしてる場合じゃなかったけどよ、ここまでは……。ハッ、性欲だけは立派に若者並なんだな」
「う、うぅぅ……だって咲夜くんがあんな風に……。ど、どっちが挿れるとかそういうのはいきなりすぎるし、あの」
「なに? 今さら驚かないから早く言えよ」
「えーと……昨夜くんと僕のオチンチン……キスしながら一緒に扱くのはどう? 一人よりきっと気持ち良いよ」
「は…………?」
驚かないと言ったにも関わらず、咲夜は硬直している。
できることなら責めたかったのかもしれない、が、初心者にはきっと難しい。
佐古も久々の男同士の経験では、痛みが勝ってしまうかもしれないし、ましてや咲夜のアナル処女を奪うなど。
「両想いなんだからその、一方的に、じゃなくて、一緒にって……そういう考え方は咲夜くんは嫌いかな」
「いや、構わねぇけど……」
なんだか明らかに戸惑っている咲夜。
「ごめん、やっぱ無しにしようか。別に性行為をしなくてもお互い好きって感情があれば良いものだしね」
「馬鹿! お、俺もヤりてぇよ! けどその、俺……女ともしたことないから……テクとか……」
「え」
この性格を知らずとも顔だけで充分に魅了できそうな咲夜が、まさかの経験なし!?
そういえば過去に撮られたアイドルとも食事だけと言っていたし、記事にもホテルやお互いの家に行ったとも書いていなかった。どちらかと言うと相手の事務所が大きいから誇張してまで書くメリットもないし、それは本当だろう。
高校生で芸能界デビューのち多忙であったから、恋愛にうつつを抜かしている暇がなかった……のだろうか。
「咲夜くん童貞なんだ……」
「うるっせぇ! 悪いかよ! むしろ爽やかな顔して裏では何股してんだってヤリチン俳優より、清い身体のままで良かっただろうが、ああ!?」
「あはは、咲夜くんのことだから何となくそんな感じはしてたけど。貞操守ってくれていてありがとうね。でも……どこであんな熱烈なキス覚えたの? そんな役なかったよね?」
「…………VRのエロ動画」
「今時の子はそれでできちゃうものなんだ……」
咲夜でもいつか相手ができた時の為に練習したかと思うと、ちょっと滑稽で、でもその頑張りは拍手に値する。
まさか男がファーストキス相手になるとは彼も想定外だったろうけど、実際、すごく気持ち良かった。
「テクニックって言うほど僕も自信がある訳ではないけど……咲夜くんと気持ち良くなりたいな。VRなんかじゃなく……現実でさ」
「お、おう……」
言ってから、お互い股間をくつろげた。先の咲夜とのキスで早くも隆起してしまっている佐古のペニス。
それを見てか、咲夜も興奮しているにはしているらしく、まだ完全ではないが勃起している。
約十歳年下の、誰にも使ったことのない色素沈着も薄く綺麗な、それ。咲夜の顔面についていることが何だか不思議なくらいに、男性器までは美しいとは。
一方の咲夜は身を擦り合わせてきて、また肉食系のキスをしてくるが、緊張のあまり力が入りすぎている。
口内をあちこち無我夢中で舐められても、息ができず苦しいし、ただ腰を振ってペニス同士をぶつけられても、気持ち良くない。
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