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番外 『   』

「さすが、僕の奈智」  二ノ宮はペロリと口端を舐めた。  もう一度、すでに意識を手放した愛おしい彼に口付ける。 「ずっと、欲しかったよ。やっと、手に入れた」  手錠と鎖に繋がれた手を拾い、そこにも舌を這わせる。  広がる鉄臭さに、満足そうに目を細める。  紅く濡れた、奈智の右手。  薬を盛られたと知った奈智の行動は、逃げ出すでも、二ノ宮に傷を付けることでもなく、己の意識を保とうとした。  割られた元マグカップを一瞥し、男は奈智が握りしめたままだった破片を取り除いた。 「傷つけることは、許さないよ。たとえ、自分ででもね。奈智は僕のモノだから」  起きたら、お仕置きしないとね。  楽しみだよ。  どんな声で啼いてくれるか。  微笑んだ二ノ宮はしばらく、鮮血を流し続ける奈智の味を堪能した。

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