25 / 34

お風呂でゆっくりと

「改めて思うんですけど、敏雄さん、いいところに住んでますよねえ」 リビングに招き入れるなり、青葉が言った。 「まあ、お前の家よりは広いわな」 部屋の電気をつけると、敏雄はキッチンに向かってヤカンを手に取り、コンロに置いた。 青葉に温かい飲み物を出すため、お湯を沸かそうと思ったのだ。 「ほら、コート出せよ。ハンガーにかけといてやるから」 「はあい」 青葉は言われたとおりにコートを脱いで敏雄に渡した。 敏雄もコートを脱ぐと、2人分のコートにハンガーを通して、安物のドアフックに引っかけた。 「そこ座っとけ。コーヒーでいいか?」 敏雄は、壁にかけられたリモコンを手に取って暖房のスイッチを入れた。 「ええ、いいですよ。ありがとうございます」 ソファに座っている青葉に承諾を得ると、敏雄はコーヒーを淹れ始めた。 「ほら、飲めよ」 敏雄がトレーにコーヒーカップを乗せて、持ってきてくれた。 「ありがとうございます」 青葉は、トレーに乗ったコーヒーカップを手に取った。 トレーの上には砂糖とミルクも置いてあって、いかにも律儀な敏雄らしいなと思った。 「なあ、春也」 敏雄は、コーヒーを啜っている青葉の大柄な体に、寄りかかるようにして体を預けた。 「なんですか?」 「それ飲んだら、寝室に行こう。最近、ご無沙汰だっただろ?」 敏雄が、意味深な笑みを浮かべる。 「……早く飲みますね」 青葉は赤面して、舌を火傷しそうになりながら、敏雄に出されたコーヒーを飲み干した。 「シャワー浴びるか?」 「そうした方がいいですか?」 青葉が、質問に質問で返してくる。 「そうだな、一緒に入ろう」 敏雄が答えを出した。 オフィスは暖房が効きすぎて、かえって暑かったこともあり、大汗をかいた。 今だってその名残りで、脇の下がほんのり湿っている。 さすがにこんな状態で事に及ぶのは、抵抗があった。 「わかりました」 「じゃ、一緒に入るか。そっち方が効率的だしな?」 「……いいですよ」 敏雄がいたずらっ子みたいな笑みを浮かべると、青葉は赤面した。 この後に何が起こるか、それがわからないほど、青葉も純情ではない。 短いやりとりの後、2人は脱衣所に向かった。 「青葉、脱いだ服貸せよ。洗っといてやるから」 敏雄は、脱いだ服を洗濯機に放り込んだ。 「着替えがないんですけど…」 青葉が伏し目がちに言い淀んだ。 上半身裸になった敏雄を直視できないらしい。 やることはやってるいるのに、今さら何を照れることがあるのだろう。 「これには乾燥機がついてるんだ。風呂入ってる間に乾くから、大丈夫だよ」 言いながら敏雄は、ズボンも下着もすべて脱いで全裸になった。 「……わかりました」 青葉がためらいがちに、ゆっくりゆっくり服を脱いでいく。 青葉のその様子がなんだか可愛いと感じられて、敏雄は思わず口角を上げた。 そして、先ほど言ったとおりに脱いだ服をすべて洗濯機に放り入れると、電源ボタンを押し、液体洗剤を投下していく。 すると、洗濯機がゴウン、ゴウンと音を立てて作動し始めた。 「さ、入るか。服が完全に乾ききるのはちょっと時間がかかるから、長風呂で大丈夫だ。だから青葉、楽しみにしてろよ?」 言うと敏雄は、剥き出しになった青葉の腹を人差し指でなぞるように、優しく触れた。 「…はい」 青葉は、嬉しそうな困ったような照れているような、何ともいえない顔をしていた。 シャワーで汗や汚れを流すと、敏雄はさっそく青葉の股に顔を埋めた。 「ちょっと…もう!敏雄さんたら!!」 いきなりの出来事に、青葉はあわてふためいた。 一方で、どこかまんざらでもなさそうだった。 「イイくせに」 青葉に両側頭部を軽く押さえられながら、敏雄は青葉の男根を口に含んだ。 「あっ…敏雄さん、それ、ダメです!」 男根を口に含んだまま頭を前後に動かすと、青葉は悩ましげに声を漏らした。 「若いから勃つの早いなあ。もうほぐしてあるから、早く挿れてくれよ」 「ほぐしてあるって…いつの間に?」 青葉は頭に疑問符を浮かべた。 「いつでもいいだろ」 「ええ、まあ…そうですけど、ゴムは?さすがにそのままではできないでしょう?」 「あるんだよ、実は」 敏雄は、シャンプー置き場からコンドームを引っ張り出した。 「だいぶと用意周到ですね」 「いろんなとこに用意してあるぞ。お前が好きなだけサカれるようにな?」 敏雄が青葉を茶化すように、にーっと笑った。 「ぼく、そんな猿じゃないですよ」 「ヤってるときはみんな猿みたいなもんだよ」 敏雄はコンドームの袋を破ると、青葉の男根にかぶせてやった。 「ほら、早く挿れろよ」 コンドームがしっかりはまったのを確認すると、敏雄は両手を壁につけて、青葉に背中を向けた。 「なんか…やる気マンマンですね、ホント」 「最近、ご無沙汰だったからなあ。んっ…」 大きな手が尻たぶを開き、男根を押し当てられる感触に、敏雄は思わず呻いた。 「挿れますよ」 「おう。ああっ…すっげえ」 男根が肉襞を割って入っていく感覚は、圧迫感こそあるが、気持ちがいいとも痛いとも思わない。 しかし、やがて快感が訪れることを考えると、それが充分な興奮材料なる。 「痛くないですか?」 「大丈夫だからッ…あッ、そこ、いい!」 いいところに男根が当たって、敏雄は悶絶した。 「動きますよ」 「早くしろよ」 敏雄が言ったと同時に、青葉が体を揺さぶって、抽挿を繰り返した。 「あっ…いいっ、いいぞッ、」 「ぼくもです!あっ、ヤバい!」 青葉の言葉遣いが、急にくだけはじめる。 普段は最低限の礼儀をわきまえて、意識して言葉を選んで話していたらしい。 それが瓦解すると、こんなに荒っぽく、いまどきの若者らしくなるのか。 「あっ、乳首やめろッ…」 奇妙なときめきを覚えながら、敏雄は背後から伸びてきた手首を掴んだ。 青葉が、敏雄の体にかわいいイタズラをしかけてきたのだ。 「ココが好きなくせに」 青葉が嬉しそうに、今度は脇腹を撫でさすってきた。 その間にも、律動は止まない。 「あっ、やっべえッ…でるっ!」 「ぼくもですッ」 青葉が人一倍激しく体を揺さぶって、肉襞を穿つと、体内に熱い精液を放った。 一瞬遅れて、敏雄も果てる。 「うう~…」 「オッサンみたいな声で唸るなよ、お前」 事が終わった後、2人そろって体を洗うと、バスタブに入って、お湯に浸かった。 敏雄の家のバスタブはそこそこに広いが、2人いっしょに入ると窮屈だ。 2人が少しでも身じろぎしようものなら、お湯がバスタブから溢れそうになる。 「唸りもしますよ。いままで大変だったんですから」 青葉が、顔についた水滴を拭う。 「いまは…しばしの休戦、ってとこだな」 「年が明けたら大忙しですかね?」 「そりゃあそうだ。年明けでテンション上がっちまって、何かやらかすヤツが出るからなあ。きっと大荒れだぜ」 敏雄のこの予感はきれいに的中した。

ともだちにシェアしよう!