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第9話
「――大切な話だ。お断りする事は不可能な、王宮からの……いいや陛下からの勅命だ」
「僕にですか?」
僕と国王陛下にはあまり接点がない。そもそも僕に出来る事など限られている。
「座ってくれ」
父がソファの方に僕を促した。僕は机の前から立ち上がり、父上と対面する席に座す。すると父が咳払いをした。
「実は、ジャックロフト王太子殿下の閨の講義に関してなんだ」
「閨の講義?」
「ああ。王族の男子は、慣例として、王立学院入学前に、子の作り方を学ぶ」
「はぁ」
「今回、そのお役目を、畏れ多くも当エルレス公爵家が引き受ける事となった」
「そうですか」
「即ち、お前だ。フェルナ、頑張るように」
「ん? え? 僕は男なので、子供は作れませんけど……? 僕? セリアーナでは?」
「セリアーナは女子だ。身ごもってしまう」
「生々しいです父上……」
「……嫁入り前の娘に、そのようなことはさせられない」
父上は冗談を言っている顔ではない。そして僕をじっと見据えた。
「筆おろしは大切な事だ」
「つまりジャックロフト王太子殿下はまだ童貞……?」
「……本人に確認すればいい」
「待ってください。僕こそが筋金入りの童貞なので、教えられる事がゼロです」
「安心していい。その……まぁ、ええと……処女への対応の仕方が主とした講義内容で、実際に童貞処女のお前がそれをお引き受けするという事だから、お前は未経験であればあるほど望ましい」
「……へ……あ、あの……父上、それって、直接的に聞きますけど、僕にジャックロフト王太子殿下に抱かれてこいって言ってます?」
「そういうことだ」
「えっ、え!?」
「断れば極刑もあり得る」
「な!?」
「明日の夜、王宮から迎えの馬車が来る。着替えだけしておくように」
僕は唖然とし過ぎて、歩き去っていく父上を引き止められなかった。
僕は半信半疑ながらも馬車に揺られ、王宮が見えてくるにつれて怯え、極刑になったらどうしようかと不安になりながら、どんよりとしていた。そんな僕を王宮の人々が先導し、ジャック様の寝室の前へと連れて行った。小さいころに一度かくれんぼのために入室したことがあるから、寝室だと僕は知っていた。
ノックをすると、「入れ」という声が返ってきた。図書館で聞いたのが最後の、ジャック様の声である。僕はおずおずと中へ入った。
「!」
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