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第10話

 すると扉の真正面にジャック様がいた。突然視界に入ってきたから驚いてしまった。僕よりもずっと背が高いので、もうこれを抜き返すのは不可能だろう。じっと僕を見たジャック様は、それから施錠した。妙にその音が大きく聞こえた気がした。 「そ、その……ご、ご無沙汰……して……」  僕があいさつしようとすると、僕の顔のわきに、ジャック様が手をついた。そして少ししゃがんで僕を覗き込んでくる。近距離すぎて、ジャック様の目に映りこんでいる自分が見えそうだ。 「んンぅ」  そのままキスをされていた。ジャック様は何も言わない。ただ焦って口を開こうとした僕に舌を差し込むと、ねっとりと口腔を貪り始めた。人生で初めてのキスに、僕は緊張して後ずさろうとし、扉に阻まれる。絡めとられた舌を引きずりだされて、甘く噛まれた時、僕はビクリとした。 「っぁ……」  息継ぎの仕方が分からない。必死で隙を見つけて呼吸をしていたから、僕はいつの間に服を開けられたのか気づいていなかった。それに気づいたのは、鎖骨の少し上に口づけをされた時だ。 「寝台へ」 「……」  いや、童貞って嘘だろう、これ……。  僕は父の言葉をよく思い出してみたが、多分、未経験者を抱く以外の講義はすでに終わっているのだろう。つまり僕は、その経験のみのために……。  しかしどうして僕なんだろうか。爵位の問題だろうか。大切なお役目らしいしな。そうでなければ会話があった幼少時など喧嘩ばかりしていたのだし、ジャック様も僕を嫌いだったと思う。  現実逃避気味にそんな事を考えながら、僕は寝台に押し倒された。既に上着は乱れていたが、そこから下衣を本格的に開けられた。僕は何かした方がいいのだろうかとも思ったが、それを訴える暇もないくらい手際よく、僕にのしかかっているジャック様が、僕の体から衣類をはぎとった。 「うつぶせになってくれ」 「は、はい……」  言われた通りに姿勢を変えた僕は、臀部を突き出す形で、ぎゅっとシーツを握った。  すると香油の瓶をたぐりよせた様子のジャック様が、それをつけた指で、僕の後孔に触れた。緊張で僕の体はガチガチだ。 「んっ」

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