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19 収納棚から、こんにちは
「……」
奈智はバスタオルを片付けようとして、脱衣所の収納棚を開いて出てきた物に固まった。
──何だ、これ……?
掌サイズのツルッとしたピンクの物体に細いコードが付いている。その先に見えたものに奈智の思考は停止し、急いで扉を閉めた後、真っ赤な顔で叫んだ。
「沙和!! 多聴兄!!」
せっかくキレイに畳んだタオルが落ちてグシャグシャになったが、今はそんな事どうでもいい。
とにかく、何とかして欲しかった。
涙目の奈智を認めて、その双子の弟は可愛く小首を傾げた。
「どーしたの? 奈智、ゴキブリ? でも奈智ってへーきじゃなかった?」
「うー……っ」
示す扉の中身を覗いて、あぁ……と納得した彼は、何てこと無いようにサラリと言った。
「ローターとバイブじゃ……っぶ」
「っいっぺん、死んで来いっ!」
手近にあったタオルを顔面に投げつける。
当の本人は平然としていて、見つけたこちらが大慌てではとても割に合わない。耳まで真っ赤にしてボロボロと泣き出して睨んでいる奈智をものともしないで、沙和は抱きついてくる。
「なちったら、かっわいー!」
「かわいくないっ!! 俺、もう、ヤダ!」
これら、俗に言う大人の玩具に奈智が遭遇するのは一度や二度ではなない。そのたびに奈智の心臓は止まりかける。
「それ、俺じゃないもーん。多聴兄ぃだよー。俺だって、ときたま自分の部屋のタンス開けて出てきてビックリするもんー」
痛みを訴える自分のこめかみを押さえた奈智は似た顔に問いかけた。
「じゃあ、どうするの、これ」
「そのまんまにしとけばー?」
両親が見つけたら、卒倒ものである。
とっても良いことを思いついたと、手を打つ弟に奈智は嫌な予感を感じながら顔を引き攣らせた。
「あ、それかさ、奈智使ってみたら?」
「………………何を?」
「ソレ」
脱力と共に怒った奈智はその日、夕食作りを放棄した。
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