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番外 独占欲
沙和はベッドの中で、恋人に声を掛けた。
「ん、ねー、多聴兄ぃー」
「ん?」
頬を撫でられる指にうっとりとしながら、紫煙を立ち上らせる一番上の兄を見上げる。
「奈智、どうしたら、しあわせになるかな?」
「急にどうした」
トロリと蕩けそうなほどのやさしげな瞳を向けられ、ドキリとする。
ついさっきまで爛れるほどに愛し合ったところだというのに、また熱が降りたってしまいそうになる。
「だってさ、あの子、世渡り上手じゃないもん」
「まぁ、そうだな。俺たちとは似てないな」
「俺、奈智と双子だけど、全然性格とかも違うしねー。顔は同じだけど」
「性格も顔も全く違うぞ」
沙和は数十分前に自分を快感の波で散々苛んだ彼の手に指を絡める。
「ン、ね、多聴兄ぃ? 何で俺だったの? 奈智じゃなくて」
常々疑問でいたが、今まで答えてもらったことのない質問を再び口に乗せる。
「何故だと思う?」
「質問に対して、質問で返すのはおかしいですー」
絡めた指先をゆっくりと握りこまれる。
「ふーん」
「っあ、んんっ! 多聴ぃっそれ、反則っ!」
彼の逆の手が行き着く先は、先ほど穿たれグズグズになった沙和の後ろ。
いやらしく縁を撫でられ、ゆっくりと先端が入ってくる。
そこには、未だ処理されずに、彼が吐き出したものが残っている。
グチュリ。
動かされる度に奏でる重ったるい水音に、沙和は羞恥で顔を赤らめる。
「も、もぅ、たきにぃ……っ、なん、で?」
「好きだろ?」
にやりと口角を上げたその顔に、沙和は観念した。
自分を抱く男の背に腕を回す。
「った、にぃぃ……ぁっ、う、んっ」
生理的な涙で膜の張った瞳で彼を見上げる。
「俺と一緒に居るときに他の男の話をするな」
それが耳朶に舌を這わされつつ、囁かれた彼の言葉。
その独占欲に歓喜しつつ、沙和は再び男を受け入れた。
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