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序章

「そういえば、学校はどうなの?楽しくやってるのかしら?」 店の隅で押し入れのカビのようにしょぼくれている雅やんを放っておいて、話題は学校生活での事に移っていた。 「まぁね。二日に一回くらいのペースで告白されて、いい加減うんざりしてるくらいで特に変わったことはないよ」 成績も中の上くらい。運動は夜の遊びの為に多少鍛えてはいるけれど、転入して来た時に入らされた剣道部だって真面目にやっているわけじゃない。性に合っていたらしく、腕はそれなりだけどそれだけだ。というか、面白みが見いだせなくて、全力でやろうと思わない。英語は昔住んでたから話せるけど、そんなわけで取り立ててとくに何かあるわけではないと思うのだが、何故か言い寄られる。 「貴方…顔はいいものね~」 「…あとこいつ、外面いいんすよ。ここにいるからなのか、大人の接し方とか女の扱いとか、馬鹿みたいに上手い」 いつのまにやら復活していた雅やんがそう付け足す。生きていく上で、外面は大事だと思う。 「前は期限決めて、学校の子と付き合ったりしてたけど、そうすると店に来るお客さんと堂々と遊べなくなるからやめたんだよね。遊んでたけど、やっぱちょっと罪悪感みたいなさ」 「……どうしようもねぇクズじゃねえか、それ。お前いつか絶対刺されるぞ、まじで」 「気を付けなさいよ…」 「うん、まだ死にたくないからね」 先行きが不安だ。と言わんばかりの表情で見詰め返される。 火遊びには危険が付き物だ。何度か、危ない目にも合ってきたけれど、それでも自分なりに上手く立ち回っているつもりだ。だけど、世の中何があるか分からない。用心した事に越したことはないが、その時はその時だ、とも思う。 「…そういえば、お前今年受験生だよな。学校もう決めてんのか?」 「うん。今の学力で行けるとこでいいかなって。受験勉強したくないし、毎日課題に追われるのも嫌だし。何より、遊びたい」 「……高校生なんて遊びてぇ盛りだよな…おめえの遊びはタチが悪いけどな」 嫌味ったらしく言われる。 「なんだよ、雅やん。人生楽しんだもん勝ちだろ?」

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