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第13話

 寮の部屋に入った僕は、早速荷物の整理をした。これまでは使用人達にほぼすべてをまかせていたので、一人でやるというのは新鮮だが、幸いなことに僕には前世の記憶がある。だから困らないだろう。  入学式はないが、夜、入学パーティがある。この国では十八歳からお酒が飲める。  僕は夜に備えた。  備えて居たら寝てしまった。気づくと開始時刻ギリギリだったので、慌てて外に出る。春の風はまだ冷たい。会場である大広間に行くと、既に混雑していた。学内では無理に挨拶をする必要はないので、僕はジャック様に挨拶する必要もない。  ただ王宮に近づかなかったせいで、僕には知り合いがほとんどいない。  なのでシャンパングラスを手に取ってから、壁際に立っていた。  ジャック様は囲まれている。目が合う事もなく、この日は終了した。  こうして学院生活が始まった。  僕は何故なのか友達が出来ない。図書館で本ばかり読んでいる。そのせいだとは思わないが、人々に遠巻きにされているような感覚があった。やはり人脈を作っておかなかったせいだろう。  本日も図書館で、僕は外国語の本を開いていた。するとカツンと音がした。 「!」  気づくと正面の席に、ジャック様が座っていた。一体いつからいたのだろうか。 「随分と集中していたな」 「……ええ、まぁ」 「今日、話がしたい。部屋に行ってもいいか?」  そう述べたジャック様の瞳が、昨年一年でよく覚えた、完全に情欲が滲んでいる獰猛な瞳だったため、僕は警戒した。嫌な汗が浮かんでくる。 「どのようなお話ですか?」 「俺はここで話しても構わないが、お前もそれが適切だと思うか?」 「……」  絶対に閨の話だと確信した。一応機密扱いでもあるし、ここで話すわけにはいかない。僕の側の評判の問題もある。仕方がないので、僕は小さく頷いてから、出入り口の方を見た。 「いらしてください」 「ああ。早速、今からでも」  僕は読みかけだった本を借りることにした。こうして図書館を出た僕は、ジャック様に向かっての視線の多さに辟易した。道中は何故なのか機嫌がよさそうに笑っているジャック様の横を無言の無表情で歩いたが、寮に入った頃には疲れていた。自室に招いてから、扉を閉める。 「フェルナ」

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