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お正月5

 ピンポーン。  食器を洗っていた手を止めて、奈智は首を傾げた。  誰だろう。  正月から連日出掛けていた両親が本日は自宅に居るためか、兄と弟はこれからの新居に二人で仲良く繰り出した。自分としてはある意味安寧なる日常である。まぁ、別に彼等が居ても何ら問題はないが、タダ絡まられると居場所がないので困るだけ。父母然り。家庭内の二つのパートナーに若干居心地が悪いのは仕方ないことだろう。 「あら、いらっしゃい」  来客を迎えてうれしそうに響く母の声に安堵して、続く言葉に新たに手にした皿をうっかりと取り落としそうになった。 「あけまして、おめでとうございます。今年もよろしくお願いします」 「おめでとうございます。こちらこそ、よろしくお願いします。克己(かつみ)さんはご実家の方は落ち着かれたの?」 「はい。あ、少ないですが良ければ」 「あらまぁ、こんなに。申し訳ないわ」  和気藹々と繰り広げられる会話に、耳を疑う。  洗剤つきの手を洗うのもそこそこに、唖然としたまま玄関に駆けつければ、やはり。 「……先輩」 「お、奈智。あけましておめでとう」  笑みを浮かべて我が家の玄関に立つのは、紛れもなく堀ちゃん先輩。  年変わって四日目にして目にした長身に、ペコリと頭を下げる。 「あ、おめでとう、ございます?」  ナゼ、彼が? 「おぉ、よく来た」  ヒョッコリと顔を覗かせた父も来客をリビングへと手招きする。 「いつまでもそんな所じゃ、寒いだろ。上がって」 「お言葉に甘えて、お邪魔します」 「そんなかしこまらなくてもいいだろ」  困惑したまま突っ立っている奈智を放置して、三人の会話は楽しげに進む。  ナゼ、家に? 「美味い酒が手に入ってね。君も飲むだろう?」 「いいですね。いただきます」 「何か、つまめる物あったか?」 「そうねぇ」  頬に手を当てて思案しながら家の中を進む母と、鼻歌でも歌いだしそうな父。  両親の後姿を見送りつつ、横に存在を感じて見上げると同時。  肩を抱かれ、頬に感じる唇。  一瞬の、できごと。 「……っな!」  一拍遅れて、ジワジワと熱くなる顔。 「今年もよろしくな」 「…………は、ぃ」  うつむいて口付けられた所を押さえれば、やさしく頭を撫でられる。 「その調子で、俺を意識してくれよ」 愉快そうに響いた声音に、火照った顔でちいさく頷いたのは無意識。

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