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おまけ

「ただい……ま?」 「なっちぃー、おっかえりーっ!」 「……どうしたの?」  帰宅直後、奈智は双子の弟である沙和に抱きつかれた。  理由が解らない。 「なちだぁーっ!」 「……うん。今しっかり、『ケーキだ!』って聞こえた。材料、買ってきたからこれから作るよ」 「わーい!」 「手伝ってね」 「えー……」  テンションが上がったり下がったりと忙しい沙和をそのままに、奈智はキッチンへと足を向ける。  買い物を仕舞っていると、抱きついている沙和の腕に力が入った。 「沙和、苦しい。首絞まるよ」 「ねぇ、奈智。それどーしたの……?」 「なにが? あ、これ? 誕生日だってくれた」 「堀ちゃん先輩に?」 「そう。さっき電話で話したでしょ。やさしいね。俺にもくれるなんて」  それは下心があるから優しいのだと、沙和は喉まで出かけた。  しかも、そのキーリングは見覚えがある。  色は違えど、堀ちゃん先輩も同じものを使っている。お揃いだ。  なんて、男。  着々と奈智を毒牙に掛けようと外堀を埋め、虎視眈々と狙っている。鈍い奈智には解るまい。そして、沙和がそんな事を思っているとは奈智は考えもしない。 「…………たくさん鍵持ってるねー。八個もあるー」  ジャラリと沙和が鍵の束を掲げた。 「そんなにあったっけ? 家の二つと、学校関係三つと、バイトの一つと、お墓で貰ったの一つだけのはずだよ。あれ? 一つ多い?」  どこで混入したのだろう。  自分では弄っていないので、先輩のだろうか。  紛失したと思って、探していたら大変だ。 「ちょっと、電話してくるね」 「なんでー、ケーキ食べてからでもいーじゃん」 「そうもいかないよ。探してたら、気の毒だし」  携帯電話で彼の番号を呼び起こす。  今までは自分に何かごとがあったときに連絡したのみだったが、今回は違うなぁとぼんやりと思っているとすぐに繋がった。 『奈智、どうした?』 「さっきは、ありがとうございました。あの、頂いたキーリングに見覚えの無い鍵が付いていたので間違えて入ったのかなと」 『ああ、俺の家の鍵』 「えっ!? い、今から、返しに行きます!」  それは大変だ。  自宅に入れないではないか。 『それはいい。スペアだ。それで、いつでも遊びに来な』  含み笑いの後、じゃあなと電話を切られた。 「……どうしよ」  自分の自宅の鍵ならいざ知らず、他人の物を預けられてしまった。  もしも、無くしてしまったら、大変な事だ。自分の落ち度で、泥棒の侵入のリスクが増してしまう。 防犯的なことで頭を悩ませる奈智には、堀の真意は未だ伝わらず。

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