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R18★あなたの好きにシてほしいよ

ベッドに仰向けに寝そべった澄伽を組み敷き、腕の中に完全に閉じ込めた。 「緊張してる?」 「うん……なんか、こういうの初めてだから……」 これまで多くの男と寝てきたはずの澄伽が『初めて』で『緊張』していると言う。 「どうして?俺とするの、こわい?」 「ちがくて……えっと、えっと、何だろ……」 考えや思いを言葉にするのが、澄伽は少し不得意かもしれない。少しアシストしてやる。 「だーい好きな恋人とのラブラブエッチは初めてで緊張するってこと?」 「あ、それかも」 茶化した表現は意外とハマったようで、澄伽はふふっと笑う。 「まぁ澄伽とは初めて会った日に一回してるんだけどね、お魚さんのホテルで。でも覚えてないんだっけ」 「うん、ごめんなさい……」 「じゃあそれはノーカウントでいっか」 「はーい」 少し表情の和らいできた澄伽に顔を寄せる。 まだキスはしない。親指で下唇をそろりと撫でる。 「はァ……」 艶めいた吐息が指にかかった。 上唇も人差し指で辿り、唇が感じやすい澄伽をじんわりと焦らす。 呼吸が荒くなり、かすかに喘ぎが混じる。 「んッ……ゆーしろぉさん……」 「ん?」 「ちゅう、ちゅうがいいよぉ……」 せつなげな目で懇願された。 もう愛おしさは臨界点をとっくに突破している。何をされても言われても微笑むかニヤけるかの二択しかない域だ。 こんなにやわらかく優しい感情を誰かに抱(いだ)いたことなど、これまでにあっただろうか。 赤らんだ半開きの唇をそっと塞ぐ。 重ね合わせるだけで心が温かく満たされていくようだった。 優しく唇を食んでやっていると、澄伽の方から舌を伸ばしてきた。 それもやわく吸ってやり、自分のそれと絡め貪る。 「ンっ……ふ……ンン……」 鼻にかかった甘ったるい吐息が顔にかかり、さらに聴覚をもくすぐられる。 薄目を開ければ、キスに夢中になっている、いつもの純粋無垢なだけではない表情の澄伽がいた。 たまらなくなって、耳元に吐息を混ぜて吹き込む。 「すごい、エッチな顔と声してる」 不安げに、 「変……?」 なんてわかりきったことを訊いてくる。 もしかしたら初めての『恋人』という存在に、自らのいやらしくも官能的な姿を見せることに不安や戸惑いがあるのかもしれない。 「変じゃない。たまんない、最高。だって澄伽は俺の最高で自慢の恋人、でしょ?」 その言葉に、照れたようなむずがゆいような顔を見せてくれる。 「可愛いなぁ、もう!」 澄伽に幸せなセックスを教えてやりたいつもりが、俺の方がとっくに満たされてしまっている。 目を合わせているのが照れくさくなってしまったのと、さらに柔肌を堪能したくなったのとで、両の胸の間に吸いついた。 両手で乳首をきゅんと摘んでやると、 「ンン……ふ、うッ」 とわかりやすく悶えた。 そこをちろちろと舐め、じゅるじゅるとしゃぶりながら、片手は腹から腰、太ももの方までへとすべらせていく。 「んあぁ……はァ、は、はァ……」 控えめな喘ぎのわりに、俺の手が下へと下りていくほどに澄伽の腰が誘うように淫らにうねる。 胸から口を離すと、唾液でねっとりと濡れた魅惑的な赤。 視覚的に魅了され、もう一度だけ軽く口づけた。 「ココ、可愛かった」 ピンと勃ちあがった乳首をおまけとばかりに指で弾いてやると、 「あんッ」 首を仰け反らせ、一際イイ声で喘いだ。 「声も可愛い。……コッチ、触っていい?」 澄伽の膝を立てながらその脚を開こうとすると、その意図はちゃんと伝わったようだった。こくんと頷き、こちらに協力するように脚をそろそろと広げてくれる。 もしも澄伽と付き合えたら、またセックスできたら、などと都合よく考えて、いつもの潤滑剤より高めの温感ゼリーを買っておいた。 お互いに気持ち良くなって、特に澄伽に満足してもらえたらいい。ついでにエロくて可愛い反応が見られたらもっといい。 「痛かったり苦しかったりしたら、ちゃんと言ってね」 「うん」 温感ゼリーを纏わせた指で、きゅんと窄まった孔に触れる。 「ふぅッ……!」 ぬちゃぬちゃと念入りに塗り込みながら、下手に緊張させる間を与えないようあえてそのまま指先を差し込んでしまう。 「んぅ……?」 「わかる?指、入ってるよ」 指先を曲げて浅い場所を少しずつ広げる。 いつものローションより粘り気のあるゼリーが、まるで澄伽のそこを極上のスイーツのように淫らに彩る。 「んッ……あ、なに、なんか……あったかい……」 指を徐々に奥へ進めると澄伽もその熱に気づいたようで、戸惑うようにため息混じりに漏らす。 「これ、温感ゼリーって言って少しポカポカするの。どう?」 「ぅん……きもちぃ、かも……」 悪くない反応。 もっとぐちょぐちょのどろどろにとろけさせたい。ゼリーを追加して指も増やしていく。 「ああ……は、あ……うぅ~……」 「澄伽の気持ちイイとこ触ろっか?」 「うぇ?う、あ、こわい、よ……」 右手は孔を弄ったままに、少しだけ身体を澄伽に乗り上げさせた。左手で澄伽の右手を握ってやる。 「気持ちイイ顔もちゃんと見せて」 お得意の困り顔も、この状況では艶を孕んでいる。 傷つけないようぐるりと指でナカを掻きまわしながら、そうっと前立腺に指先を這わせる。 「ンンッ!」 背中をしならせ喘ぎ、絡めた指に力が込められる。 前立腺ばかりは責めない。じゅぷじゅぷとナカを押し広げていきながら、不意打ちで軽く触れてやる。 「ンうぅ……」 か弱く啼く声。 快感を堪え歪めた表情。 温感ゼリーの効果だけではない、指に感じる確かな澄伽の熱。 自分の呼吸も荒くなってきているのを感じる。 一度引き抜いた指を再び差し入れると、じゅぷりといやらしくゼリーが流れ出てきた。 まるで澄伽の身体からとろけ出した淫猥な液体のようで、堪らず自らの竿を濡れそぼった孔に擦りつける。 「あッ!あ、まって!」 「大丈夫、まだ挿れないよ」 言葉は平静を装った。 それでも澄伽のナカから流れ落ちた液体で、指を抜かれて物欲しそうにひくつく孔で、夢中で自身を扱く。 「だめぇ!はいっちゃう!はいっちゃうよぉ……!」 泣かせるつもりなどないのに、泣きそうな声はそそる。 「ね?入っちゃいそうだね」 「だめぇ!ゴム着けないとだめだってぇ!」 「そうだね。じゃあ着けたら挿れていい?」 澄伽がこくんとうなずいた。 性病への危機意識はしっかり持っていたようで安心した反面、それを教えたのはどこかの男なんだろうと思うと、しょうもない嫉妬心が湧いてしまった。 ゴムを着ける間にも、すっかり性器になり変わったとろとろの澄伽のアナルを横目で見ていたら、やはりそこを蹂躙してきた見ず知らずの男たちに殺意すら覚えかけてしまう。 優しくしたかったのに。ああ、俺という男は本当に未熟だ。 先端をぐっと押しあてる。 「澄伽、ちょっと激しくても我慢して?」 「へ?え?」 とろけたアナルに一気に根元付近まで押し込む。 「んああぁ!ぐッ……あ、ああぁ……やっ、うぁ……」 澄伽が甲高い叫びとともに、生理的な涙をぽろりと流した。 「やっべぇ……澄伽のナカやべぇ……」 入り口はぎちぎちに広がり、隆起しきった怒張を健気に受け入れている。 滑らかに律動できるのはゼリーの効果が大きいだろうが、確かにその温かさ以上に熱く俺を包み込み、きゅうきゅうと締めつけてくる。 「あぁッ、やらッ!ンンッ!」 澄伽の脚を抱え、めちゃくちゃに腰を振り快感を追う。 「やあぁ……!まってぇ、まってぇ!」 きっとかなり奥まで入ってしまっている。澄伽のために一旦止まってやりたいのに、動きを少し緩める程度しかできない。 「ごめん澄伽……苦しいよね」 「ちがう……ちがくて……すごい奥にきたの、思いだした……」 「え?」 澄伽は潤んだ目で俺を必死に見つめてくる。 「遊司郎さんと初めてシた時、すごい奥まできたの、思いだした……」 「うっそ……忘れてたんじゃなかったの……?」 初めて澄伽に出会いホテルに連れ込んだ夜、俺には自分を満足させることしか頭になく、無遠慮に彼の結腸をぶち抜いた。 覚えていないと言っていたのに。身体が思いだすなんてことがあるのか? 「ごめん。あの時しんどかったよね。もう無茶なことしないから。今日は……っていうかこれからは優しくする」 澄伽は片手で俺の腕を掴み、ゆるゆると首を横に振った。 「……シて?同じやつ」 「澄伽、」 「気持ちイイんでしょ?アレ。……遊司郎さんがおれにいっぱい優しくしてくれるから、おれも、あのね、何かしてあげたいよ?」 間抜けにも俺は澄伽に挿入したまま、呆然となっていた。 俺はこの期に及んでまだ思い違いをしていた。 困難を抱える澄伽のことを俺が手助けするだけが、きっと俺たちの関係性じゃないんだ。 澄伽も形はどうであれ俺の役に立ちたい、どうにか満たしてやりたいと想ってくれている。 「ありがとね。でもああいう無茶はやめよ?俺は澄伽が恋人になってくれただけでめちゃくちゃ嬉しいし、あとはそうだな、今度カレー作って?」 俺の腕を掴む澄伽の手に力がこもる。 「『特別扱い』で優しいのはもうやだ……遊司郎さんの好きにシてほしいよぉ……」 特別扱いされたくない。 それは澄伽の心からの願いだ。わかっていたはずだった。 そしてそれを不器用なりに叶えようと生きてきた結果、多くの男たちのオモチャになってしまっていた。 俺がその願いを蔑(ないがし)ろにしてどうする。 「……うん、わかった。澄伽のこと、ほんとのほんとに俺の好きにしちゃう。頑張れる?」 「うん」 一旦挿入から解放してやると、 澄伽はそれだけで、 「あッ……」 と色めかしく吐息を漏らした。 「下向いて、そう、それでお尻上げられる?」 もうだいぶ力の抜けてしまっている澄伽の身体を支え、バックの体位にひっくり返す。 『早く欲しいよ』と強請(ねだ)るようにくぱくぱと口を開けている入り口と、あと俺の方にもゼリーを追加した。 先端を押し当てたところで一旦止まろうと思ったけれど、澄伽が腰を押しつけてきてそのままずるんと入ってしまった。 「澄伽、ちょっと……あんまり煽んなって」 「だって……んぁ……勝手にうごいちゃうよ……」 腰を掴みながら、先ほど到達した深さ辺りまでは挿入できた。 「は、はァ……あぁ、あァ……」 澄伽は枕に顔を横向きに伏せ、しっかりと感じ入っている。 さらにぐっと腰を押しつけると、熱い輪のようなところに触れる。 「きゃ……!」 甲高く啼いたものの、その腰は健気にも逃げる様子がない。 「いい?ほんとにいくよ?」 「ん、うん……」 ぷちゅぷちゅと誘い蠢(うごめ)き、わずかに最奥への入り口を開くそこへ。 ズプンッ! 勢い良く亀頭を押し込むと、 「ぎッ……!ぁ……ぐぅッ……!」 澄伽は苦しげに呻いた。 「澄伽、」 堪らずその背中に唇を寄せる。 「あ……あ、ぐ、ぅ……」 「苦しいね?一回抜こっか?」 「だめぇ……!」 澄伽がキュンキュンとわざとアナルを締めつけてくる。 「ゆ、ゆーしろさんもっ、きもちくなって……」 絞り出したような涙混じりの声に、愛おしさと同時に劣情が増してしまう。 「……ほんとさ、そういうのずるいんだけど」 震える身体を強く抱き、ぶちゅんぶちゅんと一際深い場所にある淫らな孔を貫く。 「アアア!うぐッ!ああ~……」 「澄伽、澄伽……ヤバい、気持ち良すぎ……」 「あ……う、うれひぃ……ぐッ、ぅ、あう……」 きっと澄伽はその特性から『特別扱い』の優しさを与えられてばかりで、時に行き過ぎたそれで自らに劣等感さえ抱(いだ)いただろう。本当は彼も大切な誰かに何かを与えたかった。 その誰かは俺でいい。俺も澄伽のことは何を差し置いてでも大事にする。 難しい言葉が苦手な澄伽。料理が一切できない俺。何も違いはない。 ただの対等な人間同士、愛し合う者同士、与え与えられ、それでいい。 「うッ、あー……ぐッ……」 俺もどうにか澄伽に快楽を与えようと、その身体を片手で抱え込んだまま胸にもう片方の手をを伸ばす。 「んッ!あ……そこらめぇ……」 しばらく放置されていたその尖りは、少し柔らかくなっていた。それでも指先でぐにぐにと押しつぶすと、忽(たちま)ちに硬さを取り戻した。 「あぁ、ふッ……や、うぅ……」 ピンと勃って主張している乳首の周りを、緩慢な動きでなぞりながら尋ねてやる。 もちろん最奥を突く腰の動きは止めてやらないし、そもそも止められる余裕が俺にない。 「はッ……澄伽、澄伽?乳首、どうされるのがいちばん気持ちイイ?」 「うぅ~……もぉきもちぃよぉ……」 「ほんとに?こうやっておっぱいの周りだけくるくる触ってるだけでいい?」 時折、爪先を乳首に掠めてやり本音を引き出す。 「あッ、は、はァ、あ、ァ……あ……ぎゅって……ぎゅって痛くして……?」 「ぎゅって?おっぱい痛くされたいの?」 「うん……してぇ……」 サディスティックな気(け)がある俺と、その真逆の澄伽。性癖的に相性が良すぎる。 あとは関係を続けていくうちに、澄伽のナカは俺のカタチになって、俺だけが愛でることができる今よりもっと可愛い恋人になる。 いくよ、と言葉はかけない。 じゅぽっと強く亀頭を押し込むと同時に、熟れきった乳首を強く捻り上げてやる。 「やあァッ!だめッ!ああッ!もぉ、あああん!」 余裕のない喘ぎ。 アナルとその奥の秘められた臓器が、ぎゅうと俺を締めつける。 澄伽の身体が無意識なのか暴れようとしているが、俺の片腕で容易く抑え込めた。 「嘘。気持ちイイよね?ね、どこ気持ちイイの?」 「ぁ……ふ、ぅ……ぜ、ぜんぶ……」 「全部イイの?」 「ん……ぜんぶイイから……お、おかひくなっひゃう……」 澄伽の後ろ姿しか見えていない体勢を惜しく思った途端、じゅぽっと音がしそうな勢いで挿入を解き、その身体を仰向けにひっくり返してしまっていた。 「あ……、ゆうしろひゃん……?」 涙で顔をべしゃべしゃに濡らしながらも、快楽にとろけきった澄伽の顔が見えた。 正常位ではいちばん奥までは届きづらいけれど、俺はとにかく澄伽の表情が見たかった。 両脚が腹につくほどに澄伽の身体を抑えつけ、再び一気に挿入した。 顔を少しでも近くへと寄せ、触れるだけの口づけをする。 「んんッ!ぅああ……んやッ!あ、あたってる……!」 「だって、あててるんだもん」 前立腺をぐりぐりと突いてやると、艶めかしく腰をくねらせた。 「腰えっろ……」 セックスってこんなにいいものだったっけ? 覚えていないほどのはるか昔、童貞を卒業した時の無我夢中さを越えている気がする。 「澄伽、ごめん。俺のことイかせて……」 戸惑い甲高く喘いでいる顔を見下ろしながら、ひたすらに突きまくる。パンパンと肌がぶつかる音が響いた。 「ふァ!?やッ!や、や、やぁあ!」 澄伽は必死で俺の腕に縋り、互いの熱のこもったナカを擦られる快楽に堪(た)えている。 可愛い。大切だ。それだけ。 障害のことなど忘れてしまっていた。後から考えてもそれで良かった。 「うッ……澄伽、澄伽、イくよ……?」 澄伽の身体をかき抱き、夢中で腰を振っていた。 「あッ、ァ、あ、あ、はァ……あああ……だめぇ、やッ、や……!」 激しい律動に合わせて漏れ出る澄伽の嬌声は、甲高く余裕がない。 「かわいい……」 「やだ……!あン!も……イ……っちゃ……!う……あンッ……!あ……あ……はぁ……」 ギュウとこちらを搾り尽くしてくるような強い締めつけ。 「うわ、あぁ……ッ……!」 それに抗えず、澄伽のナカでどくどくと精液を吐き出してしまっていた。 澄伽が先に限界に達し、その締めつけで俺もイかせてもらえたようだった。ちゃんと俺のことを気持ち良くしてくれた。 「ゆうしろぉさん……?」 「ん?どした?」 まだ繋がったまま、気だるい雰囲気をまとった、これもまた初めて見る表情の澄伽と見つめ合う。 「……気持ちくなれた?」 「うん。最っっっ高に気持ち良すぎた。……ありがとね」 唇と、それから濡れた目元にもキスを落としてやる。 照れくさそうにむずがる様子がまた愛おしかった。 身体を離すと、澄伽は枕を抱きかかえ、じとっと不満そうにこちらを見てくる。 「……あの、何か?」 「……寂しい」 そう言われても、使用済みのゴムの処理はしなくてはならない。俺の喉がカラカラだということは、喘ぎまくっていた澄伽なんてなおさらだし、飲み物も取って来たい。 「あのね澄伽、夜は長いんだよ」 「うん?」 「今日はお泊まりしに来てくれたんでしょ?身体ベトベトだからこの後一緒にお風呂入ってもいいし、軽く身体拭くだけにして一緒にごろーんしてもいいし。あとはそうだな、眠くなるまでおしゃべりしててもいいし」 澄伽が目を輝かせる。 「そっか!お泊まりだった!」 「もう一回エッチしてもいいし」 「まだするの!?遊司郎さんスケベだ!」 キャッキャとはしゃぐ様は本当に可愛い。スケベでも何とでも言うがいい。 その夜は軽くシャワーを浴びてから、ベッドの中で寄り添い合った。 腕枕をしてやって心地よい疲労感に襲われていると、澄伽がガバッとその身を起こす。 まさかこのシンデレラボーイは、急にホームシックを発動しまた終電で帰るなんて言わないだろうな。いや、もう終わっていると思うけれど。 「遊司郎さん!アレ!青のやつ!」 ベッド横のサイドボードの上を指差し、無邪気に笑っている。 「水族館で買ったやつだよね。おれとおそろいのやつ」 やっとわかりやすい位置に置いておいたことに気づいてくれたか。 澄伽は白、俺は青。水族館で色違いで買った星の砂のハーバリウムに。 「青いのも綺麗だね」 上下に逆さにして、砂の流れ落ちるのを見つめている。 「遊司郎さんもおれのこと好きになってくれたのって、おれが毎日星の砂にお願いしてたからなのかな?」 背中を向けたままそんなことを呟く。 「どう思う?」 「んー……わかんない」 これは澄伽には知りえないことかもしれない。 しかし俺は知っている。 「知りたい?」 「うん!」 「はい、じゃそれ置いてこっちおいで」 ハーバリウムを元の位置に戻させて、澄伽も腕の中に戻って来させる。 「あのね、もし澄伽が星の砂にお願いしてなくても、俺は絶対に澄伽を好きになってたよ」 「うえっ!?そうなの?」 「こんな可愛い子に惚れない方がおかしいもん」 「え、へへへ……遊司郎さんに言われる可愛いはちょっと嬉しい」 今はまだ若く愛らしい澄伽。それでも時の流れとともに年は取る。 経験の中で少しずつ学んでいけることもあるとしても、周りよりはスローペースで限界もあるだろう。 実年齢と能力のギャップ。その違和感への偏見と無理解。 これが澄伽の抱える知的障害の困難さだろうと、俺は自分なりに考えている。 俺はこの先澄伽を支えていく。支えていける。 澄伽の存在もまた、俺を幸福で満たし続ける。 そんな先のことを考えるくらいには、これは本気の恋で、愛と呼んでも過言ではない。 いつしか澄伽は微睡み始め、 「ゆうしろさん……ねむい、おやしゅみ……」 俺に引っついたまま眠ってしまった。 こんなにも心が満たされる夜を、俺は知らないかった。 ひとりの人間に縛られ、延々付き合わされていくことを、ひたすらに避け続けてきた。 澄伽が俺を変えてくれた。恋焦がれ愛することを教えてくれた。 俺にないものを持っていて与えてくれる澄伽。 きっとこれからも、新しい幸せに気づかされてばかりなんだろう。

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